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酔っ払い

作者: 竹仲法順

     *

 性質が悪い。人間、酒に酔うと、見境がなくなるようだ。オヤジもそう。浴びるほど酒を飲んで、暴言などを吐く。バカじゃねえか?素面で物が言えないから、酒を飲んで当り散らすのである。ストレス解消のようにして。

 だが、オヤジの命など、もうほんの数年である。家にいられるのは八十まで。それ以降は老人施設等に入ってもらうことになるだろうね。もしかしたら八十まで生きないかも?嬉しい。実に嬉しい。オヤジが犬死すると思うと、手を叩いて喜びたくなる。

     *

 己の自我の強さが全部つけになって回ってきたのである。そう考えると、説明が付く。いずれオヤジの部屋の物も、死後は全部ゴミ収集業者に持っていってもらう。この家からオヤジの生きていた痕跡を全て消し去るのだ。ああ、どんなことを言われようが構わない。こっちはあの野郎に散々人生狂わされてきたのだからな。根こそぎ取り除く。残らずに、だ。

 まあ、もちろん、オヤジに器量がないのは事実だがね。別にどうだっていい。所詮、人間としてそこまでしかないということだ。表題に掲げた通り、単なる酔っ払いである。品行方正さなど一つとしてない。がめつくて、汚らしい老人だ。前述したように、あの野郎はいずれ老健施設にぶち込んでやる。散々悪いことをしてきたので罰だ。当然だろう。

     *

 以前から申し上げている通り、今後の人生は自分のために時間を使いたい。オヤジや饅頭屋などどうでもいいのである。旧家の金看板に泥を塗った。許されないことである。オヤジは死んで詫びるしかない。それにその際、饅頭屋も廃業だ。いいじゃないか?もうやるだけやって「売れませんでした」で。所詮、その程度の器量しかないのだ。別に腹が立つことも何ともない。必然だからである。

 オヤジが犬死すると、最高だな。万々歳だ!祝杯を上げたい。それにオヤジから辞めさせられた敵対勢力の方たちからは「死亡おめでとうございます」と祝電を頂戴することになる。そしてボクはこの家に残る。それでいいのだ。散々苦しめられてきたから、今からは悠々自適である。好きな小説やエッセーを書き、好きな本を読み、好きなテレビドラマを見る。野心など、欠片としてない。

     *

 まあ、人生長い。それに<渋柿の長持ち>ということわざもある。他人から避けられる人は、渋くて食えない柿と同じで、後々までしぶとく残る。ボクも他人様から嫌われつつ、長命であろうと思うのである。ある意味、楽観的だ。酒も飲まない、タバコも吸わないで、朝はちゃんと早起きし、夜もそれなりに早寝なのだし……。

 酔っ払いであるオヤジは、強い酒でも飲んで、せいぜい八十ぐらいで死ぬことだな。お前が生きてて喜ぶのは、人糞より汚い饅頭屋とやらの犬畜生どもだけだよ。全く嘆かわしい。死んで当然。生きている価値など皆無に等しい。

 ひとまず一筆書かせていただきました。

 ではまた。

                                  (了)


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