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プロローグ

4章の始まりです。



「お集りの皆さん。お忙しい中、集まっていただき、ありがとうございます」


 セオス王立学校内のある一室。会議用の場所としてつくられたその部屋には、主要な教師陣たちや生徒会の者たち、そして校長が集まっていた。

 多くの視線を集めながらも、緊張した様子もなく司会をしているのは女はセオス王立学校2年――生徒会副会長を務めているピストリィ・ツァイドだ。


 ピストリィは慣れた手つきで下がってしまった眼鏡の位置を元に戻すと口を開いた。


「これより臨時会議を開始させていただきたいと思います。

 では始めに各自からの報告……まずはからサムシ先生から」

「え~と俺のほうからは学校の警備周りの報告ですね。……まず、以前の警備体制のだと今回のような数による襲撃には対応が難しくなってしまいます。ですが単純にこちらも数を増やすというのは警備上少々問題が発生しやすくなる恐れがあるので……アフトマト先生のご協力の元、ゴーレムやオートマタなどを導入することで改善策としていこうと思っています」

「よろしくね~」


 そんな緩んだ返事をしたのは初老の教師――アフトマトであった。

 アフトマトはいつもと変わらないマイペースな雰囲気であり、この会議室に満ちている重い空気の中では異質であった。


「……俺からの報告は以上です」

「ではサムシ先生に何か質問のある方はいらっしゃいますでしょうか?」

「ほいっ」

「ウェルス会計。どうぞ」


 手を挙げたのはピストリィと同じく生徒会に所属しているウェルス・ヂェーニキという男だった。


「サムシ先生。警備にゴーレムやオートマタを導入するということですが、そのための資金は? もしこの前の襲撃を想定した量を一気に導入するとなると、かなりの額となります。そうなると、他に回す予算がなくなってしまうと思われるのですが?」


 ウェルスの生徒会においての会計という役職らしい質問であった。

 そしてそれはサムシの報告を聞いていた教師陣のほとんどが確認したいことでもあった。

 もし仮に、他に回す予算がなくなってしまえば、今回の襲撃で破壊されたりした自分たちの研究室だったり、備品だったりの改修などが出来なくなってしまう。確かに警備は大事であるが、それだけに予算のほとんどを詰め込まれてしまえばたまったものではないからである。


「それに関しては問題ありません」

「と、言いますと?」

「警備に導入予定のゴーレムやオートマタの大半はアフトマト先生のすでに製作済みである実験機を使わせてもらう予定となっています。また新たに作るものとしても、校舎の瓦礫などを流用するなどして、コストはできるだけ下げています」


 襲撃事件の際、アフトマトは早々に研究室を岩で囲み立て籠もっていた。そのため、教師陣の中で一番被った被害が少なく、アフトマト自身が製作したモノたちも無事な状態のものがほとんどであった。

 それらをサムシは運用実験代わりに警備のほうに導入できないかとアフトマトに交渉し、見事導入できるように準備をしていた。


「なるほど。そう言うことなら問題ありません。

 自分からは以上です」

「……では他に質問のある方はいますでしょうか?

 いないようなので次の報告に移っていきます。では次は――」


 そうして順々に教師たちは、各々がここ数週間の間で行ってきたこと、調べていたことを報告を行っていく。

 ある者は自身の被害状況。

 ある者は情報統制の状況。

 ある者は今回の襲撃による影響。

 ある者は他国に対する説明報告。


 時には文句が出たり。

 仲の悪さによる口論になったり。

 報告は全くの滞りもなくではなかったが進行していった。


「……では最後に生徒会からの報告ですね」


 そして教師による最後の報告・それに対する質問を終えると、ピストリィはそう言った。


「生徒会からの報告は生徒かいちょ……う…………」

「ん? どうしたんだ。ピストリィ君」


 急に言いよどんだピストリィに近くにいた教師の一人が声をかけた。するとピストリィは少し会議室内を見回した。


「……いえ何でもありません。失礼しました。

 改めまして、生徒会からの報告を私のほうからさせていただきます」


 そう言ったピストリィの顔は若干引きつっていたが、誰もそのことを指摘はしなかった。そうしなかったのはおおよその理由を知っていたからであった。


「まず今回の襲撃による負傷者に関してですが、すでに全員回復。学校生活に戻っています。

また、今回のものが原因とする精神的にダメージを負ったものに関しては、先ほどの報告の通り、皆さんのご協力の元それぞれに対応しています」


 そこまで言うとピストリィは持っていた書類にチラリと目を落とした。


「ただその対応に関しても、全てに対応することはできておらず、1年生の間では一人の生徒の孤立化が起きていました」


 一人の生徒の孤立化――それはウイのことであった。


「私たちとしてもそれに関しては対応しなくてはなりませんでしたが、直接の被害というものは出ていなかったため後回しにしてしまっていました」


 生徒会の人間は学校内ではそこそこの地位や責任があったりするが、生徒会である以前に学生である。学生の本業を行いつつ、生徒会の仕事をする。そしてそれに加えての襲撃により発生した仕事の処理。それらを効率よく消化するため、それぞれに優先順位を付けて対応していた。

 1年生への対応に手が回っていなかったのは、1年生で起きていたことが孤立化ぐらいであり、即時の対応が必要というものではなかったからだ。そしてそれは教師たちも同様であった。


「あれ? だけどその1年生のやつって……?」

「はい。すでにほぼ解決済みです。

 つい先日行われた非公式の決闘。その最中に一方の発した発言に影響で、改善となりました。よって、特別な対処などは不要と判断しました」

「ふ~ん。それは良かった」

「ホント全くだ。私なんかアレに囁かれまくって、大変だったんだぞ」

「そりゃ大変でしたな」


 ピストリィは先生たちの反応を見つつ、「では次に」と話をつづけた。


「研修を兼ねた三校祭に向けての合宿についてです。こちらに関しましては例年通り、2年生をメインとして三校祭出場候補たちを選出。そして4泊5日の合宿で出場メンバーを正式に決める……という流れでよろしいですか」

「問題なし」

「ですな」

「な~し。じゃ」

「問題はない」

「ありがとうございます。では出場候補たちですが、それについてはお手元の資料をご覧ください」


 そう言ってピストリィは二枚にまとめられた名簿を掲げた。そこには2年生の名前がずらりと並んでおり、二ページ目の後ろのほうに1年生の名前が並んでいた。

 教師たちはそこに目を通しつつ、言葉を漏らしていく。


「いつも通りって感じですな」

「まぁ、よく見る名前ばかりだからな」

「ん~だから俺は言ったんじゃねぇか。いっそのこと全員を戦わせて選出した方が面白いって」

「いやそれは時間がかかるだろう」

「それにその時間削減のための合宿なんだから」


 そのとき教師の一人が瞼をぴくっと動かした。


「ん。アマツカエも入っているのか?」

「⁉」

「本当だ⁉」

「……確かあの子は、魔法の技量がまだまだな感じではなかったか?」


 そう言ったのはウイのいるクラスの魔法の授業を担当している教師だった。

 その発言にピストリィは素早く返した。


「はい。確かに魔法の技量に関しては発展途上です。しかし、その剣の技量に関してはかなり飛びぬけており、そこを評価して候補として選出しました」

「ふ~。なるほど」

「確かに。あのトウコ殿の妹でもあるしな」

「それにアロガンスを守った実績もある」

「まぁ魔法が未熟でもモーリェみたいに準優勝した奴もいるしな」

「納得していただけたようなら良かったです」


 それからピストリィはそのまま話を続けていき、報告するべきことを全て話し終えた。


「以上で生徒会からの報告は終わりたいと思います。……最後に何か質問などがある方はいますでしょうか」


 すると一人手を挙げるものがいた。いかにも魔女ともいうべきトンガリ帽子を被った女。見た目は学生ぐらいの年齢であるが、その実この会議室内で最も高齢な人間である彼女は、セオス王立学校の校長――アレイ・クロウであった。

 アレイは会議室の中心ともいうべき場所に足を組みながら座っており、その細長い腕を挙げていた。


「なんでしょう。アレイ校長」

「うむ。まずは会議の進行ご苦労様じゃった」

「ありがとうございます……」

「それでな、ちょっと聞きたいのじゃが……モーリェはどこ行った?」


 アレイはそう言いながら会議室を見渡した。


「最初はいたかと思っていたのじゃが、いつの間にかいなくなっておった。あとで話したいことがあったのじゃが、どこ行ったか知らぬか?」

「……」

「「「……」」」


 アレイの言葉に誰もが口を閉ざしていた。

 誰もが言わないでおいたその発言を言ってしまっていた。

 ピストリィは疲れたような様子になり、ため息を漏らした。


「……会長は……多分…………()()()()()()()()()……」


 そしてそう漏らした。

 その言葉を聞いた者たちは皆、


(((やっぱり……)))


 そう思っていた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 野生に帰るってどういうこと……? ただのサボりかと思えばとても濃い予感です。
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