アトリ
久しぶりに小説というものを書いたため文章や描写の表現が拙いかもしれませんがよろしくお願いします(汗)
※グロ描写がかなり多いため耐性の無い方は閲覧に御注意くださいませ
その身体一つを戦う力に変え、終わりの無い闇の彼方へ向かう。それが自らの意志とは無関係に課せられ、定められた運命なのだから…。
私立黒門小学校・六年一組
朝の時間帯、ホームルームの時間が始まるまで生徒達は親しい者同士で話をしたり、居眠りを決め込んだり…
…だが、そんな彼らの楽しい雰囲気やテンションは一変…
「…」
「「「…!?」」」
「「「…ヒソヒソ」」」
「「「ボソボソ…」」」
一人の女子生徒が教室に来たことで全員先程騒がしくしていたのが嘘みたいに押し黙り、彼女が自分の席に向かうや否や、全員その女子生徒の方を見てなにやら話している…
教室に来たレモンイエローの髪を右側に結んだサイドポニーにし、六年生ながらも低めの身長、生気が感じられない浅黄色の瞳、、そして何より、頭、右耳、両腕・両脚の痛々しく巻かれた包帯と左目の眼帯が恐ろしく目立つ女子生徒…五十雀アトリ(いすず・アトリ)は周囲の自分を見る奇異の目や話し声に慣れているのか、気にせず席に着く
(五十雀の奴、昨日よりも包帯増えてないか?)
(あの包帯の下見た?ツギハギだらけだったわよ)
(なんだよそれ、化け物じゃないか!)
(それにあの眼も作り物みたいで不気味だよ…)
普通の子供とは到底掛け離れているアトリの包帯姿は悪い意味で注目を浴びており、特に体育の時間などで着替える際にたまたま見られた包帯の下に隠れてる継ぎ跡だらけの痛々しい手術跡の様な傷痕、精巧な人形の様な眼…如何なる理由があろうがそれらの要素はアトリが異端者として見られるには充分過ぎた、全員心無い誹謗中傷を呟き、決して彼女の近くには誰も近寄らなかった
「ハーイ♪Good Morning♪」
「「「あ、先生…おはようございます!」」」
「はーい、おっはよー♪おやおや…今日も素敵な挨拶、よく出来ましたねィ♪」
ここで身長150そこそこと成人女性としては小柄ながらもバスト90オーバーというナイスバディな身体に何故か保険医でもないのに白衣で身を包み、パイナップルヘアーに纏めた暗い菫色の髪、少女の様なあどけなさが見られる幼い顔立ちをした金縁の眼鏡をかけてる女性教師…六年一組担任・雨洞ケイル(うどう・ケイル)が教室に入り、明るい陽気な声で生徒達と挨拶を交わす…
「ハァーイ♪それじゃ出席取りますね♪おやおや?朝戸さん…貴女、朝から納豆食べたでしょう?」
「は…はい…そうですが?」
「自分で窓を開けて換気するか、歯を磨くか…でなければ今すぐ此処から去ね、私をあの忌まわしい腐った豆の臭いで殺す気なんですかー?」
「はい…えっ!?」
「次ー、淡井君!ねえねえ?この教室暑いと思わない?先生服脱ぎたいんだけど手伝ってくれませんかァ?」
「はい…って、はい!?」
「おやおや、冗談なのに顔を赤らめちゃって…将来楽しみですね♪」
ケイルは生徒達を見ながら朝の定番・出席確認を取る…なにか理不尽極まりないことや自分の欲望ダダ漏れだが気にしてはならない
「五十雀さん♪」
「…」
「ウッフン♪」
「…」
(((今ので何が解る!?)))
ケイルはアトリの出席を取りながら、何故か彼女に向かってウインクを飛ばす…どうやら意味を理解してるのか、アトリは無言でコクリと軽く頷いたがそれを理解出来ない者達は全員ツッコミを入れた
…さて、その後も続いたケイルによるおふざけ全開な出席確認は終わり、最初の授業、他のクラスとの合同体育のために体育館へと移動…そこで男子・女子と個別の更衣室へと別れて全員着替えを始める
「…」
他クラス間での女子生徒達が友達同士で楽しく話したり、戯れで胸を揉んだりしていたが、やはり此処でもアトリは一人…自分の身体中の包帯を隠そうともせずに堂々かつ黙々と着替えに専念していたが…それがいけなかった
(…ひいっ!?)
(なんなの…あの胸の『傷』…!!)
(何をどうしたらあんな傷出来るのよ!?)
(化け物ッ…!化け物ッ…!化け物ッ…!!)
上着を脱いだアトリの胸元には比較的最近の…真新しく、彼女の身体の中では最も大きいものと思われる巨大な、刔られた様な傷痕があり、それがまるで口を釣り上げて薄ら笑いを浮かべる怪物の口か何かを彷彿とさせるためか、女子生徒達は全員怖気が走り、生理的不快感を感じたか、汚らわしいものを見るような視線を一斉にアトリへ向けた
「…」
一方のアトリはというと感情のこもらぬ冷め切った人形の眼を虚空に泳がせながら体操着とブルマに着替えてサッサと館内へ移動していった
同時刻、街の交差点にて…。
「こいつァ、ヒデェな…で、被害者は?」
「残念ながら…即死です。」
「…はあ…やり切れないねぇ…どうも…。」
そこは見るも無惨な事故現場と化しており、刑事や警察官達が現場の検証に勤めていた…近年増え続けている飲酒運転による暴走事故で一人の人間の尊い命が失われたのである。
近場の雑貨屋に突っ込んだ大型トラックの側の路上に横たわっている哀れな被害者…ピッチリした七三分けの髪にフレームの分厚い眼鏡をした冴えない印象の地味なスーツ姿をした若い会社員・蘇我部民夫、彼の遺体の損傷は目を背けたくなる程に酷く、右腕と左足はあらぬ方向に痛々しく捩曲がってしまっている上に肘の骨が皮膚を突き破り、はね飛ばされた時の地面への衝突で歯が幾つも四散し、大きく裂けた口と砕けた顎から出たと思われる大量の吐血のせいで全体的に汚い赤で染まっていた。
「…はぁ、やれやれ…アンタもツイてないな、蘇我部さん…まだこれからって時、に…?」
刑事が溜息混じりで振り向き様に蘇我部の遺体に語りかけていると、有り得ない光景がそこにあった…。
「…おい?遺体は…?蘇我部さんの遺体はもう運んだのか?」
「…いえ、まだですが…?」
ほんの一瞬、ほんの数秒だけ目を離した瞬間…ついさっきまであったはずの蘇我部の遺体は忽然と姿を消していた。
(まさか、生きて…?馬鹿な!!)
だが刑事はその考えをすぐさま捨てた。そんなはずは無い、と…ついさっき部下から蘇我部は間違いなく『即死』だと聞いたばかりだった。だったはずなのだが…
「…ヒッ!?」
遺体のあった場所をよく見ると、消えた遺体の代わりにそこには真新しい赤い足跡が…
体育館館内にて
「ハーイ♪男子も女子も着替え終わりましたね?」
「「「はい!!」」」
「はいよろしい♪では今日の体育は自由に好きなスポーツしてくださーい♪あ、私もついでに混ぜてくださーい♪一緒に愉しもー♪」
「「「先生ェエエエエエエエ!?」」」
生徒全員を体育座りで待機させたケイルは授業の説明をするや否や、白衣をガバッと開くとその下から女子生徒と同じく体操服+ブルマ姿…という刺激的ないでたちが現われ、大人の保険体育をやらかすのではと?誰もからそう思われたが…
「…雨洞君…?ちょっと話が…」
「おやおや?校長先生?一体全体なんの用でしょーか?」
…速攻でバレてしまった。ケイルはたまたま通り掛かった校長から減給三ヶ月+お説教を言い渡されたそうな…
「…」
変態女のことはさておき、バスケット・バレー・バドミントン・室内サッカー…etc、生徒達が各々が好きなもので楽しんでいる中、怪我が原因か?アトリのみ、体育座りしながら見学している。
他の見学者も居たが、アトリを相手にしたくないのか全員離れていたが、アトリは気にも留めずに天井の明かりをボンヤリと見上げていると…。
「…。」
突如、バンッ!という勢い良く体育館のドアが開かれ、見知らぬ一人の真っ赤に染まったスーツ姿の男が無言かつ土足でツカツカと上がり込んできたのだ。しかもよくよく見れば砕けた眼鏡の奥の瞳には人間らしい生気と正気は一切感じられず、腕と足はおかしな方向に曲がり、大きく裂けた口から赤い液体をダラダラと垂れ流していた。
「…え…?」
生徒達は今、一体何が起きたか解らなかったのか、全員その場から凍りついた様に動けず、思わず男へと視線を集中させる。その刹那…。
「…あっはっ…アッハッはハッハッハっハっハっハッ!!アーッははははははハハハーッ!!」
「びえろぶっ!!?」
男は歯が何本か欠けた状態の裂けた口を大きく開き、いきなりニコォリ…と歪んだ笑みを浮かべて陽気な笑い声を体育館中に響かせたかと思うと片足が折れてるにも関わらず、目にも留まらぬ超スピードで疾走…直線上にいた男子生徒の顔面目掛けて宙を高らかに舞いながらドロップキックを叩き込んだのだ。
「あは♪アハ歯ハHAハははは♪亜は葉ハハハハハははははhaははははは!!あっはっはははー!!!」
「ビキッ!?げびろっ…ブッ…や、やメ…ギッ…!ば…!!」
更に男はドロップキックを食らわせてやった男子生徒へマウントポジションを取り、壊れた機械の様に腕も折れてるのも構わずに殴打・殴打・殴打・殴打・殴打…殴打の雨嵐を容赦無くぶつけて男子生徒の顔を物理的に整形手術を施した。
「「「い…いやぁあああああああああ!!?」」」
「「「わぁああああああぁあああああ!!」」」
生徒達はようやく状況を理解したらしく、全員悲鳴を上げながらのパニック状態になり、我先に我先にと逃げるあまり、転んだ何人かの生徒が逃げる生徒に踏み潰されてしまった。
「あっはっはっ葉ッ!!アーハハ覇はははは!!」
「めぎゃろぶ!?」
「ぶしッ!!」
「しぎぃいいいい!!?」
だが、走る恐怖…否、かつて蘇我部民夫という名前だった男は常人離れした速度で疾走、赤い汚水を撒き散らしながらの跳躍を駆使して次々と生徒を捕まえ、力任せに床や壁に叩き付け、歯で首を食い千切り、髪を頭皮ごと剥がし、一人残らず皆殺しにしてしまうのには数分も必要なかった。
「おや?おやおやァ?随分とまた元気ハツラツな『屍人形』だこと…一体誰が作ったのかなー?」
「中々に素晴らしい『作品』だろう?」
ケイルは今の蘇我部の様子について何か知っていたか、興味深そうに蘇我部の髪の毛を掴み上げて彼のどこを見てるか解らぬ目を覗き込むという明らかに迂闊かつ危険過ぎる行為をやらかしてると何処からかやたら低い声で何者かがケイルに語りかけてきた。
「私の屍人形が失礼致した。なにぶんついさっき目に入った者を材料としましてな、『屍霊使い』…『蒼き豪雨』ヘルケイル・レーゲン殿。」
「おやおや、アナタは確か…『屍霊使い』の中でも歴戦の古兵と知られてる『赤い旋風』ジャガード・サイクロンさんじゃあないですか!いやぁこんなところで会えるなんて光栄ですよ!」
何者か…風の流れを彷彿とさせる様な赤い紋様が走る黒衣に身を包む男…『赤い旋風』の異名を持つジャガード・サイクロンの姿を見たケイル…否、いつの間にか蒼い雨を彷彿とさせる紋様が走る黒衣を纏った姿をした『蒼き豪雨』の異名を持つヘルケイル・レーゲンは彼に会えた事が嬉しいのか、感激した様にその場で飛び跳ねた。
ヘルケイルとジャガード、二人は普通の人間ではない…『屍霊使い(ネクロマンサー)』、人間の屍を素材にした自らの操り人形『屍人形』を操る禁忌の秘術を身につけた闇の存在たる呪術師である。彼らは普段は表立ってこのような騒ぎを起こさない、世界各地の人間社会に紛れて人知れず、目立たぬように暮らしているはずなのだが…今回は事情が違っていた
「そなたも御存じであろう?選ばれし我ら屍霊使い達による『屍霊祭典』が開催されたことを…それを世界中の屍霊使い達に知らしめる狼煙代わりに…」
「私とアナタが最初に戦うことが決まりましたか♪それはそれは…楽しそうですね♪」
『屍霊祭典』…それは444年に一度行われる世界各地から選ばれた44人の屍霊使い同士が最後の一人になるまで戦う『殺し合い』の儀式、通常の屍霊使いはこの世に存在する死体からしか屍人形を生み出せないが、見事に生き延びた者には死の世界の支配者の権利と称号を与えられ、自由自在にこの世へと死の世界の死者達を呼び出して無尽蔵に屍人形を生み出すことが可能となり…
この世を全てを自らが率いる死の軍団で埋め尽くし、我が物にすることが可能となるのだ。
「いやぁ楽しくて楽しくて仕方ないですよ…なにせ、これから私のかわいいかわいい屍人形を貴方の屍人形と戦わせられるんですから…ねェエエエエエ!!」
「…」
ヘルケイルの無邪気ながらも愉悦と歪み切った欲望に満ちた咆哮と共に見学時の体育座りを維持しながら沈黙を保っていた五十雀アトリ…という名の少女の形をしたヘルケイルの使役する『屍人形』はゆっくりと立ち上がり、虚ろな目をジャガードの屍人形と化した蘇我部へと視線を移し…
「…ッ!!」
「アハハ波ハハ…は?」
右腕全体の包帯を解きながら右手をかざした瞬間、そこから現れたものは未熟な少女特有の細腕ではなく、腐敗のあまりに灰色に変色した見るも悍ましい死体の腕だった。その腕の内側から突き破るようにして何本もの血管が現れ、ウネウネとミミズの様にのたくり、蠢き始めると蒼い色のナニカ…否、完全に腐汁と化した血液をマシンガンの様に高速で連射し、蘇我部の全身を撃ち貫いたのだ。
「キャッホー!決まっちゃいましたー♪アトリちゃん必殺の猛毒の血液!人間程度なら一発でドロンドロンに溶けちゃいますよー?すごいでしょー♪」
「ほう?やるではないか…ならばこちらも…やれ!」
「あは…あば、あばばば…バァッ!!」
「…!!」
人間相手ならば触れた瞬間に腐り落ちる程の強力な毒性を誇るアトリの血液を浴びた蘇我部だが、元から死した存在たる屍人形であるためか決定打にはならなかった。蘇我部の全身の肉という肉が弾け飛び、骨だけが残るとその骨は、ゴキッ…ゴキッ…と生々しい音を立て…。
『…シャギャアアアアアアアアアアアア!!』
上半身は人間の白骨だが下半身は首が四つある大型のジャガーの骨と化すという有り得ない変形を遂げたのだ。
「これが私の使役する屍人形の真の姿だ」
『ギャアバアアアアアアア!!』
「…ッ!?」
変異した蘇我部…屍人形・ジャガーファング=クアットロは野獣の如き咆哮を上げ、口から真空波の刃…所謂カマイタチを吐き出してアトリの身体をズタズタに切り刻み、アトリは変色した血液を噴き出しながら尻餅をつく形で倒れる。
「流石は『赤い旋風』、一筋縄じゃあいきませんか…あーあ、かわいいアトリちゃんを『あの姿』にするのは気が引けますけどォ…ま、仕方ないですよね?アトリちゃーん♪お願いしまーす♪」
「…!」
ケイルの指示の下、アトリは傷ついた身体を必死で起こして立ち上がると同時に彼女もジャガーファングと同じく、有り得ない変形を始めた…
『うぅううう…ウガァアアアアアアアアアア!!』
アトリの全身の肉が弾け飛ぶと体育館中に降り注ぐ蒼い血液の雨と共に現れたナニカ…白骨化した小さな身体、頭部・背中・両腕から血管を絡めた骨の翼を生やし、胸元にはあの巨大な悪魔の口を思わせる傷口に違わぬ巨大な骨の牙がビッシリ並んだ獣の口がバクンッ…と開き、腰は異常なでに長い尾骨を生やし、脚は鷲や鷹などの猛禽類を思わせる鋭い鈎爪を生やしたものに変異していた。これが五十雀アトリの屍人形としての真の姿…スカルエンジェル=スコールである。
『ウァアアアアアアアアアア!!ガァアアアアアアアアア!!』
『ギャアガアアアアアアア!?グルァアアアアアア!!』
スカルエンジェルはジャガーファングの頭上目掛けて胸元の口から蒼い煙を吐き出す。すると煙は段々と巨大な蒼い雲と化し、次の瞬間…雲から蒼い猛毒の血液による雨が降り注ぎ、ジャガーファングの身体をみるみるうちに溶かしていく。
「い、いかん!?早く雨雲から離れろ!!」
『ギャウウウウ!!シギャアアアアアアアア!!』
ジャガードはジャガーファングに雨雲から離れる様に指示を下した。ジャガーファングは反撃として大気中から吸収・圧縮した空気の弾丸をスカルエンジェルに向けて発射…しかし。
『ヴォアァアアアアアアアアアア!!』
『ギュオァアアアアアアアアア!!?』
スカルエンジェルは高速で空中を縦横無尽に飛び回りながら空気弾を避け、ジャガーファングに接近…四つの首のうちの二つを力任せに振るった拳でバラバラに砕いてしまった。
「な、何をモタモタしている…!!クソッ…やはり時間を掛けずに作った急ごしらえなのが裏目に出…!?」
『ウガァアアア!!ッルォラァアアアアアアアアアア!!』
「お…おい!待て!?このデク人形!!何をするつもり…!?」
『ギョアアアアアアーッ!!?』
「…だ!?がばぁっ!!」
ジャガーファングの無様なやられようにジャガードが苛立つと、気づけばスカルエンジェルはその小柄な身体からは信じられない様な腕力と翼の血管を巧みに使い、自分の倍以上ある巨体を誇るジャガーファングを持ち上げてジャガード目掛けて投げつけたのだ。気づいた頃には時既に遅し…避け切れずにジャガーファングの下敷きになってしまう
「ぐはっ…う、ぐ…!?ぬぅうううう…!!ヘルケイル!貴様ァッ!!」
「おやおや?まさか…ここまで来て卑怯だとか言わないですよねェ?屍霊使いなんてのはそもそも人間の屍を操ってる時点でみーんな自動的に外道の仲間入りなんですよー?卑怯行為上等DEATH♪」
ジャガードは屍人形を操る屍霊使いである自分を直接狙ったスカルエンジェルの行為に対してヘルケイルに激しい怒りの形相を向けるが肝心の彼女はヘラヘラ笑ってどこ吹く風…この卑劣極まる手段を屍霊使いの戦いとしては当たり前だと主張し、ますますジャガードの神経を逆撫でた。
「さあ…アトリちゃん♪そこの頭硬ーい、くたばり損ない達にトドメ刺してあげちゃって♪」
『…』
「ま…待て…!!やめ…!!」
ヘルケイルが下したジャガードに対する残酷な判決は…死刑、スカルエンジェルはその判決の下、ジャガードとジャガーファングに歩み寄り…
『ウガァアアアアアアアアアア!!』
『ギャアグァアアアアアアア!!』
「ヒッ…!?あ…ああ…あ…死ぬ…溶ける…!この私が…!?あんな小娘の屍人形如きにィイイイイイイ!!嫌だァアアアアアアアア!!あがぁああああああああ!!」
スカルエンジェルは骨翼に絡めた血管をジャガーファングとジャガードに突き刺し、毒の血液を流し込んだ…ジャガードは必死で逃れようとしたが最早手遅れだった。見苦しい断末魔を上げてジャガーファングと共にドロドロの腐汁と化し、死亡したのだ…。
『赤い旋風』ジャガード・サイクロン…DEAD OUT、残り人数:43人
「うんうん♪やったね!初勝利は私達のものだよー♪アトリちゃーん♪」
「…」
ヘルケイルは黒衣を脱ぎ去りケイルに戻り、勝利の喜びを抑え切れず、全身に蒼い液体を纏いながらスカルエンジェルから元の姿に戻ったアトリに抱き着き、頬擦りした。
「アトリちゃんは私が今まで作った屍人形の中でもとっても、とーっても強いんだよ♪これからも一緒に頑張っていこー♪」
「…。」
我が子の様にアトリを愛おしく抱きしめながらケイルは無邪気な笑みを見せるがアトリはというと…その視線をつい先程、自ら手にかけたジャガードだったモノと周囲に無惨に転がる生徒の死体に向けていた…。
「さーてと♪後はもうこの学校で私とアトリちゃんが先生と小学生やる意味が無くなっちゃったから貰うもの貰ってバイバイしよっと♪」
いつの間にかケイルは血塗られた床に沈む女子生徒達の死体をいくつかブルーシートに包み込み始めていた…破損したアトリの身体の修復用の言わば代替品として回収してるようだ。同時にこの作業を終わらせた後、速やかに自分達の正体を隠すための隠れ簑として使っていた学校からおさらばする予定である。
「…。」
屍霊使いが使役する屍人形に生前の記憶や自我、感情の類は一切無い…無いはずなのだが…
「…」
アトリは自分の本来の役割通りに機能していない目が勝手に機能したことに気づいていなかった。
見下ろしていた赤い赤い死肉の花畑の中に、ただ一粒だけの決して腐ってなどいない雫を零していたことに…
どうも皆様、作者の槌鋸鮫です
内容が内容なだけに命の尊厳を極限までガン無視した非常に吐き気を催すものでしたが最後まで楽しめていただけましたら幸いです
本作は屍人形…早い話がゾンビとネクロマンサーを取り扱ったバトルロイヤル系の小説となりましたが、誕生の経緯は某機動戦士の模型を組み立てたりバラしてたりしてた時、ふと思いついた結果がコレです…なにをどうしてこうなった(汗)
以下、用語集&イメージCV(妄想)
屍人形:屍霊使いが使役するゾンビ、基本的にこの世に存在する屍でしか作れないが媒体にすれば後はある程度自由に構造を弄って改造したりすることが可能、どの屍人形も媒体の姿からかけ離れた真の姿を持つ、基本的に彼らには生前の記憶、自我や感情の類は無い、名前の由来は操り人形+死(DEAD)
屍霊使い(ネクロマンサー):屍人形を使役するという禁忌の秘術を得た外法の者達、闇の住人のため普段は屍人形と共に人間社会に紛れて生活している、大抵はケイルの『蒼き豪雨』、ジャガードの『赤い旋風』など何らかの異名・通り名を持つ
屍霊祭典:444年に一度行われる44人の選ばれた屍霊使い達による殺し合い(バトルロイヤル)、最後の一人になった勝者に与えられる権利は『死の世界の支配者』、この世の屍でしか屍人形を作れない屍霊使い達だがこの権利を得ることでこの世を死が蔓延した世界に塗り替え、実質この世の支配者としても君臨出来る
五十雀アトリ/スカルエンジェル・スコール…イメージCV:金元寿子
雨洞ケイル/ヘルケイル・レーゲン…イメージCV:原田ひとみ
ジャガード・サイクロン…イメージCV:屋良有作
…と、こんな感じとなります
それではまたどこかでお会いしましょう、槌鋸鮫でした!