華視点・ある日の限界大学生の話
本編とはなんら関係ないです。
たぶん。
留年手前のポンコツ感ある華が楽しめるかと思います。
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俺は、次の春で大学二年生になる。
たぶん。
正直なところ、単位がかなりギリギリで今日中に学校から電話がなければ再来週からは二年生を名乗れる。
「あー、こっちもギリギリかな……。」
腕時計を見ると、8時25分になろうとしている。
今日はいつもの店でアルバイトだが、8:30には着かなきゃいけない。
ただし、どうあがいてもあと10分はかかる。
大学もバイトもギリギリだなんて幸先悪いなと、ついぼやいてしまう。
(今のうちにメールだけでも入れておくか。)
店主である奈津希さんに遅れる旨を連絡する。
忙しくないといいんだけどな。
メールを入れたところで信号が変わったので、めいっぱいにペダルを踏む。
飛ばせば間に合うかも。
そんな淡い期待に縋りながら、次の角を曲がった時だった。
「……っ! やべっ!」
「わわっ。」
ききぃっと、甲高いブレーキ音が響く。
強くかけすぎたのか、ふわっと体が浮いた気がした。
それでも、歩行者に突っ込む寸前だった。
危ない、つい他ごとを考えていてあまりよく見ていなかった。
「すみません、大丈夫ですか。」
「あ、はいっ。お兄さんこそ大丈夫ですか。」
「俺は大丈夫。」
俺はひとまず自転車を降りて、道路の脇に寄せる。
「むしろごめん。本当に怪我とかしてない。」
「本当に大丈夫なので……。あ、むしろお兄さんがちょっと怪我してるんじゃないですか。」
「これくらいは別に。」
おそらく高校生くらいだろうか、ぶつかりかけた女の子はひたすらおろおろとしていた。
様子を見るに、怪我とかは大丈夫そうかな。
「急いでて、もし怪我ひどかったらここに電話して。」
俺は手帳の端を破り、電話番号と苗字を書きこんだ。
「あっ、はい。大丈夫だけど……ありがとうございます。」
「ごめん。それじゃあ。」
彼女を振り返ることもせず、急いで気を付けて自転車を漕ぐ。
ただ、丁度大学の門に着いたあたりで教授からの着信音が聞こえた。
「あーあ。」
ちなみに萌果はマジで覚えてないです。
なぜかというと、この後奈津希に居候の話をしに行って緊張で頭からこのことがすっぱり抜けています。
ぶつかって遅れたけどもう顔も名前もわかんないお兄さんになってます。
個人情報の書いた紙もちゃんと見ずにシュレッダーかけるリテラシのしっかりした子です。
※ゆず子譲り