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三色と、クリスマスの準備

 12月のある日、幼稚園の窓から小さな雪が舞い降りた。

 志村ねねは、両手を窓に押し付けて、白く輝く世界を見つめる。

「わあ……ゆきだ!」

 小さな声に、窓の外の木々もそっと白をまとったように見える。

 ねねの頬は赤く、目は喜びで輝いていた。

 そんなねねの頭の上で三匹のもふもふ、ミドリ、ピン、クロが顔を見合わせた。

(クリスマス……もうすぐだね)

 ミドリがそっとつぶやく。

(ねね、喜ぶだろうな……)

 ピンが笑う。

(今年は、もっと特別にしてやるか)

 クロがうなずいた。

 もふもふたちにとって、ねねの笑顔はなによりのまほう。

 クリスマスは、彼女のために何かしてあげられる絶好の機会だった。


 夜。

 ねねがぐっすりと眠ると、三匹はそっと活動を開始する。

「まずは飾り付けからだ」

 ミドリは窓辺の小さなツリーの前に立ち、体を揺らす。

 もふもふの毛先から、淡い緑の光が流れ出す。

 針金や糸は一切使わず、オーナメントが自然と枝に吸い付くように整列した。

「ピンはプレゼントの仕上げを」

 ピンは小さな手でリボンに触れる。

 すると、リボンの中にほんの少しだけまほうの粉が溶け込み、開けた瞬間、ふんわりと香りが漂うようになる。

「ねねが笑ったら、香りも一緒に喜ぶんだね!」

 ピンが小さく跳ねた。

「クロは……うむ、最後の仕上げだな」

 クロは静かにツリーのそばに雪だるまの置物を並べる。

 ほんのわずか揺らすだけで、雪だるまがくるくる回り、ライトの光を反射するように仕組む。

 雪の結晶の光が揺れるたび、部屋中に柔らかいきらめきが広がった。

 三匹は息を合わせるように、夜の部屋をまほうで彩る。

 でも、ねねに気づかれないよう、音も光も最小限に抑える。

 この静かな緊張感が、三匹にはちょっとした冒険のように感じられた。


 翌朝。

 ねねは目を覚ますと、まず窓の外に目をやった。

 庭も屋根も雪で覆われて、光を反射してきらきらと輝いていた。

 次に目を向けたのは、机の上のツリーだった。

「わあっ! きれい……!」

 小さな指先でリボンに触れ、オーナメントをそっと回す。

 光が揺れ、雪だるまがくるくると回った。

「これ……だれがしたの?」

 ねねは不思議そうに周りを見回す。

 でも誰もいない。

 窓の外で雪が少し光を反射して、まるで三匹が笑っているかのようだった。

 その瞬間、三匹のもふもふたちは心の中でほっと息をつく。

(ねね、喜んでくれた……)

 ミドリがつぶやく。

(やっぱり、笑顔ってすごい力だな)

 ピンが小さく笑う。

(よし、次はサンタさんの役目だな)

 クロがにやりと笑った。


 夜。

 ねねが眠ったあと、三匹は枕元にそっと小さな包みを置いた。

 中には、ねねの好きな色の毛糸で編んだ小さなマフラー。

 開けた瞬間、まほうでふわりと甘い香りが漂うようにしてある。

 ねねは朝、目を覚ますと、包みに気づき、目を輝かせた。

「わあ……サンタさん、ありがとう」

 でも三匹は、影のように静かにその場を見守るだけ。

 ねねは笑顔でマフラーを首に巻く。

 その瞬間、三匹は心の中で小さくガッツポーズをした。

 小さなもふもふたちの努力は、ねねの笑顔の前に、静かに報われるのだった。


 その日の昼。

 園で、ねねは嬉しそうに友達や先生にマフラーのことを話す。

「ちょっとはやいけどサンタさんがきてくれたの! すごくうれしかったの!」

 友達は「いいなー!」と羨ましそうに覗き込む。

 でも、ねねは知らない。

 このマフラーも、ツリーも、飾り付けも、全部三匹のもふもふたちのまほうだということを。


 三匹は窓の外の雪を見上げる。

「ねね、とっても幸せそうでよかった」

 ミドリが小さくつぶやく。

「ふふっ、やっぱり笑顔ってすごい力だね」

 ピンが微笑む。

「来年は、もっと特別な夜にしてやるか……」

 クロがぽつり。


 雪の光に、ふわふわの毛が揺れる。

 まるで、小さなまほうの粒が夜空を舞っているかのように。

 ねねの寝顔のそばで、三匹のもふもふたちはそっと息をひそめる。


 静かな部屋に、温かい幸福の光が満ちていた。

 ちょっぴり早いクリスマスも小さな三色の魔法使いによって、ねねにとって特別な一日となったのだった。

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