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ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ、、、
大理石の柱が立ち並ぶ回廊を壮年の神官が全速力で歩いていた。
回廊に面した中庭には、優しい色の花々がさき、涼しい風が吹き抜けていたが、神官は頬をうっすらと紅くし、額には汗がにじんでいた。
神官が目指すのは、王城。王城の主の執務室。
回廊から城内の広い廊下に入ると、あたりの空気はひんやりとした。
フッと小さく息を漏らしたが、総大理石造りの見事な城内に目もくれることなく、白い神官服の長い裾を上手にさばきながら、主の執務室を目指しひたすら足を動かした。
執務室に近づくと、ひと際大きく立派な扉の前に二人の衛兵の姿がみえた。神官は歩調をゆるめ息を整えながら、執務室までの見事に磨かれた長い廊下を衛兵たちに存在を知らせるように、ゆっくりと進んでいった。
衛兵たちは神官が目の前に立ち、一呼吸置いてから話し出すのをまった。
「神官長より伝言をお預かりして参りました。お取り次ぎをお願いいたします。」
神官はそう言いながら頭を下げた。
衛兵たちは神官の名前を誰何もせず、大きくうなずくと、一人が扉の中に入っていった。
神官ともう一人の衛兵はお互い目を合わせると、軽く会釈をしほほえんだ。
「やっと、この日がきましたね。」
衛兵がそう声をかけると、神官は目じりに薄い皺をよせ答えた。
「はい。やっと」
その後すぐに扉はひらかれ、神官は入ってすぐの控えの間からさらに奥にある扉をはいり、主の執務の間に通された。