三色と、ねねのえがお
春の柔らかな日差しが、園庭の花々をそっと揺らす頃。
志村ねねは小さな手で砂場を整えていた。
その周りでは、いつものように三匹のもふもふ、ミドリ、ピン、クロが、ねねの髪や服の影からそっと見守っている。
(ねね、今日も元気だね)
ミドリがそっとつぶやく。
(うん、いっぱい笑ってる……よかった)
ピンが微笑む。
(俺たちの出番も、そろそろかな)
クロがにやりと笑った。
その日、ねねは園で小さな花壇に花を植える係を頼まれていた。
初めはぎこちなく、土を手で掘るたびに土が指の間に入り、顔をしかめる。
でも、その隣でミドリが小さく光を流すと、土はほんの少し柔らかく扱いやすくなった。
クロはねねの靴についた泥をそっと払い落とし、ピンは風で髪が乱れないようにそっと整えた。
ねねは知らない。三匹のまほうの手助けがあることを。
花壇の小さな苗を並べながら、ねねはふと立ち止まり、手を拭う。
「……よし、ここかな?」
友達が近づいてきて、笑顔で声をかける。
「ねねちゃん、手伝うよ!」
ねねはにっこり笑い、「うん、ありがとう!」と応える。
そのやりとりを見て、ピンは小さく跳ねる。
(ねね、友達とも楽しそう……よかった)
苗を一つひとつ植えていく間にも、小さなトラブルはある。
倒れそうな苗を押さえたり、土が舞い上がってねねの頬にかかると、ミドリの光がやさしく土を包む。
クロはその隙間にそっと手を添え、苗を正しい位置に固定する。
ピンはくるくる回る小さな風で、ねねの髪を揺らさないようにする。
「できた……!」
最後の苗を植え終わったとき、ねねは小さな手で花壇を見下ろす。
色とりどりの花が、美しい波のように並んでいる。
小さな白やピンクの花びらが、春の光に照らされてふわりと揺れる。
ねねはそっと花に触れ、にっこり笑う。
その笑顔に、三匹のもふもふたちは胸が熱くなる。
(ねね……ほんとうに、幸せそうだ)
ミドリがつぶやく。
(俺たちが、そばにいられる限りは……)
クロが静かに誓う。
(ねねの笑顔、ずっと守っていこうね)
ピンが小さく声を合わせた。
その日の午後、幼稚園の友達が「ねねちゃんのお花、きれいだね!」と寄ってくる。
ねねは照れながらも「うん、みんなで植えたんだよ」と答える。
ふと、苗の間に小さな虫が来ても、ねねは手を出さずに見守る。
その瞬間、ミドリの光がささやかに虫の動きを導き、ねねの手に触れずに安心して花を守る。
夕方、園庭に夕陽が差し込む。
花壇の花は黄金色に染まり、ねねの笑顔も暖かい光に包まれる。
クロは腕を組み、静かに呟いた。
「……今日も、無事に終わったな」
ピンはにっこり笑いながら、そっとねねの髪に触れる。
「ねね、今日もいっぱい笑ってくれてるね」
ミドリは少しはにかみながら光を小さく揺らし、ねねの肩を包むように漂わせた。
夜。
ねねがすやすやと眠ると、三匹はまた机の上に集まる。
「今日もいっぱいねねのこと助けたな」
「ねね、笑った顔をたくさん見せてくれた」
「これからも、ずっと一緒だ」
ふわふわの毛が、月明かりに照らされて小さく輝く。
ねねの夢の中で、三匹は一緒に砂場で遊んだり、花壇の花を見守ったりしている。
夢の中でも、三匹のまほうは小さく光り、ねねの笑顔を守り続けていた。
翌朝、ねねは目を覚まし、髪のピンクや緑、黒のもふもふを整えながらにこにこと笑った。
大切なぬいぐるみを抱きしめ、花壇の花を思い出す。
ミドリはそっと毛を揺らし、ピンは小さく跳ね、クロは隣でくるっと背を伸ばす。
三匹は今日も、ねねに気づかれないように小さなまほうをかけ続ける。
春の香りが園庭に満ち、風が花を揺らす。
鳥のさえずりが聞こえ、光の粒が舞う中、ねねの笑顔は変わらず輝いていた。
三色のもふもふたちは、今日もそっとその笑顔を見守る。
そして静かに、三匹は声をそろえた。
「ねね、ずっと幸せでいてね」
ふわふわの毛を揺らしながら、三匹はそっとねねのそばに寄り添う。
ねねのえがおは、もふもふたちの世界でいちばんの宝物。
今日も、明日も、ずっと、変わらずに。




