栄光街
じりじりと照りつける太陽で道路は蜃気楼が見られる。
そらの入道雲がその暑さを語っていた。
まったくもって暑い。暑すぎる。なぜこんなに暑いんだ。
びしょ濡れになりながら男は肩をおとした。
ふと男は辺りを見渡してみる。
酔っ払いが好みそうな居酒屋に、中学生がたむろってそうな本屋。
それに掘り出し物が見つかりそうな店。
この街は年期がはいっているが、それがまたいい。絵になるようだ。
どこか懐かしさも兼ね備えていて、引き込まれるような魅力がある。
だかあえて欠点をあげるならばそれは
人っ子一人いない。
(おかしい。なにがダメなんだ?)
男は思う
(やっぱり新しいものがいいのか?
近代的にデパートとか遊園地とかないとダメなのか?)
(そんなことしたらせっかくのこの街が台無しじゃないか!!)
(なんでもかんでも新しいものを取り入れたからっていいことなんてない!
すぐに飽きるだけだ!)
「一人ぐらいこの栄光街を楽しめよ!」
「うわっびっくりしぁ、もう」
「あぁ…すまん、」
男は我にかえった。
「もう、びっくりさせないで下さいよ~。飯田さん。どうしたんです?大丈夫ですか?」
「あぁこの暑さで少しイライラしてて。」
高ぶった感情を抑えるよう自分に言い聞かせ、もう一度頭を整理し、ある疑問をぶつけた。
「なぁ富田」
「はい?」
「どうして栄光街はこんなにも活気がないんだろう?」
「えっ。あぁだって暑いですもん。みんな外に出たくないだけですよ」
「それもあるがどうしてこの街は繁栄しない?こんなにも素敵じゃないか。」
「それは…まぁでも今やってるじゃないですか。その繁栄のために。」
「そうだけど……ここ最近の俺は本当にあれを造ることによってこの街がよくなるのか疑問に思うんだよな…」
「またそんなことを!あれが完成すればこの街は日本中から注目を浴びるわけですよ!?」
日本中から注目。この言葉を富田は力を込める。
「飯田さん、ちょっと考えを変えてみませんか?きっといい方向に進みますって。」
「まぁ、それならいいけど…」
飯田は富田にぎこちない笑顔を見せると、また眉間にシワを寄せ考えに込んだ。
(いい方向か…今の俺には本当に賛成することしかできないのか…?)