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第3話『恋の予感』


そして、次の日…。




響はいつもと同じように学校に登校した。しかし、彼の頭の中だけはダンスター教授の講習のことだけでいっぱいになっていた。


(今日からダンスター教授の特別講習だ!どんなことするんだろ?)



校舎の中に入り、ちょっと進んだところで、響は不意に視線を携帯電話から外し、顔をあげた。すると、同じぐらいの歳の見覚えない女の子が、椅子に腰をかけ、読書をしていた。


窓ガラスを突き抜け、透き通った朝の太陽の心地よい日差しが反射する美しい彼女の黒髪と本にむけられた彼女の真っすぐな瞳は一瞬にして、響を神秘的な世界へと運び、心を震わせたのだった。



さっきまでは教授の講習のことだけで頭がいっぱいになっていた響だったが、今の彼の意識は完全に彼女へと集中している。


(こんなかわいい子…この学校にいたんだ。)




響は目が合ったらどうしようかと考えながらも、彼女を見つめ、ドキドキしながら彼女の横を通りすぎた。通り過ぎたのは一瞬だったが、響はまるで時が止まったかのような錯覚に陥り、本の一瞬が少し長く感じた。




しかし、彼女は響の視線には気づかず、表情を全く変えずに、本を読み続けるだけであった。



(こんなに見てるのに気づかないって、どんだけ本に集中してんだよ!?…まあ、気づいたところでただ気まずくなるだけだからいいんだけど…。)響はこの瞬間、こんなにも近くにいる彼女に、自分という存在は彼女にとって同じ学校にいるということなだけであって所詮は多くの人間の中の一人だということを思うと、彼女のことを少し遠く感じざるを得なかった。



「おっ!おはよう!」

後ろから突然誰かが響の肩を叩いた。響は突然のことに少し驚いたが、その正体はすぐにわかった。そう、その正体は向井だった。向井はニヤニヤしながら響の顔を覗き込むようにジロジロ見ている。


響:「朝からなんだよ?」


向井:「後ろからバッチリ見てたぜ〜。あんなに見つめちゃって!」



響:「ああ。なんだか、今日はダンスター教授の講習のことで頭がいっぱいになっててさ。本能的に窓から入ってくる綺麗な日差しに視線がいっちゃったんだよ。俺ってなんか変だよな〜。」



向井:「言い訳がなんだか苦しいな〜舞川くん。僕には君の視線は完全に読書している彼女にいってた気がしたんだけどおかしいな〜」向井は少し大きな声で言った。


すると、厄介な大野が

「おい!向井ー!突然大きな声だしてどうしたんだー?」


響は耐え切れず、

響:「いや、なんでもないよ!大野!」


大野:「いや、響。お前は関係ないだろ?」


響は小声で、向井に

響:「あとで飲み物おごってやるから、あいつになんでもないって言え!」



向井:「飲み物にアーモンドチョコならいいけど」



響:「本当に欲張りなやつだな」



向井:「じゃあ、言っちゃていいか?」



響:「わかったよ!それもおごるからはやく言え!」


向井:「大野ー!さっきのはなんでもねーから気にすんな」


大野:「そうか…。そう言われると余計気になるんだがまあ、いいか」


響はこの瞬間、

(ふぅー。あんなやつにバレたらすぐに広まってロクなことがねぇんだよ。危ない危ない。)とほっとしたのであった。



向井:「これで放課後、飲み物とアーモンドチョコな!」


響:「わかったよ」

(本当にコイツむかつくやつだな)



向井:「じゃあよろしく〜。」


響:「はいはい。てか、まだちょっと早いけど、もう教授の教室に行っちゃわない?」


向井:「早く行って損はないしな!」


こうして、二人はロッカーからデジタルノート(各教科の教科書のプログラムが搭載され、タッチペンなどで書いたり、インターネットとつなげ、簡単に資料などを検索できるノートサイズのタッチパネル)をとり、教室へ向かった。


すると、向井がまたもニヤニヤしながら

「あの子、かわいかったな」


響は目をそらしながら

響:「そうか?別に普通だったと思うけど」


向井:「確か、俺らと同期で名前は本田与美子だったかな」


響:「そうなんだ。」

(あの子、ヨミコって名前なんだ!なんだか、変わった名前だけどいい響きだ!)



そんな話をしている間に、二人は教室の前に辿り着いた。響はドアを開け、中に入った。ドアが開く音で教室にいた人の視線は響に向けられた。響は誰とも目をあわさず、後ろのほうの一番奥の席に座った。

(こういう空気ってなんだか慣れないんだよな〜)



向井も響の後に続き、隣の席に座った。向井はなんだか落ち着かない様子で前のほうを見ている。


響:「お前さっきから落ち着かない感じだけどどうした?もしかして緊張してんの?」響はさっきのお返しとばかりに向井をからかうようににやにやしながらそう言った。



すると、向井が前を指さし向井:「あれって、読書してた女の子じゃね?」



響:「えっ?」

響は向井が指さすほうを見た。顔は見えなかったが、ツヤのある綺麗な黒髪にあの雰囲気は彼女に間違いないと、響は感覚的に悟ったのである。



すると、その女の子は突然後ろを向いた。そして響は予想外のことに彼女と目が合ってしまった。響は突然のことに驚き、慌てて目を背けた。




(ヤベー!今、目があったよな!?どうしよう?てか、やっぱり超かわいい!……てか、もしかして俺が見てたのバレた?なんか、変なやつだとか思われてないよな?)


響はこんな心の動揺を隠すように平然とした態度で、窓の外を眺めはじめた。しかし、彼の目にはぼんやりとした外の景色だけが映り、彼女のことしか考えてないのはもっての他である。



向井:「やっぱりあの子だったな」



響:「……。」



向井:「よかったな!響!今日知って、今日から同じ授業を受ける生徒同士になるって、けっこうツイてると思うぜ!」



響:「ああ、唯一ツイてないっていうところはお前が見たってことぐらいかな」



向井:「そうか〜。まあ、誰にも言わねぇから安心しろ」



響:「なんだそれ」


〈キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…〉二人の沈黙の前に授業のはじまりのチャイムが鳴り響いたのであった。


また引き続きよろしくお願いします!

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