エピローグ
後日談というか決闘後のあれこれ。
あの決闘終了後、私周りの環境は大きく変化したわけではないが、全く変化がなかったわけではなかった。
原因は言わずもがな、アロガンスが決闘中に叫んだ自分が学校が襲撃された原因だ発言である。
それにより若干ではあるが変化があった。
まず私へのマイナスイメージを持っていた者たち、その三分の一の者たちはその感情を向ける相手を私からアロガンスへと変更になった。
ただし、だからと言ってアロガンスに直接害をなそうとする者がいるわけがなく、だいたいは私に対する態度がそのままアロガンスへとスライドした感じだ。
次に三分の一ちょっとの者たちは「もうこれはしょうがない」という反応だ。そういう反応になった者たちの大体は貴族としての位が低かったり、一般出身だったりする者たちが多かった。そういった者たちが多い原因としては、ただ単純にこれ以上突っ込まないほうが良い案件であるという判断なのだろう。力もないのに下手に関わって巻き込まれでもしたらやっべぇというわけだ。
そもそも、ここら辺の者たちは私に対する反応は始めっから遠めになっていたり、ちょっと不満を零す程度だったので、あまり変わらん。
そして最後に残った者たちは相変わらずの私が悪い、私が諸悪の根源だ派である。
ただこの者たちは最初っからアマツカエ憎し、アマツカエ要らんという感じの人たちなので、極論言ってしまえば別に変ったというわけではない。最初っから私が嫌いなんで、襲撃とか関係なしである。
前と変わらず、私に聞こえる感じに何かヘイト発言をしたり、ちょっとした嫌がらせみたいな大したことではないことをしたりしている。まあ実害出したヤツはすぐに報告、先生方に絞らせている。
そういうわけでこれらがアロガンスとの決闘後の変化だ。
う~ん……まぁ変わったと言えば変わったではあるが、大した変化ではない。相変わらず面倒な奴らはいるし、遠巻きに見てるのはいるし。……まぁ、それでもマシといえばマシである。過剰な面倒があるわけではないし、完全に避けられているというわけでもない。ある意味初期盤面――つまりは入学当初の当初に戻ったようなものである。
てなわけでひとまずは姉様を心配させない環境になった……のかな。
……。
……。
ん~だから私的には全くのメリットなしの気まぐれで受けた決闘ではあったが、受けた意味としては、副産物によるもの。本当にたまたまではあるが、良かったのか……とも言えるのかぁ?
新品の制服の背中燃えたりしちゃったけど。
なんか変な二つ名で呼ばれたりするようになったけど。
……。
……。
……う~ん。まぁ良かったのかな?
あっ、そう言えばだけどアロガンスはあの後保健室でぐっすり眠った。ちゃんと最低限の手加減はしていたので重症とかではなく、魔法ですぐ治る怪我ではあったが、かなり疲労していたらしい。
ちなみに私は制服が燃えた以外はノー問題。怪我とかはほぼなしである。
* * *
「姉様、気を付けてくださいね」
「わかってるわよ~」
「また迷惑かけちゃだめですよ」
「ぅう……それも……わかってるわよ……」
「本当にわかってるんですか? 絶対に迷惑かけちゃだめですよ!」
「ぅぅう……わかったから……」
アロガンスとの決闘を終えた一週間後。私とレオナは学校の正面門にて姉様の見送りをしていた。
姉様は痛いところを突かれ、弱弱しい感じである。……ちょっかわいいい。
だがそんな状態ではあったがすぐに気を取り直した。
「……ウイも元気にやってね」
「……⁉」
そう言って姉様は私の頭を撫でてきた。優しい手つきで私の髪をふさふさと撫でまわす。その感触に思わず変な声を漏らしそうになるのを我慢しながら、私は姉様を引きはがした。
姉様は残念そうな表情を浮かべながら、私を撫でていた手を見つめていた。
「はぁ……もちろんですよ」
「なんか嫌なことあったらお姉ちゃんに言うんだよ。そしたらすぐに飛んでくるから」
「はい……?」
あれれぇ~。もしかして姉様、私の言ったこともう忘れたのかなぁ?
私の表情が若干引きずっていく。姉様はそれにすぐに気が付き慌てた様子で言った。
「あっ! 違う、違うわよ! 勝手に来たりはしないから! 今度はちゃんと周りに伝えてから行くから! だからそんな目で見ないでぇ~!」
「……」
私はその様子をジーと冷たい眼差しで見つめていた。
本当に大丈夫かなぁ、この姉様。マジで誰か首輪でもしていたほうが良いんじゃね感が満載である。まぁ……っと言っても姉様止められる人なんていなさそうだし、かと言って私がお願いしても、なんやかんや緊急時には止まらないだろうしなぁ……。ひとまず姉様が暴走しないように祈るしかないか……。
「本当に気を付けてくださいよ」
「うん。わかってるわよ!」
姉様はそう自信満々そうに胸を張って言った。
それに私が若干不安がっていると、さっきから何か巨大な包みを背負っていたレオナがその包みを姉様に手渡した。
『これ、約束の30枚』
『出来のほうは?』
『会心の出来ですよ』
『うふふふ……本当?』
『えぇ……本当ですよ。マジ、ガチ凄い良い出来です!』
『ふへへぇ~それは楽しみねぇ~』
『是非、是非、楽しんでくださいよ~』
『『ふへへへぇ~』』
何か二人してひそひそと話している。私のいる位置からは聞こえないが、二人の緩みに緩んだ表情と幸せそうな変な笑い声から、何か楽しそうなことを話しているのだなということはわかる。
「あの~二人ともなに話してるんですか?」
「ん⁉」
「なんえも、なんでもないわよ⁉」
「そう、ですか……?」
明らかに動揺しまくっている二人の様子に好奇心が注がれるが、まぁ別に大したことではないだろう。
「じゃあ姉様はお元気で」
「うん。ウイも元気でね。それとレオナも、これからもウイと仲良くしてあげてね」
「了解です!」
姉様は私たち二人の反応を見ると、笑顔を浮かべてそのまま学校から出ていった。重そうな包みを背負い、しかしスキップをしながらものすごい勢いで進んでいき、あっという間に見えなくなってしまった。
そして私とレオナは姉様が見えなくなると、校舎のほうへ戻って行った。
「――――」
「―――――――――」
「――――――」
どうでも良い話が聞こえる。
面倒な視線がちらほらと。
「あのウイちゃん。ちょっといいかな?」
「少し見てもらいたいの」
「これどうやるか教えて! お願い!」
私を頼る人がいたりする。
「あっ、ちょいちょ~い。これ食べてみない?」
「この授業一緒に受けてみない?」
「休日とか何してるの?」
親しそうな……まぁ友好な感じの同級生もそこそこ。
「ウイ、ウイ! こういうポーズを!
違う違う! こうだって、こう!」
レオナとの趣味時間。
ちょっと意見のぶつかり合いもあったりするがそれもまた楽しいひと時のスパイスである。
そして――
「おい、ウイ」
「何ですか? てか急に名前呼びにしないでくださいよ」
「あ、すまない……」
「それで何ですか?」
「この後、稽古に付き合ってくれないか?」
アロガンスは若干悔しそうに、しかし少し気持ちよさそうにそう言った。
アロガンスはあれからずっと面倒絡みをすることはなくなって、その代わりに今日みたいに稽古に誘うようになった。毎日とまではいわないが結構な頻度である。
私は少し考える素振をしていつものようにこう答えた。
「もっと強くなったら考えてあげますよ」
フェルゼンとビエンフーが後ろで何か言い、アロガンスもちょっと怒っている。だが厭味ったらしく、面倒に絡んでこようとはしない。ならば強くなって出直してくると三人でどこかへ駆けていった。
私とレオナはそれを若干面白がりながら眺めていた。
面倒は面倒ではあるけど……こういうのは――
「面白いなぁ」
そう言って私は笑った。
廊下に私の笑い声が響いていく。声が反響し、響き渡る。
噂話が聞こえる。
視線がある。
交友がある。
ライバル……? まぁ面白くなりそうな奴もいる。
まだまだ学校生活も始まったばかり。
面倒なことはあったりするが、夢に向かってこれからも刀を振ろう。そう思いながら私は歩いていった。
これにて3章終了です。次回から4章に入っていきます。
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活動報告にちょっとした小話みたいなものもあるので、気になった人はそちらもどうぞ。




