第7話『真実は意外にも近くに』
翌日…
4人は再び、あの記述の解読を始めた。
天道:「舞川くん、頼んでおいたものは持ってきたわね?」
舞川:「もちろん持ってきたよ」
響はそう言うとバックの中からいくつかの書物のようなものを机にだした。
向井:「なんだよこれ」
響:「これは父さんの部屋にあったものでもしかしたら解読のヒントに繋がるかもしれないってことを天道さんに言われたから持ってきたんだ」
向井:「そうなのか…。で、何かわかったのか?」
響:「一応、一通り読んでみたけど解読に繋がるものなのかはわからない。…そういえば、神谷は何かわかったのか?」
神谷:「…少しだけな」
神谷はそう言うと、響に何枚か束になった紙を渡した。響はそれを受け取り、それを見た。
響:「お前…こんなところまでわかってたのか?」
神谷:「…まあな。」
響:「んっ、このハテナってなんだ?」
神谷:「…それは異次元への入口をつくるときに必要な物質だ。まだ、それがわからないからハテナとしている」
響:「そういうことか…。じゃあ、この物質がなんなのかわかれば異次元への入口は開かれるのか?」
神谷:「…おそらくな」
そこで、話してる二人の間に
天道:「あなたたち、意見の交換をするのは別に構いませんが、まずはこのチームのリーダーである私に話しをしなさい!わかったわね?」
響:「今度からそうするよ」
神谷:「…ただ自分をおいて先に解読を進めてほしくないだけじゃないのか?」
天道:「神谷君…、あなたいちいちうるさいわね!私はリーダーとしての役割をきっちりと果たすためにグループの解読の進度を把握しておかないといけないの!決して、あなたの言ったような理由とは異なります!」
神谷:「……。」
天道:「…まあ、いいわ。舞川くん、向井くん、こんな男のことはほっといて、その物質がなんなのかを明確にしましょう」
向井:「…そ、そうだね」
そして、響と向井は戸惑いながらも天道の言う通りに神谷を無視して、また3人で解読を始めた。
響は自分で持ってきた書物にそのような物質が記載されてないか確認をし、向井と天道はそのまま解読を続け、手掛かりになるようなものを探した。
一方、神谷は黙々と一人で解読を続けていた。
しばらくすると、
響:「…もしかしてこれか!?」
向井:「響!なんか、わかったのか?」
天道:「舞川君、どうしたの?見せなさい!」
響が見つけた記述にはこのように記されてた。
【未知なる空間への入口の作り方】私は研究に研究を重ね、ようやく未知なる空間へと繋がる入口を作りだすことに成功した。この入口を作るには二つの物質が必要だ。この物質とこの物質はどちらも特殊な性質を持っていて反応を起こすととてつもないエネルギーを放出し、入口が開かれる。………〕
向井:「本当に肝心なところ書いてないな〜。これじゃあわからねぇよ」
響:「でも、これで神谷の解読は正しいってことと、物質が二つ必要だということがわかった。後はその物質が何かさがすだけだ!」
向井:「そうだな!でも、やっぱ神谷ってすごいんだな…」
天道:「…ちょっとはヤルわね。…まあ、そんなことより、そうとわかれば早くさがしましょう!」
3人は響が持ってきた書物を手にとり、その二つの物質をさがした。
しかし、何時間が過ぎてもそのような物質の名前はなかなか見当たらなかった。
向井:「あー、全然見つかんねー。もうこれ3回ぐらい見終わったぜ〜。」
響:「確かに全然見つかんないな…」
天道:「皆さん、どうやら集中力が切れてしまったみたいなので今日はここまでにしましょう。それではまた明日」
天道はそういうと書物をまとめ、さっさと帰っていった。
向井:「沙希ちゃん帰っちゃったね」
響:「ああ。俺らも帰るか?どうせ明日もあるし」
向井:「そうだな。じゃあ帰ろう!」
二人は荷物をまとめ、校舎の門の前まで歩いていった。すると、響は突然立ち止まりポケットの中やバックの中に手をいれ何かをさがしはじめた。
後ろをふりむき
向井:「響!どうした?」
響:「研究室に忘れものしたっぽい。ちょっととりにいってくるから先帰ってていいぞ」
向井:「わかった!じゃあ先帰ってるな。じゃあな!」
響:「じゃあな!」
響はそういうと再び校舎の中へ入っていった。ふと腕時計を見ると時刻は9時11分だった。
(もうこんな時間たってたのか。てか、校舎暗いし誰もいなくね?)
日が出ていた登校時に窓から入ってきた光は夜の暗闇へと変わり、廊下には足音だけがこだましていた。
階段をのぼると左に研究室が見えた。まだ明かりがついているみたいで入口で誰かが話していた。
(まだ残ってる人なんかいたんだ。いったい誰だろ)
響はゆっくりと近づいていった。すると、そこには神谷と黒づくめの見知らぬ男が話しをしていたのだった。
響:「おう、神谷」
神谷は声をかけられ少し驚きながら
「おう…、なんか忘れものでもしたのか?」
響:「あたり。ちょっと大事なものを忘れちまって」
神谷:「…そうか」
すると見知らぬ男が近づいてきてポケットから少し変わったペンダントを出し、響に見せた。
謎の男:「忘れものっていうのはこれじゃあないかな?」
響:「はい!そうです!ありがとうございます!」
響は驚きながらもペンダントがあったことにホッとし、安心した。
謎の男:「やっぱりそうだったか。じゃあ君が響君か」
響:「なんで俺の名前を!?」
謎の男:「そんなことはすぐにわかるだろう。君とはいずれまた会うことになる」
そういうと謎の男はポケットの中から何かをとり出し、下投げで軽く前に投げた。すると、奇妙な黒いアーチが目の前に現れた。
響:「お前、もしかして父さんなのか?それか父さんの仲間か?」
謎の男:「さあな。最後に一つ言っておこう。『真実というものは意外にも目の前にあるものだ』それでは…」
謎の男はそういうと黒いアーチのようなものに入っていき、消えていった。
神谷:「…」
響:「あいつは何物なんだ?」
神谷:「…わからない。しかし、時々現れヒントをくれる。おそらくあいつは何か重要なことを知っている。」
響:「そうか…。『真実というものは意外に目の前にあるものだ』…いったいどういうことなんだ」
神谷:「あいつは今1番さがしているもののヒントをくれる…。何か思いあたるものはないのか?」
響:「俺が今1番さがしているものか…。それなら、異次元に繋がる扉を発生させるための2つの物質かな」
神谷:「物質が2つ必要だったのか。なぜ、それがわかったんだ?」
響はバックから未知なる空間の作り方が記載されている書物をだし、神谷に渡した。
響:「これは父さんが遺した書物でそれにそう書いてあるんだ」
神谷はじっと作り方の記述を見ていた。
そして、少しすると神谷がこう言った。
神谷:「この記述、何かおかしくないか?」
響:「いや、別におかしくないと思うけど」
響はもう一度注意深く読んでみた
響:「んっ!?なんか、ここの『この物質とこの物質はどちらも特殊な性質を持っていて…』っていう文章、なんかおかしくないか?」
神谷:「そうなんだ。文章だけの記述なのにこれだとまるでそこにあるかのように書かれている。」
この神谷の言葉をきいた瞬間、響は今までのモヤモヤが体の内側からいっきに放出されたような感覚に陥った。
響:「そうかぁ!そういうことか!!わかったぞ神谷!」
響はそういうと神谷から書物を受けとり、記述の一部を手でちぎった。
神谷:「おい、何してんだ?」
響:「これが2つの物質だよ!」
神谷も何か気づいたらしく
神谷:「そういうことか!それならあの文章にも納得がいく」
響:「『真実というものは意外にも目の前にあるものだ』、この言葉のおかげだな。さっそくやってみないか?明日、教授とかみんなの前で失敗するのもヤダし」
神谷:「確かにそうだな。やってみるか」
そういうと2人は準備をし、2つの物質をセットした。
響:「よし、行くぞ?」
神谷:「ああ」
神谷はうなずいた。
その瞬間、響はボタンを押し、機械を作動させた。
すると、バチバチと音をたてながら少しずつ何かができ始めた。
そして少しすると、
神谷:「おい!もうすぐくるぞ!」
響:「わかった!」
響は入口ができたときのパワーを抑え、維持するための準備にとりかかった。
すると、ようやくアーチのようなものができてきた。
響:「そろそろとどめるか」
そういうと響は物質の化学反応を弱めるレバーをおろし、パワーゲージを見た。
響:「あれ?パワーが下がらないぞ。神谷!なんか、マシーンの調子がおかしいぞ!」
神谷:「わかった。ちょっと見てみる」神谷はそういうと物質が放出されているところに近づいていった。
するとその瞬間、突然パワーゲージが急激に上がり、緊急のブザーが鳴り響き始めた。
響:「神谷!!ヤバイ!近づくな!!!」
小さかったアーチは巨大なアーチへと変わり、まるでブラックホールのように実験室の機械やまわりのものを吸い込み始めた。
響は近くのものにつかまり、吸い込まれないよう必死に手に力をいれた。あまりの衝撃で前が見えなかった。
響(神谷はどうなったんだ!?この状況はまずい!なんとかしなくては!)
ドシャーン!!ドッカーン!!ドドドン!!!!!
響の頭に何かがぶつかった。意識がどんどん遠くなっていく。
響は黒い闇の中へ吸い込まれ、消えていった…。
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