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12話



 あれから私たちは姉様に連れられ、色んな所を案内された。

 騎士団の本部。

 靴屋。

 屋台が並ぶ『屋台通り』。

 そうやって回っていくうちにお腹も良い感じに空いてきた。時間も昼過ぎ。ちょうどいい時間である。

 私たちはそろそろパンド食堂に行こうとなった。

 行こうとなったはずであった。

 はずであった。

 はずであったのだが……。

 ……。

 ……。


「……」

「ふっふふ」

「……あの~姉様。ここは……?」


 私は隣で不気味に笑う姉様にそう尋ねた。


 私たちの目の前にあるもの。

 それは店ではあった。

 だがそれはパンド食堂ではない。私が退院した日の帰りの見たパフェの描かれた紙など貼ってない。あの日嗅いだおいしそうな匂いも漂っていない。

 あるのはそこそこ目立つ装飾がされた店。

 外装は手が凝ってあり、高級なイメージを感じさせる。

 どう考えてもあの日見た店ではない。

 なんだ? 一晩二晩。そんな日数で改築でもしたのか? う~ん。魔法ありのこの世界だとないとは言い切れないけど……流石にそれは唐突過ぎる。

 ……てかここに来るまでの道のりも知らない道ばかりだったし。私が知らないだけでこういう道もあるのかなぁ~と思ったりもしたが普通におかしい。だって反対方向。今いるのあのときの場所と反対方向だもん。完全に別の場所だろっ! ここ!


「ふふふ」


 姉様はなんか不気味に笑っているだけで何も反応がない。

 レオナの方はというと、どこからか取り出したのかスケッチを持っている。そして鉛筆を持ち、いつでも絵を描ける体勢となっていた。

 準備完了。いつでも絵を描けるとなっていたレオナが私に話しかけてきた。


「あれ? ウイは聞いてなかったの?」

「聞いてなかったって?」

「ここに来るの」


 全く聞いてない。いつの間にという話だ。

 てかここどこ?

 何の店?

 パフェは?


 そんな風に私の頭の中でハテナマークが大量生産されていたそのとき。

 姉様が発していた不気味な笑い声が止まった。


「ここは服屋。セオス王国一の服屋――『ジャミール』よ」


 背後からドーンという効果音が出てきそうな感じで姉様はそう言った。


 服屋?

 なぜに服屋?

 パフェは……?


 そんな疑問で支配されていた私は何の抵抗もなく、あれよあれよとジャミールの中へと入っていった。



 中に入って私が目にしたのは服。服。服。

 数々の種類の服が置かれた空間であった。

 街を歩いていた人たちが着ていたものと同じような服。

 私やレオナが着ている制服。

 他の学校のものと思われる制服。

 かわいいという感じの服。

 ゴシック系の服。


「すごっ……」


 その圧倒的な数。そして種類。それを見たとき、あまりの光景に一瞬パフェのことを忘れてしまったぐらいである。


「あっ……じゃなかった。そうじゃない。

 姉様。ここ食堂じゃないですよ。パンド食堂に行くんじゃないんですか?」


 私は若干詰め寄り気味になってそう言った。


「う~ん。本当はそうなんだけどね。だけど今の時間帯はちょっと混んでいるから。……だからそれまでの時間潰し。

 それにウイって自分の服あんま持ってきてないでしょう。屋敷でも道着ばっかりだったし。それにずっと制服姿って聞いたわよ」


 その言葉に思わず「うっ」となった。


 私の手持ちの服。

 屋敷にある服は着物ばかり。だけどそれら一人では着づらいし、洗うのも面倒。なので持ってきてない。

 屋敷ではよく着ていた道着は持ってきてはいるが、それで外を出歩くとなると。う~んとなる。

すると結果的に着やすく、どこでも着れる制服という万能な服ばかりを着るようになってた。



 まぁ本音としては色んな服とかも着てみたいという気持ちもある。刀に合う服とか着て戦ったり、鏡の前に立ってみてみたりもしてみたいし。


 ただ……こっちに来てからは剣振ってばかり。屋敷にいた頃も剣振ったりしまくっていた。

 なので手持ちの無駄に着づらい着物以外のものはほとんどなかったりもする。若干姉様から貰った服もあったりするが、それはもう小さく着れなかったりしたりする。


「だから今回はウイの私服とかを買おう」

「えっと……パフェは?」

「これが終わったら行くわよ」

「え~と。すぐ終わる?」

「時間潰しだからね。すぐには終わらないわ。

 じゃあ店員さん。よろしくお願いします‼︎」


「「「了解しました‼︎」」」


 姉様の声と共に、いつの間にか集まっていた店員たちが私の体をがっしりと掴んだ。

 彼女たちの浮かべる表情はまるで獲物を捕まえた肉食獣のようであった。その姿に思わず体が震えた。


「聞いていた通り可愛らしいわね~」

「えぇ。ホント~」

「トウコさ~ん。この子お持ち帰りしても?」

「ア?」

「あっ……冗談です。冗談です」

「じゃあみんなやるわよ~」

「「「は~い」」」

「えっ。ちょっ。にゃ! うにゃ~~~~⁉︎」


 私はそのまま店の奥へと連れていかれた。



 *  *  *



 私は着替える途中までは押さえられながらだったので若干肩で息をしていた。なお着替え後半では、別に私が抵抗していたわけではなかったので抑えはなしであった。


「はぁ。はぁ……」

「⁉︎⁉︎⁉︎‼︎‼︎」


 まず一着目。

 私が着せられたのは黒を基調にしたゴシック系の服であった。露出はほとんどなく体は黒一色。スカートには赤色の薄いヒラヒラとした感じのものが重ねられている。

 私の髪色も相まって全身黒ずくめと言う印象である。


 着替えた私を見た姉様はなんか声にもならんと言う様子である。

 その隣に立つレオナは高速で鉛筆を動かし、スケッチに描き込んでいた。



 続いて二着目。

 今度はメイド服。

 厳格な感じの真面目なメイド服とかではなく、メイド喫茶とかでよく見るような感じのやつであった。今度のはさっきの奴と違い若干肩の露出がある。スカートも若干短めでスースーする。


「あぁぁぁ……」

「……‼︎」


 姉様は感無量と言う様子。レオナは一心不乱にスケッチであった。


「姉様。姉様。」


 私は姉様の反応が面白く、ちょっと仕掛けることにした。


「ご飯にしますか? お風呂にしますか? そ・れ・と・も・私?」

「⁉︎ も、もちろん、お風呂でっ‼︎」


 姉様はそう叫びながら倒れた。



 続いて三着目。

 今度のカッコいい感じの服。

 ノースリーブの白いシャツを着て、肩に上着を羽織っおり、スカートはかなり短め。穿いているのは長めのブーツ。太ももには使い道が良くわからん輪っかを付けている。本当にこれってなんの為だろう? まぁちょっとエロさとかがあって良いんだけど。


 姉様は地面に倒れ、顔を起こしながら見ていた。


「⁉︎‼︎‼︎‼︎」

「……」


 声はない。すごく良い感じの表情になっており、拳を上げてグッドとしていた。

 レオナの方は変わらず一心不乱に描いている。そのスピードはあまりにも早く、なんか手が四本ぐらい見えたりしていた。



 続いて四着目。

 今度はワンピース。

 白色一色のワンピース。生地が結構薄く、若干下着が見えそうでもあった。


「…………」

「……」


 姉様は顔を地面に落としていた。そして床には赤い液体が広がろうとしている。

 すぐに飛んできた店員にその鼻血は速攻処理されていた。その光景には流石に苦笑いしてしまった。

 なお、レオナはそんな姉様の様子も気にせずにスケッチしていた。



 続いては五着目。というところ。

 店員さんたちが「アレが良い」、「コレが良い」と話し合っているのを聞きながら私は思った。てか気づいた。流石に気づいた。


 これまで着てた服、どう考えても普段着じゃないだろ……。


 いや一番最初のはわかる。

 そこはギリ普段着だ。

 だが二着目以降。そこからはずっと普段着じゃないだろ。趣味で来たりする分には何も問題ないだろうけど、普段着としては着ない。流石にちょっとだけ恥ずかしい。何か恥ずかしい。


 そう思った私はどう考えても普段着ではない服を両点に話し合ってる店員さんたちへ話しかけようとした。

 話しかけようとした、そのとき。


「全力で楽しませるわよ」


 店員さんのそんな声が聞こえた。


「学校じゃ大変らしいからね」

「えぇ。休日くらいめいいっぱい楽しまなくちゃ」

「何より、お得意様であるトウコさんの頼みよ。みんな頑張るわよ」

「「「はーい‼︎」」」


 私は静かに試着室へ戻っていった。


 ふ〜ん。

 楽しませる。

 楽しませるか。

 今も楽しんでたけどさぁ……。うん。そんな事聞いたら…………もっと楽しまないとだな。


 私的にはあまり大変というわけじゃないけど、姉様から見たら大変そうだったんだな。

 それは不甲斐ない。

 姉様を心配させてしまうとはなんとも不甲斐ない。


 全くしょうがない。

 姉様を心配させてしまった分を取り戻すためにも、もっと楽しまないとだな。


「ウイさん。これなんてどうですか?」

「良いですね。着ましょ、着ましょ」


 私は新しい服を持ってきた店員さんにそう言いって、服を手に取った。そしてすぐに着替えていく。



 それから私はさらに十着ほど着た。

 着たものはどれも普段着とは言えないものであったが、私の趣味にはガッチリ嵌まるものばかりであった。

 そして私はそれらをそれはもう全力で楽しみながら着た。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の趣味のためかと思いきや、やっぱり良いお姉ちゃん。 それはそれと勝負服も欲しくなります。
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