黒と白
カランカラン…
パラパラ…パラ…
コップの氷や地図をめくる音が部屋中を占拠している。
カランカラン…
男の目には地図をみすぎたのかパンダのようなクマができている。
寒いぐらいにクーラーのきいた部屋には仕事用のデスクと接待用のソファが立ち並んでいる。
この情景ではあまりに殺風景なので、気休めのぐらいに置いた観葉植物が妙に輝いていた。
そんな部屋に、突然ドアをノックする音が響いた。
「どうぞ。」
それを合図に、疲れきった男が二人入ってくる。
「今、戻りました飯田です。」
「富田です。うわっ寒っ」
「ぁあ~。お疲れ様ですぅ~どうでした~?」
男は、接待用のソファに座ったままは気味悪い位にクマのできた目を細める。
「えぇ、どこも異常はなく大丈夫でした。これで工事に移れると思います…」
「そ~れはよかったぁ~。今のところ順調ですぅ~」
「あっ…はい…」
目が微動だにしない男の笑みを見て、飯田達は一瞬寒気がする。
「じゃあ、あなた達の今日の仕事はこれで終わりなので帰っていいですよ~♪」
ご機嫌で地図を見ながら、足をバタバタさせて言う男を見て飯田達は再度背筋が凍る気がした。
「はい!じゃあ失礼します!」
富田は一刻も早くこの男から離れようとするが、
「あの…黒さん…」
「はぁい?」
飯田は少しばかり踏みとどまった。
「なんです?」
「"栄光の園"について聞きたいんですけど…」
飯田はかき氷の前に自身が考え込んでいる種となるものについてどうしても聞きたかったのだ。
「えっ飯田さん。もうお仕事は終わりですよ~?」
「はい。わかってます。僕はプライベートとして聞いているんです。」
「プライベートとしてって…すごい仕事熱心なお人ですねぇ~」
男はふざけた笑みを深くした。
「ふざけないで下さい、僕は真面目に聞いてるんですっっ!!!」
飯田の声は部屋の外にまで響く。
「えっあっすいません…飯田さん、ちょっとしずかに…」
富田は掃除中の女性に軽くお辞儀し、口に指を当て飯田をなだめた。
「あぁすまん…」
黒はそんな飯田を見て変わらずにやにやしている
「笑わないで聞いて下さい。……黒さん、僕は本当にこの街に"は栄光の園"をつくる意味はあるのか疑問に思っているんです。」
「そんなこと思ってたんですかぁ?ならその疑問に答えましょう。」
ソファから立ち上がり飯田の前に立つとこういい放った。
「この街…栄光街は、見る限り枯れています。枯れまくっています!!!」
黒は窓から見える、栄光街を見渡しながら吐き出すように言う。
「そんな枯れた街をオアシスに変え潤いで満たす!…この栄光街の名に相応しい、枯れた街ではなくオアシスとして新たに世に広めて行きたいのです!」
「そして栄光の園はこの街の新たな時代の希望そのものですよ!!」
大きく腕を広げ、これでもかというくらい顎を上に向け黒は飯田の問いかけに全力を使い答えきった
が、
「…本当にそれでいいんしょうか?」
飯田が欲していた答えは違ったのだ。