六通目
やあ。元気ですか。
とらです。
新しい街での生活は慌しいばかりで、僕はまた次の街へ行くことににしました。
実は現在、東の海に行くはずが、なぜか西の山に居るのです。
どうやらバスを間違えたらしい。気づいた時には山だった。
もう面倒くさくなってこの街にいついたのだが、ここは夏の間中、ヒグラシが五月蝿いし、やっと秋になったと思ったら、お世話になっているアパートの空はイガイガが降ってくる。
(中身は美味しいです。君も好きなあれだよ)
秋の虫の音は嫌いじゃないんだが、イガイガはいけない。
僕も靴を買おうかと思う、アレは踏むと最悪だね。
肉球がしぱしぱしぱしぱしてしまいます。
ところで君は革靴マニアらしい。
クロ君に聞いたのです。さいきん凝っているそうですね。
しかし、まだ一足も買っていないそうじゃないか。
どうして買わない物に凝るのですか? お金がないのですか?
遠く離れている僕がこんなことを知っているなんて、驚いたでしょう。
烏を甘く見ないほうがいい。彼らはよく人を観察している。
そして神出鬼没です。
翼があるということは、恐ろしいことです。
それに彼らは闇に溶け込むような気がする。僕らとはまた違った物を持っているようだよ。
なんにしろ、君は兎に角、早く革靴を買いたまえ。
今度こそ僕は海に行こうと思う。
しかし、今年も僕は泳げないままで終わりそうです。
でも寒い海も嫌いじゃないから、まあいいさ。
また手紙します。今度はなるべく間を置かずにするよ。
君のとら