4話
日にちが経つというのは結構あっという間である。
私が合宿メンバーに選ばれたことを生徒会長に伝えられてからも私は特に変わりなく毎日生活していた。
朝を着て剣を振り。
教室行って授業受け。
休み時間に剣振って。
また授業を受け。
放課後も剣を振ったりと変わらない毎日だ。
剣振ってばっかりだなと言われるかもしれないが、別に剣ばっかり振ってるわけではない。走ったりして体力づくりもしているし、ご飯だって食べてる。相変わらずレオナとばかり過ごしたりしているが、交友関係だって若干だが広がっているのだ。
聞いて驚け、私はなんと、隣のクラスの子に話しかけられたのだ。名前はちょっと聞きそびれてしまったが、「自分も合宿メンバーに選ばれたんだ。同じ1年生同士よろしく」と話してくれた。
いや~あの子なんか大人しい感じでかわいかったなぁ……。
決して惚れたというわけではないのだが、何だかこう気になる感じがして、よく頭に残っている。
あっ、そう言えばアロガンスたちが鍛錬に誘いに来るってのも、相変わらず続いていて、そのときに「自分も選ばれたんだ」とかなんとか言ってたな。
普通に度忘れしてた。
ちょっとだけアロガンスたちに申し訳ないような……いや別に申し訳なくないか。うん。だってアロガンスたちだし。むしろこのくらいがちょうど良い。
てかアロガンスたちもアロガンスたちでよく毎日私を誘ってくるな……。
ある意味凄いよ。断られるのは確定なのに、毎日続けるその気概。いや~大したものだ。
……。
……。
なんか微妙に話がズレたな。いつも通りに過ごしてたって話から何でアロガンスの話になってんだ?
まぁ別に良いか。
さて話を戻そう。
私はあれからも特に変わりなく毎日を過ごしていた。
何かいつもと違ったことがあったといえば、さっき言った隣のクラスの子に話しかけられた以外だと…………う~ん……あっそうだ。そういえば一つあった。実はレオナに頼んだお面の絵の塗り替え。あれに問題が発生したのだ。
私は言われる気づかなかったのだが、レオナがこのまま塗り替えをしちゃったら、雨を降らせなくなってしまうかもしれないという可能性に気が付いたのだ。
なんでも、もしも『雨を降らす』という効果を発揮する仕掛けみたいなものの中に、あのへのへのもへじが組み込まれていたら……下手にそのへのへのもへじの上に描き加えたりした場合、仕掛けが一気に崩壊してしまうかも、ということだ。
魔道具に関しての知識はさっぱりなので私は全然思いもしていなかったが、言われてみると確かにである。
危うく兄様の残してくれたものを台無しにしてしまうところであった。
そういうわけで、お面の絵の塗り替えに問題発生したので、現在塗り替えは一時停止状態である。
あったことといえばそれぐらいかなぁ~。
あとは何だろう…………う~ん……あとは姉様に合宿メンバーに選ばれたことを伝える手紙を送ったら1日で返事が返ってきて、ちょと驚いたぐらいかなぁ。まぁだけど、それも大したことではないし、他には特に何もなかったかな。
* * *
「ふあぁぁ~ぁぁ……」
大きな欠伸をしながらベッドから起きた私は素早く眠気を飛ばし、目を見開いた。気合での眠気冷ましなため、本音としてはまだ眠いのでベッドの中に入っていたかったけど、その気持ちを眠くない眠くないと言い聞かせて押し殺しながら私は制服に着替え始めた。
「……」
寝間着を脱ぎ、それを布団の中へ押し込む。そして棚から制服を取り出して着ていく。テキパキ素早く、無駄なく着替えていく。まぁ着替えにどんな無駄があるのかは知らんけど。
そうして制服に着替え終わると、私は鏡を見ながら自分の髪を一つにまとめていく。
一本にまとめるといシンプルイズベストとでもいうべきやり方で、一応年頃の女子であるのだから、もう少し髪の毛にも気を遣えとか突っ込まれるかもしれないが、そこはあれだ。めんどくさい。なんだかそう……服とかなら簡単に色々できて、見た目も変わったりして大変よろしいが、髪の毛はなぁ。なんか良い感じのまとめ方とかに限って時間がかかる上、めんどくさかったりする。
なので私は一本にまとまるのだ。
「よし。出来たっ、と」
そんなこんな自分の中で突っ込んだりしている内に、髪の毛はまとめ終わった。
見事、一本も零れておらず、しっかりとまとめてある。
私は気分よくなり、う~んと背伸びをしながら窓の方を見た。窓はカーテンが閉まっており、カーテンの隙間からは光は見えず、まだ薄暗い。太陽はまだ昇っていないようである。
いつもであってもここまで早くに起きることはないが、もう少し後……太陽が昇り始めた頃に起きる。
なぜ今日はいつもより早くに起きたかと言うと、合宿場所への出発時刻せいである。
今回私が選ばれた三校祭に向けた合宿に使用する場所というのは、セオス王国の外れも外れの辺りであり、ケセムからはかなりの距離があるところだ。その上国の外れということもあり、道中には化け物が出てくるようなところもあったりする。そんなところを薄暗くなり始めた時間に行くというのは少々危険なので、暗くならないうちに到着するために朝早くに起きることとなったのだ。
「服よし。下着よし。」
合宿に持っていく荷物を詰めたカバンを空けた私はそうやって口に出しながら最後の確認をしだした。
「教科書よし。ペン類よし。手入れ道具よし」
数を確認しつつ、取り出した物はすぐにカバンへ戻して、ここに忘れていくというアホみたいなことはやらかさないように気を付けていく。
そうしてカバンの中身を確認、しっかりと必要な物は全て入っていることを確認すると、私はしっかりとカバンを閉じた。これが前世の頃の世界であれば、ドライヤーやアイロンなどの身だしなみを整える道具やスマホ用の充電器などが入っていき、カバンはどんどん膨張し、最終的には閉めるのも大変なほどに詰め込まれたカバンになってたりするのだろうか。
しかし、こっちの世界はそもそもそう言う道具が存在していないので、詰め込む必要はない。
ただ……私は髪が長いので、お風呂に入った後に髪を乾かすのが大変だなぁと最近感じるようになってきた。屋敷にいた頃はそういうのは姉様かお手伝いさんかが魔法でやってくれていたりしたので不便なかったが、入学後は全部自分でということなので結構大変だ。
文明の利器たちが……ドライヤー……アイロンが……欲しい。
そんな風に思うのも多々だったりする。
「さてと。あとは……篠突も持って……」
カバンを持った私は、立てかけてあった刀を腰に差した。
今回の合宿は研修も兼ねている。化け物狩りというのがどういうのものかを体験するため、実際に化け物と対峙する。その際に使用する武器は一応学校側の方でも用意はしてあるが、自分のものがあり、それを使いたいという人はそれを使っても良いとなっている。
私はもちろん刀を使う。
刀でズバズバ、スパスパ、ザックザクである。
個人的にはお面も持っていこうかなと思っていたが、お面の方は前述の調査のためレオナに預けている。私が合宿から帰ってくるまでに大丈夫か否かを調べて、大丈夫じゃなかった場合の対策を考えておくとのことであった。
あっ、ちなみにレオナは今言ったことからもわかる通り、合宿のメンバーには選ばれていない。
意外とレオナは私をストーキングしたりと、逃げ切りかけたりなど、能力は高かったりするのだけど、見事に戦闘能力とかがない。
どちらかと言うと逃走能力が高いって感じだ。剣の授業のときとかも、避けたりするのちょっと上手かったりするが、自分から仕掛けるとなるとへなちょこになっていた。
「ふふっ……」
なんだかレオナの攻撃してきた姿を思い出したら笑いがこみ上げてきた。
私は微かに笑い声を漏らしながら部屋を見渡した。
忘れ物……ないよな。
全部入れたな……。
私は足元にさっき入れ忘れてしまったものとかがないかとくまなく見渡した。
視界に広がるのは薄暗い部屋。
ベッドは若干乱れ、机の上は我ながらきれいに整頓。
本棚のところは教科書たちの定位置がごっそりと空いている。床にはゴミ一つなく、何も落ちていない。念のための窓の戸締りもしっかりとしてある。
忘れ物なし。
準備完了である。
「さてと……行きますか」
私はそう呟くと、軽く欠伸をしながら部屋から出ていった。




