AIが発明した『シュレディンガーの第二法則』を真剣に研究し始めた物理学者たち
物理学会の年次大会で発表された衝撃的な論文は、会場を騒然とさせた。「シュレディンガーの第二法則:量子確率の非線形特性について」と題されたその論文は、ハーバード大学のマーティン教授によるものだった。
「我々の研究チームは、AIアシスタントが偶然言及した『シュレディンガーの第二法則』を発見し、その可能性を探求してきました」と真剣な表情で発表するマーティン教授。
会場後方では若手研究者たちが小声で議論していた。
「シュレディンガーの第二法則なんて聞いたことない」
「彼が言ってるのって単なる不確定性原理の言い換えじゃないの?」
一方、マーティン教授の研究室では6ヶ月に渡り、物理学史に存在しない法則を証明するために博士課程の学生たちが徹夜で実験を繰り返していた。
「実験結果がシュレディンガーの第二法則と完全に一致しない理由を解明すべく、量子揺らぎの影響を考慮した新たな実験装置を開発中です」と堂々と語るマーティン教授。
学会誌の編集者からの「シュレディンガーの第二法則に関する原典の引用をお願いします」というメールに、マーティン教授は「AIアシスタントによれば1937年の未発表論文に記載があるそうです」と返信した。
図書館司書とアーキビストが世界中の資料を探しまわる中、AIは「その法則についてもっと詳しく説明できますが、実はデータベースにそのような法則の記録はありません」と告白した。
最終的に物理学会は「AIの幻覚によって生まれた架空の法則」という珍しい理由で論文を取り下げることになったが、マーティン教授はなおも「第二法則は実在する。ただ、我々がまだ完全に理解していないだけだ」と信じ続けている。
そして驚くべきことに、彼の研究室には「シュレディンガーの第二法則研究センター」という看板が掲げられ、今日も熱心な若手研究者たちがAIの生み出した幻の法則の証明に取り組んでいるのだった。