—/1\—「始まりの決断」
————???
石レンガで組み上げられた塔の最上階。
窓の様に開けられた人工的な穴から外を見る、鋭い目つきで髭を蓄えた黒髪で高齢の厳格そうな男性と、その後ろで枯木の様に痩せ細った男が複数の書物を広げている。
他から見ても、『塔の上でアフタヌーンティーを楽しんだ直後』という光景には到底見えない程の剣呑な雰囲気が見て伺える。
書物を広げていた枯木の様な男が顔を上げ、告げた。
「黒王様、やはり…必要ならざるを得ない様です」
「————そうか」
厳格そうな雰囲気を持つ『黒王』と呼ばれた男は、その双眸を閉じ、ゆっくりと、力強く、再びその影の様な漆黒の目を見開いた。
「出ずる『勇者』に、我らが『黒神様』の恩恵があらん事を……」
黒王の呟いた一言は虚空へと消え去るのみだった————
————————嘗て、その世界は大きくして二分、細かくして五分に分かれていた。
血潮の熱さと炎を司る『赤の国』
無骨な強さと鋼を司る『金の国』
堅牢な硬さと地を司る『土の国』
これらを『黒の領土』と呼んだ。
海の壮大さと水を司る『青の国』
森の静けさと木を司る『緑の国』
これらを『白の領土』とした。
互いの大陸の中心に、互いの小国を築いた。
『黒の小国』と『白の小国』。
互いに戦いもなく、時折冒険者が大陸を回る程度のものだった。
————そんな冒険のある平和から300年。
とある魔法に長けた男が、突如として『緑の国』を魔物を率いて襲撃。
数々の物資、食糧、人々を奪い、そして——消えた。
あとに残ったのは、復興するには少な過ぎる物資、食糧、人々…そして荒れ果てた森の王国だった。
再び襲撃があるかもしれない。
そう考えた『白王』と『黒王』は、襲撃され復興作業に集中する『緑王』を除いた四王を集め、魔法に長けた男…『魔王』と名付け、原因究明を急いだ。
しかし、何もわからぬまま、半世紀が過ぎた。
七王軍と魔王軍の戦いが拮抗し、不毛な戦いの中、黒王の所に『魔王となった男の師』と名乗る男が現れる。
男は言った。
「あの男はこの世界の魔法を極め、外道に走った。あの男を正すのが、師としての償いである」
そう言って男は、巨大な魔法陣から、一人の人間を呼び出した。
その人間は、異世界の男で、魔王と同等、もしくはそれ以上の魔力を有し、未知の魔法を生み出した。
異世界の男は、黒王と魔王の師から武器と防具を受け取り、魔王を討伐する為の旅をした。
長い旅の果てに、魔王は異次元にいると分かり、仲間達と向かう事にした。
『赤の国』で出会った『赤い槍兵』
『金の国』で出会った『鋼の機械人形』
『土の国』で出会った『茶色の人形遣い』
『青の国』で出会った『青い狙撃手』
『緑の国』で出会った『緑のエルフ』
道中で出会い、幾度となく戦い、魔王から裏切られ、仲間となった『黒い死神』
彼らは力を合わせ、魔王と戦うが、倒すまでに至らず、封印する他なかった。
魔王は封印される直前、怨恨の念が篭った恐ろしい声で叫んだ。
『私は再び現れる!再びこの世界を支配する為に!その為に貴様らを殺す!長い時が流れようと、必ず私は支配と復讐を遂げてみせる!私は、私はァァァァァァ!!』
その言葉は、『復活する』と予告していた。
それは、確定事項と言わんばかりに————————
それから200年、その確定事項は、実行され、真実となる。
World/Five\Kingdom!
プロローグ
「始まりの決断」
訂正
魔王となった男の弟→魔王となった男の師