表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第2話 — アンブラ村へようこそ(爆発はご遠慮ください)

「魔法って、自己肯定感みたいなもの。

不安定で、予測不能で、すぐに燃え上がる。」



森の中の小道は、まるで地図と落書きを間違えた誰かが作ったようだった。 枝は顔を叩こうとし、根っこは足を引っかけて転ばせようとする。 そして、名前未定のネクロマンサー——でも発電所並みのエネルギーを持つ彼女——は、止まることなく喋り続けていた。


「それでね、逆召喚の呪文ってのがあって、理論上は魔法の鏡と六本足の猫が必要なんだけど、私はバスルームの鏡と翼のあるネズミで代用したの。ほぼ成功だったよ。ネズミは煙になって、鏡はポータルになった。隣人のトイレに。」


「すごいな…」 俺は、俺を裁くような目つきの木を避けながら呟いた。


空は紫と緑の間で点滅していて、黙示録かレイヴか決めかねているようだった。 そして、歪んだ木々と、憂鬱なネオンのように光るキノコの間から、村が現れた。


傾いた塔、浮かぶ家、無表情なゴーレムが巡回している。 ゾンビたちは歩道を掃除していて、魔法使いの帽子をかぶったカラスが「偽物め!」と通行人全員に叫んでいた。


「ようこそ、アンブラ村へ!」 彼女はテーマパークの案内人のように両腕を広げた。 「大陸最高の魔法使い、ネクロマンサー、召喚士たちの故郷!そして…私の故郷でもあるの。」


魔法使いの一団とすれ違った。 一人が彼女を見て何かを囁き、もう一人が笑い、三人目は社会的拒絶の呪文のようなジェスチャーをした。


「…みんな、私のこと好きじゃないの」 彼女は笑おうとした。 「でも大丈夫!最近は成長してる!今週はまだ何も爆発させてないし!」


「まだ火曜日だぞ」 俺はぼそっと言った。


見習いの集団が通り過ぎる。 一人が俺を指差した。


「見て!彼女、ちゃんと機能するスケルトンを召喚できたんだ!奇跡だ!」


「俺は召喚されたんじゃない」 俺は答えた。 「アイスクリームトラックに轢かれただけだ。」


沈黙。 一人が咳払いし、もう一人は聞こえなかったふりをした。 ネクロマンサーは、気まずそうに笑った。


「オッシーノ・レンは特別なの」 彼女は言った。 「話せるし、考えるし、皮肉のレベルが高いの!」


「俺の最大の力さ」 俺は言った。 「現実を鼻で笑うこと。」


さらに進むと、村の中心に着いた。 魔法市場は、ポーションや禁断の素材で賑わっていて、 「セール!呪い一つで魂三つ!」と叫ぶ商人もいた。


俺は視線を感じた。 囁き声。 彼女から距離を取る人々——まるで爆発寸前の存在かのように。


「みんな、君を避けてるな」 俺は言った。 「どうしてだ?」


彼女は立ち止まった。 頭を下げ、肩も落ちた。 目の輝きが、一瞬だけ消えた。


「…私、あまり上手くないの。まだね。師匠は、私には才能があるって言ってくれる。でも…誰も信じてくれない。私…」 声が震えた。 彼女は、苦いポーションを飲み込むように、涙を飲み込んだ。


沈黙。


「この空、色盲のタコが描いた絵みたいだな」 俺は空を見上げながら言った。


彼女は瞬きをしてから、笑った。 「ほんとだ!ピンクに泡が浮かぶ日もあるし!一度は羽根が降ってきた!しかも…燃えてる羽根!」


彼女のテンションは戻った。 気候の呪文について語り始め、雪を降らせようとして紙吹雪の嵐を作った話もした。 そして、村の忘れられた一角にたどり着いた。


廃屋。 静寂。 カビと古い魔法の匂い。 そして、遠くに見える一軒の歪んだ家——屋根はまるで眉間にしわを寄せているようだった。


「そこだよ!」 彼女は指をさした。 「私の師匠の家!きっとレンのこと気に入るよ!機能する骸骨に魂が宿ってるなんて、ずっと見たがってたの!しかもユーモアのセンスまである!超レアだよ!」


彼女は駆け出した。転びそうになりながら。 俺は後を追った。俺の骨が、悲しげなカスタネットのように鳴っていた。


その家は、まるで呼吸しているようだった。 窓は瞬きをし、風もないのに扉は軋んでいた。


玄関の数歩手前で立ち止まった。 彼女を見た。興奮で震えていた。


「きっとすごいことになるよ!」 彼女は言った。


「もしくは大惨事だな」 俺は呟いた。


「両方かも!」 彼女は笑った。


扉が、疲れたため息のような音を立てて開いた。 ネクロマンサーは先に入った。 自分で巻きつこうとしている絨毯につまずきそうになりながら。


「師匠ー!帰りましたー!」 彼女の声はキラキラしていた。


部屋の奥では、一人の人物が瓶や大鍋をいじっていた。 髪はぐちゃぐちゃのお団子、ローブはポーションの染みだらけ。 肩には小さなインプが乗っていて、曲がった眼鏡をかけ、鼻水を垂らしながら震える巻物を持っていた。


「来たのね」 師匠は振り向かずに言った。 「憂鬱なカエルのエッセンスの瓶を取って。エントの涙の壺の後ろよ。」


「はい、師匠!」 ネクロマンサーは、生きているような棚に駆け寄った。


インプがくしゃみをした。 鼻水のジェットが瓶に命中。 液体の色が変わった。 師匠はまったく動じない。


「爆発したら記録して。役に立つかもしれないから。」


レンが部屋に入った。 骨の音が部屋に響く。


師匠が振り向いた。 レンを見て、叫んだ。


「幽霊!呪われた歩く災厄!地獄の骨!」


インプは肩から落ち、空中で一回転し、鍋に頭から突っ込んだ。 紫の泡が立ち上る。


レンは部屋を見回した。 そして師匠を見た。


「おはようございます。俺はただの骸骨です。呪いなし。地獄なし。あるのは皮肉と慢性的な痛みだけ。」


師匠は瞬きをした。 そして少女を見た。


「これ、あなたが召喚したの?」


「違います!というか…はい!というか…正確には違います!彼は現れたんです!空から!いや…棺から!」


「棺から?」 師匠は眉をひそめた。 「それは新しいわね。」


彼女は近づいた。 レンをじっと見て、肋骨をつついた。 レンは退屈そうな顔をした。


「それ、感じる?」


「残念ながら。」


「興味深いわね。」 師匠は瓶を取り出し、緑色の液体をレンにかけた。 レンは奇妙な光に包まれた。 その光は煙になり、煙は小さな『ふーん』になった。


「今の、テストですか?」


「浄化の試みよ。耐えたのね。珍しいわ。」


「俺は不死身です。でも全部感じる。今のポーションも。腐ったキャベツの味がした。」


師匠は、まだ鍋から出ようとしているインプを見た。 「記録して:『高感度の不死骸骨。次元的異常の可能性あり。宇宙的エラーの可能性あり。新しいマスコット候補の可能性あり。』」


レンは腕を組もうとした。 …が、骨が協力してくれなかった。


「俺はマスコットでもエラーでもない。ただ、情けない死に方をして、さらに情けない生き方をしてるだけの男だ。」


少女は笑った。 「すごいよね、彼!」


ツキコは彼女を見た。 次にレン。 そして、ようやく鍋から出てきたインプを見た。インプの額にはキノコがくっついていた。


「これは…面倒になりそうね。」


レンはため息をついた。 …つもりだった。


「クラブへようこそ。」


ツキコは、空から間違って落ちてきた禁断のアーティファクトでも見るような目で、まだレンを観察していた。


「私はツキコ」 ようやく彼女は言った。 「高等ネクロマンシー、不安定な錬金術、そして家庭用魔法爆発からの生還術の師匠よ。」


レンはネクロマンサーを見た。 彼女は今、風の魔法でインプの鼻水を吹き飛ばそうとしていたが、むしろ部屋中に拡散していた。


「で、そっちは?俺をうっかり召喚したと思ってて、マスコットみたいな名前までつけたハイテンションな見習い?」


少女は動きを止め、瞬きをして、目を見開いた。


「えっ…自己紹介してなかった!?」 彼女はツキコを見て、次にレン、そして泡を吐いて咳き込むインプを見た。 「興奮しすぎて…その…!」


「よくあることだ」 レンは言った。 「テンション高い人とか、脳と口の間にフィルターがない人とか。」


彼女はうつむいた。少し落ち込んだ様子で。 「ごめんなさい…私、ユズキです。ネクロマンシーの見習いで…時々…ちょっとドジです。」


「“ちょっと”は優しすぎるな」 レンはぼそっと言った。


ツキコは、まるで生きているかのようにうねる巻物に記録を取っていた。 巻物は、書かれるたびに身をよじっていた。


「それで…どうやってここに来たか、分からないのね?」


「分かってるのは、アイスクリームトラックに轢かれたこと。 その後、ソファの前でコーヒーを飲んでる神様の隣に立ってた。 で、今ここ。骨だけ。文字通り。」


「興味深いわね。」 ツキコは猛烈なスピードで書き込んでいた。 「それで、何か能力は発現した?」


「顔だけで冒険者三人を追い払った。あと、召喚された存在と間違われた。それって能力に入るか?」


「入るわ。“外見による副作用”として。」 彼女はインプを見た。 「それ、記録して。」


インプは書こうとしたが、鼻水が巻物に垂れていた。 ツキコはため息をついた。 「…自分で書くわ。」


こうして、テストが始まった。


ポーション、呪文、魔法陣、そして「魂の匂いは感じる?」「植物に触れると泣く?」などの意味不明な質問。 レンはすべて同じトーンで答えた。


「知らん。」 「たぶん。」 「そうじゃないことを願う。」 「それ、侮辱か?」


ユズキはついていこうとしたが、最終的にキッチンの椅子で寝落ちした。 膝の上には開いたグリモワール。 口からはよだれの糸。


ツキコはレンを見た。 「寝てもいいわよ。私は記録を続けるから。二階に部屋がある。シンプルだけど…機能的よ。」


レンは階段を上がった。 廊下は、引退したドラゴンの背骨みたいだった。 部屋には歪んだ木のベッド、勝手に動くカーテン付きの窓、そして「アンデッドとの共存法」や「迷える魂のための自己啓発」などの本が並ぶ本棚があった。


彼はベッドに倒れ込んだ。 木が悲鳴のような音を立てた。


「最高だな。俺より文句言うベッド。」


天井を見た。 そこには目の絵が描かれていた。 目が、瞬きをした。


「だよな。安眠なんて、望む方が間違いか。」


目を閉じようとした。 …まぶたがなかった。


「寝るだけでも地獄かよ。」


横向きになった。 枕は魔法の羽根でできていて、囁いてきた。


「あなたは十分です。」 「きっと、うまくいきます。」


「これは…感情的拷問だな。」


ため息をついた。 …つもりだった。


「おやすみ、魔法の世界。俺の存在より軽い悪夢でありますように。」


そして彼はそこにいた。 骨のまま。 ベッドの上。 静かに自分を笑っているような部屋の中で。

レンは呪文、魔法診断、そして励ましてくる枕を乗り越えた。 ユズキは興奮で爆発寸前(物理的にも)。 ツキコは、誰にも理解されない部分まで記録した。


そして最後に——骸骨は部屋と名前、そして…居場所を手に入れた。 たとえその部屋が、静かに彼を笑っていたとしても。


次回まで。魂より骨が文句を言いませんように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ