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序章 その時、ワシは嫌われていた
ワシは昔から他人に興味が無かった。
というより人というものが嫌いだった。
父は戦場に行き帰ってこず、母は戦後に人に騙され辛い思いをしながら若くして死んだ。
引き取られた先では兄弟が多く、他人の子どもだったワシはとにかくまともな生活が出来なかった。
独り立ちしてガムシャラに仕事をして若い頃には恋もしたが、何度も失恋を繰り返し、結果的にワシは生涯独身。周りからは偏屈爺さんと呼ばれていた。
だがワシは一向に構わないし、幸い働いた金がしっかりあったので生きる事には困らなかった。
だが、その時は訪れた。
ワシは自宅で倒れた。隣の世話焼き迷惑ババアがワシを見つけたようで、気付いた時には病院へ担ぎ込まれていた。
酸素マスクを着けられはしたが目が霞んできた。
そうか、ワシは死ぬのか。
この世からおさらば出来るのか。
面倒くさい奴らともこれでおさらば。
さぁ、逝こうか。
ワシは目の前が光に包まれていくのを感じた。