左手がない令嬢
フニールは死刑の判決を受ける。
何も行っていないのに・・・
フニールは毎日アルテミスに祈るが状況は変わらない。
そして、処刑の日を迎える。
処刑場にはフニールを陥れた国王陛下と王妃が笑みを浮かべて座っていた。
フニールは最後までアルテミスに祈り続けるが処刑が留まる事はなく、フニールの首は切り落とされてしまった。
しかし、ここで奇跡が起きる。
処刑場が光輝くと光の中から一人の女性が現れた。
『可哀想なフニールよ。そなたの魂を我々の世界に迎いいれよう』
女性が語ると共にフニールの遺体から光輝く玉がフワリと抜け出し天空に向かって消え去って行く。
『さて、真実を歪めし罪深き者よ真実を歪めた罪を償いなさい』
彼女の言葉と共に国王陛下や王妃と、フニールの冤罪に関わった者に雷が落ち皆が黒い消し炭と化した。
フニールの魂は女神アルテミスと共に天国で幸せな時を過ごし、フニールを貶めた者は地獄で苦しい時を過ごす事になった。
これは、この世界で有名な『フニールとアルテミス』と言う童話の中での話である。
フニールとは古代語で『幸せ』と言う意味を持つ言葉なのだが、この童話によってフニールと名付ける者はいなかった。
しかし、何を思ってかフニールと名付けた者がいた。
そして、フニールと名付けられた者は同じように断罪されようとしていた。
「切り落とせ!」
掛け声と共に振り下ろさせる剣、飛び散る血吹雪、会場全体がざわめく悲鳴。
何時もここで目が覚める。
そして、目が覚める度に自分の切り落とされた左腕を見つめる。今では左手の感覚を思い出すことさえ出来ない。
そして、左手の感覚を思い出そうとすると、あの日の断罪を思い出してしまう。
「フニール・ハルバーニー!」
賑わう卒業パーティー会場にて突然の怒鳴り声が響きわたる。
フニールは公爵令嬢であり、公爵令嬢の名を呼び捨てにするなどあり得ぬ事。
しかし、彼だけは許される。フニールの婚約者でもありこの国の第一王子であるファーガス・クロムウェルだ。
しかし、許されるからと言って、普通はそのような事はしない。
その為、皆が良からぬ事が起きるのではないかとパーティー会場から賑わいが消え、静寂と共にファーガス王子に視線が向けられる。
「ここにおります」
フニールの声により傍観者の波は割れ、フニールの姿を捉えたファーガスの形相はより一層恐ろしく睨み付けた。
フニールは知っている。
これから何が起きるのかを。
フニールは前世の記憶を持ち合わせていた。
前世の記憶により、この世界が小説の世界と同様であることが解り、己が第一王子の婚約者と言う立場を利用してあらゆる悪事を働く悪役令嬢である事が解った。
フニールはシナリオ通りにならないよう努力をするが、シナリオの修正力が凄まじく、やっていない事も全てがフニールがやった事にされ、今では悪女として平民にも認知されている。
そして、これから最後の冤罪が始まろうとしていた。
フニールはシナリオから逃れる事が出来ないため、覚悟を決め数歩、婚約者の元へ歩み寄る。
そして、恐らくこれが最後となるだろう左手の感触を名残惜しそうに力を込め握り締めた。
「穢らわしい!近付くな!貴様は婚約者の立場を利用して国庫の金で私腹を肥やしていた事は明白である!よって本日ここで貴様との婚約を破棄し罪人を裁く!」
フニールには身に覚えのない罪状であった。
確かに小説の中ではフニールは罪を犯したが、現実では何もやっていない。
何も行っていないのに犯罪は行われた。
フニールの代わりに犯罪を行った者がいたからだ。
フニールは傍観者と化している一人の令息を見る。
令息はフニールと目が合うと明白に目を背ける。
彼はファーガス第一王子の側近であるレイモンド侯爵家長男アポロ。
アポロの態度は明らかに己が犯人ですと告げていた。
しかし、フニールはここでそれを語ることをしない。
言っても無駄である事が解っているからだ。
「この罪は国際法に乗っ取り貴様を裁く!レオナルド!」
「はい!」
ファーガス第一王子の掛け声と共にファーガス第一王子の側近の一人であるレオナルドが剣を携え、数人の男達と共にフニールに近付く。
彼はファーガス第一王子と同様で卒業生の一人であり騎士ではない。
そのような立場の男が剣を携えている事が問題なのに誰も苦言を申す者はいない。
男達はフニールを捕えると這いつくばせ、フニールの左手を台座の上に置き前に出させた。
この世界には同盟国で作られた法律があり、この国もその同盟に属している。
そして、罪人に対して『人を殺めし者は己の魂で罪を償い、人を傷付けし者は同様の傷を与え、情欲を犯し者・虚偽を吐く者・盗みを働く者などは、その罪深き部分を切り落とすとする』と書かれている。
今回は国庫の金を私的に使い込んだとして盗人に対する裁きであるため、片手を切り落とそうとしていた。
流石の傍観者もこれには黙りをしていられず、ざわつき始める。
「処罰を実行する前にハルバーニー公爵、何か言う事はあるか?」
実の娘がこれから片手を切り落とされようとしている中で傍観者と化していた父親にファーガスは意見を求めたが、ハルバーニー公爵は「何も御座いません」と娘を切り捨てた。
「切り落とせ!」
ファーガス第一王子がレオナルドに指示を出す。
そしてレオナルドの剣が振り下ろされる。
周辺に血吹雪が飛び散り、パーティー会場は悲鳴で覆われた。
フニールはレオナルドからは片手を
ファーガス第一王子からは婚約を
父親であるハルバーニー公爵からは血縁関係を
全てを切り落とされたフニールは侯爵令嬢で第一王子の婚約者から只の罪人へとなってしまった。
「お前は使い込んだ金を国庫に返さなければならない。よって、本日より貴様を娼館送りとする!」
ファーガス第一王子の指示により先程までフニールを取り押さえていた男達がフニールを無理矢理立たせ、パーティー会場の外へ連れ出す。
誰もフニールに治療を施す者はなく、左手があった場所からポタポタとフニールが何処の娼館に連れていかれたのかを指し示すかのように会場の外に消えていった。
ここで小説の中の世界は終る。
ここから先は小説に書かれていない。
よってシナリオの修正が働く事はない。
フニールはやっと小説から解放された。
では・・・その後どうなったのか?
今までフニールが犯したとされる罪が次から次へと冤罪である事が解った。
調べれば簡単に解る事なのだが、シナリオの強制力のせいかまともに調べる者が現れず、断罪後に辻褄が合わないと不思議に思った者が調べた結果、フニール令嬢は冤罪である事が解った。
そして、国庫のお金を使い込んだのはファーガス第一王子の側近であるアポロである事も判明する。
これにより、悪女とされたフニールは全てが冤罪である事が解った。
これは大問題である。
侯爵令嬢の片手を冤罪で第一王子が切り落としてしまったのだから。
しかし、国として後戻りする事はもう出来ない。
ファーガス第一王子も「何で私はあのような事をしてしまったのだ」と後悔はするものの後戻りは出来ない。
フニールの左手は切り落とされ元に戻る事はない。
そして、これが冤罪だとするならば、国際法によりフニールが左手を失った要因となる者は皆同じように片手を切り落とさなければならない。
ファーガス第一王子もその一人であった。
ファーガス第一王子は国際法にある『人を傷付けし者は同様の傷を与え』と言う部分が何度も何度も頭の中に過り己の罪に怯えていた。
国王は我が子の姿を見て可哀想に思い、国王も罪を犯す事になる。
王家はフニールの冤罪について全て隠蔽することにした。
国王は息子の為に見て見ぬふりをしたのだ。
そして、誰の口からもフニールの件は冤罪であったと語られる事なく時は過ぎていった。
一方、被害者であるフニールを探しに娼館に行ったが娼館には既にいなくなっていた。
既に買われたか、左手の傷によってこの世から消えたか誰も解らない。
が、使い込んだとされるお金は全額振り込まれていた。
フニールはとある屋敷にいた。
とある屋敷のベッドに寝そべり自信の左手がない腕を眺めていた。
復讐の時が訪れるのを未だか未だかと待ち望みながら。
月日は流れ、ファーガス第一王子とファンファーニ侯爵令嬢の婚姻パーティーが行われようとしていた。
ダンターニ侯爵令嬢であるファンファーニ・ダンターニとファーガス第一王子は断罪前から密かに付き合っていた。
あの断罪もファンファーニ侯爵令嬢と婚約を結ぶために行われたものでもあったため、ファーガス第一王子とファンファーニ侯爵令嬢は断罪後すぐに婚約が結ばれた。
婚姻のパーティーは世界各国の要人が参加するなど今までにないほど盛大なパーティーが行われようとしていた。
パーティー会場に要人が入場すると共に要人の名前が呼ばれる。皆が拍手を持って要人達を向かい入れていた。
「アルテミス商会長フルル様!」
紹介と共に現れたのは深紅のドレスを纏った女性であった。女性はマスクをしており、顔を隠して完全には解らないでいたが、マスク越しからもその美しさが解るほどであった。
アルテミス商会はここ数年に立ち上げられた商会であるが、次々と新しい商品を産み出し、今では飲食業・金融業・海運業・製造業・娯楽業などありとあらゆる分野を手掛け世界各国に千店舗以上の大商会となっている。
だが、大商会の会長が誰なのか謎とされてきたが、その大商会のトップが若き女性で、しかもこれ程美しいとは誰も思っておらず、歓迎する拍手の手が一瞬止まってしまっていた。
全員の入場が終え、盛大なパーティーが始まる。
皆が本日の主役であるファーガス第一王子の周りに・・・
ではなく、アルテミス商会長の周りに集まってしまった。まるで、今日の主役が彼女であるかのようで本来の主役の二人は面白くない。
が、ファーガス第一王子はそれとは反面に彼女の美しさに心を乱されていた。
そして、必然と彼女の会話に聞き耳を立てていた。
「フルル殿、ご年齢はおいくつだろうか?」
「あら、淑女に年齢を聞くのはご法度ですわよ。強いて言いますとファーガス殿下と同じくらいかしら」
(なんと私と同じなのか!)
「フルル様はご婚約とかされておられるのですか?」
「実は・・・以前していたのですが、婚約破棄をされてしまいました」
(なんと、勿体ないことをする馬鹿がいたものだな)
「フルル様、アルテミス商会の名前の由来は女神様からですか?」
「その通りです。私、『フニールとアルテミス』と言う童話が大好きでして、その物語に出てくる女神様の名前から付けております」
(フニール・・・)
ファーガスはフニールと言う名前を聞いて胸がチクリと針が指すように痛みを感じる。そして、昔の事を思い出していた。
『ファーガス様、私はこの童話がどうしても好きになれません』
『フニールとアルテミスがかい?』
『はい。この童話に出てくるフニールは最後まで不幸なんですもの』
『ははは、そうかい?でも安心くれて大丈夫だよ。僕がフニールの不幸を取り除いてあげるよ』
(いつからだうか?私がフニールの事を毛嫌いするようになったのは・・・)
「ファーガス殿下?」
己の名前を呼ばれ過去の記憶から現実に戻ると目の前にアルテミス商会長のフルルがいた。
ファーガスは鼓動が跳ね上がり、現実に戻るも彼女の瞳に捕らわれ身動きが出来ないでいた。
「ファーガス殿下?」
再びフルルが話し掛ける。
「ああ、申し訳ない。少し過去の記憶に捕らわれてしまっていたようだ」
皆がファーガス殿下の言葉によってある一人の令嬢の事を思い出す。
「そう言えば、何処と無くフルル殿は彼女に似ているように思えるな」
「あら?婚姻パーティー早々にナンパですか?」
「い、いやそう言う訳では・・・」
フルルの言葉で隣で一歩引いて立っている王妃を見ると笑顔がひきつっていた。
「行き過ぎた冗談をすみません。何処からどう見ても相思相愛で羨ましいですわ。王妃様とは何時からなのですか?」
「ああ、学園・・・」
「ファーガス殿下が婚約者に裏切られて傷心していたところをどうにか前のように元気になられるよう色々と助力致しましたら婚約を結ぶ事になりました」
ファーガス第一王子は危うく口を滑らすところをファンファーニ妃に止められた。
フルルの周りには各国の要人も集まっている。
危うくファーガス第一王子は不貞を働いていた事を自らばらす所であった。
「そう言えば、フルル殿が開発した記録映像の魔道具が無事に国際法の証拠品として承認されたようですね?」
何処からともなく魔道具の話が始まると、フルル会長は丁度面白い映像が手に入ったと言われ合図が行われると、シャンデリアの明かりが、やや暗くなり壁に映像が映し出された。
映像には学園の部屋と思われる場所にファーガス第一王子とファンファーニ妃が映っていた。
『いけませんわファーガス殿下、婚約者のフニール様に申し訳ないですわ』
『あの者は今度のパーティーで断罪する。その後君と婚約を結ぶから問題ない』
『嬉しいですわ。でも側にいると心配だから娼館にでも送ってしまえばどうです?』
『それは面白い。君の案を取り入れる事にするよ』
皆の視線がファーガス第一王子とファンファーニ妃に向けられる。
映像は二人が重なりあう所も映し出されており、二人は慌てて映像の前に立ち移るのを阻止しようとするものの喘ぎ声までは消すことが出来ない。
「今すぐ映像を消せ!」
ファーガス第一王子が叫ぶ。
二人が絡む映像が止まると二人はホッとして床にしゃがむ。
が、ファーガス第一王子は怒りが混み上がり直ぐに立ち上がりフルル会長の元に詰め寄って来た。
「貴様を不敬で裁く!覚悟しろ!」
ファーガス第一王子は先程までの笑顔が嘘のように、鬼のような形相となっていた。
だが、フルル会長はファーガス第一王子の鬼のような形相を見ても怯むことはしなかった。
寧ろこちらの方が懐かしく思える顔であった。
「覚悟ですか?それはファーガス第一王子ではないですか?映像からすると二人はファーガス第一王子がフニール令嬢と婚約中に行われた行為に思えますが?」
「そ、それは・・・」
やっと事の重大さに気付いたのだろうか、ファーガス第一王子は鬼の形相から困惑した顔へと一変する。
「何かお気に召されないようですので違う映像にしましょう」
フルル会長が合図を送ると反対の壁に映像が映し出された。
場面は先程とは違い、映し出された映像には王、王妃と共にファーガス第一王子、そして現在の宰相の四人が映っていた。
『では、フニール令嬢の罪は全て冤罪であると言うのか?』
『は、はい。国庫の金を着服していたのはアポロ殿である事が解り、アポロ殿も自白しております』
『だからワシはちゃんと調べよと言ったであろう!なんだこの体たらくは!』
『す、すみません父上』
『あなた、どうにかなりませんか?このままでは、ファーガスも片手を切り落とさなければならなくなってしまいます』
『・・・』
『あなた!』
『解っておる!』
『・・・この件を知っているのは誰だ?』
『事も事ですので、ここにいるもの以外では私の部下二名ほどです』
『始末せよ!』
『はっ!?』
『始末せよと言っている!さすればお主を宰相としよう。此度の件は何もなかった。良いな!』
『アポロ殿はどうされますか?』
『始末せよ!』
『はっ!』
映像が終わる。
映像が終わるもまだ何か映っているかのように、先程まで映し出されていた場所を見つめながら静寂と化していた。まるであの日の断罪劇のように。
そして、皆はとある事実と映像で語られていた事が一致している事に気付く。
一致している事実とは、断罪後に宰相が新しくなった事と宰相の部下だった者とアポロ殿が原因不明の病によって亡くなっていた。
それゆえにこの映像が事実である事が解った。
「貴様ー!これは国家機密の場を犯した犯罪だ!その者を捕えよ!」
「いいえ、こちらは国際法による犯罪の証拠にございます」
「フルル殿、国際法の証拠と言われますが、その証拠で訴える事が出来るのは被害者であるフニール令嬢のみです。貴女が訴える事は出来ません」
宰相の言われる通り冤罪を訴える事が出来るのはフニール令嬢だけであった。
ここまできてまだ気付かないあまりの滑稽さに笑いが込み上げて来た。
「可笑しな事を仰られますね。だから訴えているのですわ」
そう言うと共にフルル会長は左手のレースの手袋を外す。手袋の下は木製の義手であった。
フルル会長は義手を取り外し宰相の前に投げ付ける。
「フ、フニールなのか?」
腰を抜かして座り込むファーガス第一王子が、フルル会長を見上げて問い掛ける。
「ええ、お久しぶりでございます。ファーガス殿下」
フルルは笑みを浮かべながらファーガス第一王子に挨拶を行うと、一変して笑顔が消え視線を会場全体に向ける。
「私は数年前にここで断罪されたフニールでございます。ファーガス第一王子は婚約中にも関わらず不義を働きました。私はこれを国際法に乗っ取り訴えたいと思います。
また、私は冤罪により左手を失いました。左手を失いました要因となったファーガス第一王子とレオナルド伯爵令息を訴えます。
また、冤罪と知りながら私の名誉の回復を図ろうとせず隠蔽をしようとした。国王陛下、王妃、そして宰相を訴えます。それと宰相様も知っておられると思いますが殺人罪は誰の訴えもなく罪を問う事が出来るのですよ」
「ま、待ってくれ」
「いいえ待ちません。ハミルトン国際連邦長官殿、これ等の映像は証拠になりますか?」
「なる。国際法により罪人を捕えよ!」
不貞の罪によりファンファーニ妃とファーガス第一王子、虚偽罪で王妃、そして虚偽と殺人罪で王と宰相が捕えられた。
パーティーの主催者が皆捕まりパーティーどころではなくなり、パーティーは中止となってしまった。
パーティーの騒ぎ後、アルテミス商会会長のフルルは異国に移り住んだ。
国際裁判が行われる中で証人兼被害者であるフルルを証拠隠蔽の為に暗殺を図る危険性があるからだ。
現に二度程、フルルが住んでいるとされたダミーの屋敷に暗殺者が忍び込んで来ていた。
だが、暗殺の心配はなくなる。
罪状が決まり罪が裁かれたからだ。
○ファンファーニ(元公爵令嬢)
不貞を働いた罪により避妊処理をされた。
また、フニールへの賠償金支払いのため、娼館送りとなり、賠償金を支払い終えるとファーガスと共に離宮で過ごす事になる。
一時でも王家の妃となった者が娼館に来たことで娼館では客が絶えず一番人気らしい。
◯レオナルド(元伯爵令息)
冤罪によりフニールの左手を切り落とした罪を問われ同じく左手を切り落とされる。
喚き暴れたが左手を失うと泣きながら踞る。
片手を失った以上は騎士をやめなくてはならない。
◯ファーガス第一王子
不貞により断種される。また、冤罪によりフニールの左手と同じように切り落とされる。更に冤罪だと知った後は隠蔽を図った罪により舌を切り落とされた。
断種され片手がなく喋る事も出来ないため、表舞台に復帰する事は難しく、離宮の奥に幽閉される事になった。
◯王妃
冤罪を隠蔽した一人とされ舌を切り落とされる。
断罪後はファーガス殿下と共に離宮の奥に幽閉された。
◯国王陛下・宰相
冤罪の隠蔽による虚偽罪だけでなく隠蔽のために行った殺人行為でも裁かれ処刑される事となった。
「今ではあの国の有り様は酷いな」
フニールと一緒にお茶をしているのはハミルトン国際連邦長官であった。
フニールの脅威となるものは取り除かれたため、フルルと言う偽名がらフニールへと商会長の名を変えた。
フニールはシナリオの強制力・修正力に諦めた。
シナリオの外で足掻く事にした。
それがアルテミス商会である。
フニールは前世の知識を活かし商品を次から次へと生み出す。
新しい商品を生み出す時は少し衰えた状態で売り出し、少しづつリニューアルを重ねた。
例えば、シャープペンを売り出すと、翌年には消しゴム付きシャープペンを売り出し、その翌年には折れにくい芯を売り出す。
このようにして、売上が衰えるどころか鰻上り状態となった。
そして、潤沢となった資金を使って魔道具〔映像記録機〕を開発した。
フニールはあらゆる場所に魔道具を仕掛けると断罪で使用した映像が映っていた。
フニールはこれが証拠になるか国際連邦に伺った。
その時の担当がハミルトン殿である。
そして、ハミルトン殿はフニールの協力者となってくれた。
そのハミルトン殿が某国の現状を教えて下さった。
国王陛下が処刑され第一王子は幽閉された事により第二王子が国王になることになった。
第二王子はまだ学生である。
その為、血の繋がりがあるハルバーニー公爵にと考える者もいたが、
ハルバーニー公爵はそれどころではない。
ハルバーニー公爵家の裏帳簿が表に晒され捕えられていたからだ。
ハルバーニー公爵が行ってきた罪が次から次へと露になる。まるで以前にそこに住んでいた者がリークしているかのように。
「でも、私の復讐はまだ終わってませんわ」
「まだ、何かするのかい?」
「あの国は私が貶められようとしてても皆が見てみぬ振りをしておりました。ならば私もあの国でのアルテミス商会に関わる店舗・商品の全てを撤退致します。あの国が困ろうと今度は私が見てみぬ振りをしようかと思います」
アルテミス商会の商品は生活や仕事場にどっぷりと浸透している。それが一気に取引停止となるのだからあの国の経済が大混乱する事になる。
また、隣国からアルテミス商会の商品を輸入しようにも、アルテミス商会と敵対してまで持ち込もうとする商人はいないはず。
いたとしても闇の商人などでおそらく高値で売られる事になる。
「容赦ないな」
「あら?商人として大事なものは信用ですわ。あの国は信用出来ませんもの当然の事をしたまでですわ。ハミルトン殿には協力して頂き助かりました。このご恩は決してお忘れ致しません」
「いや、そうだな・・・
此度の件ではこれで終わりとなるだろう。
次については書状が届いてからにしよう」
フニールは何の事か問うがハミルトン殿は「書状が届いてからにしよう」とだけしか述べてくれない。
お茶会を終えるとフニールの元に秘書が書類を持ってきた。
「フニール様、ハミルトン殿から婚約の申し出が届いております」




