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11話



 1日が経ち。

 2日が経ち。

 そして休日となった。

 あれからもあまり変わらずという感じの授業で、多少の面倒くささはあったが、特に直接的な害というのはなかった。まぁ、あったらあったらで反撃をするだけではあるが。


 何はともあれ、今はそんなことよりも目の前のことだ。

 今日は学校が休み。

 ビバ休日だ。

 ヒャッハ〜休日だ〜‼︎

 パフェ食うぞ〜‼︎


 ……まあ私は2日しか行ってないけど。

 そのせいか何か背徳感みたいなのがある。みんなとは違い2日しか行ってないのに、もう休み。もう休日。

 ちょっとだけ悪いこと感がある。

 こういうのってなんでなんだろうか。



 *  *  *



 私はレオナと姉様の三人で朝のケセムを歩いていた。目的はこの前約束した通り、食堂に行く&画材を買うためだ。

 日差しはジリジリと地面や人々を照らしている。

 朝といってもまだ日が昇り始めたぐらいの朝早くではなく、日はもう高くなって街中が活気だち始めた、昼ちょっと前ぐらいである。

 ケセムは前に見たときみたいに人が行き交ったりしていて活気だっている。「安いよ」や「見ていってね」という掛け声があちこちから聞こえてきたりする。待ち合わせによく使われるという噴水のある広場では屋台が出てたりもしていた。

 休日だということもあり、私たちと同じ制服を着た人たちもちょくちょく見かけた。


「じゃあまずはどこ行く? 私の画材か、ウイのパンド食堂か。画材は結構買う予定だからできれば、あとが良いんだけど」

「う~ん。私もまだお腹が空いていないからなぁ」


 道を歩きつつ私はそう言った。

 目的順は決まってはいないが、一応パンド食堂の方へ足を進めていた。ただし、私としてはまだお腹が空いていないので、行くにはまだ早いという感じだ。


「それなら時間つぶしに私がこの街を案内してあげるわよ!」


 するとなぜか若干興奮気味の姉様がそう言ってきた。


 ケセムの案内。それは私としても大歓迎だ。

 事前にレオナにはケセムを案内してと頼んでみていたが、レオナもあまり町は出歩かないため噂のある所、要は有名どころぐらいしか知らず、あまり詳しくなかった。

 なので私とレオナはすぐに姉様の提案に乗った。



 *  *  *



 本屋。

 定食屋。

 菓子店。

 宝石店。

 セオス王国の中心らしく、ケセムには多くの店があった。それらが立ち並ぶ街中を私とレオナは姉様に説明をされたりしながら歩いていった。


 そうして歩いていくと大きな直線の道に出た。


「ここの通りは雑貨屋が多いわ」

「わ~、人一杯」

「本当にいっぱいですね」


 そこには姉様の言う通り、雑貨屋が多く建ち並んでいた。

 そこの通りは通称『雑貨通り』。そのまんま過ぎる名称で呼ばれており、その名の通りそこに並んでいるのは雑貨屋ばかりであった。

 右を見ても雑貨屋。

 左を見ても雑貨屋。

 すこし先に行っても雑貨屋。

 どこを見ても雑貨屋だらけであった。


「姉様、姉様」

「?」

「こんなにおんなじ種類の店があって大丈夫なんですか?」


 私は雑貨通りを見て、流石に建ち並びすぎだろうと思った。本当にマジで建ち並び過ぎだ。こんなに並んでいては店同士の競争が激しくなりまくるだろう。

 隣を歩くレオナもおんなじ風に思っているらしく、驚いた感じの様子で見まわしていた。


「あ~それ? う~ん、本当なら何軒か潰れたり寂びた店があってもおかしくないんだけどね。一応、それぞれの店で別々の商品を置いていたり、似た系統の店は離れていたりとか……そんな感じなことをして、上手く共存してるみたいよ」

「へ~。なるほどです」


 本当に上手くやってるのだな。普通だったら抜け駆けをしたり、他を蹴落としたりしようとする店が出てもおかしくないかもしれないのに。


「ん⁉︎ ちょっ……ウイ。ちょっと待ってて。ちょっとだけ待ってて!」


 私が雑貨通りのあり方に感心しているとレオナが急に声を上げた。その目は何か見つけたような様子であった。

 レオナの視線の先を見てみると、他の雑貨屋とあまり変わらない普通の雑貨屋があった。


「どうしたの?」

「ちょ、ちょっとだけ‼︎ すぐ戻るから‼︎」

「えっ、ちょっレオナ」


 レオナは足早にさっき見ていた雑貨屋へと走っていった。

 そのスピードと動きの細やかさとは何とやら。道行く人の隙間をきれいに通り抜け、一人もぶつからず、そしてスピードを落とさず、走っていった。


 私と姉様も遅れるようにしてその後を追っていった。


「ふへへぇ〜」


 追いついた私たちが見たのは、雑貨屋の前でだらしない声を漏らしながら一枚の小さな絵を見ているレオナだった。

 その絵は部屋などに飾る用の小さな絵。シンプルなデザインの額縁に入っており、描かれているのはどこか広い草原であった。そしてその近くには似たような絵が何枚か置いてあった。


 その姿は若干と言うか、やはりと言うか、当たり前と言うべきか。

 傍から見たら明らかに奇行とも言えるような光景であった。

 目は飛び出んばかりというほど絵を凝視。口からはだらしない声が漏れ、何だか雰囲気も怪しい。

 店の近くにいた人は若干引いている。店の人も同様であった。

 しかしレオナは絵に夢中といった様子で周りの目など気にしていない。無我夢中になって、いろんな角度から絵を見ていた。


「ウイ……」

「なぁに……姉様」

「あなたのお友達。ちょっと変わった人ね……」

「まぁ………………そうですね」


 反論の余地もなし。

 私はレオナとの出会いを思い出しつつ、姉様の言葉に頷いた。

 ……姉様も姉様で、たまにと言うか、この前。すごい奇行っぷりとなっていましたよとは言わなかった。


 流石にそろそろと私は絵に夢中なレオナに声をかけた。


「その絵がどうしたの? 買うの?」

「ん。買わないわ。……好きな人の描いた絵だったから」

「好きな人?」

「そう。私が好きな人。

 私が今の絵を描くキッカケになった人」


 そう語るレオナの瞳は今までで見たことがないくらい輝いていた。


「この人――フランミレはね、すごいそのまんまに描くの。現実の風景をまるでそこにあるみたいに完璧に。全く同じように」

「へ〜。そりゃ凄い」

「でしょ!

 ちょうど家の方針が嫌になってた私はフランミレの絵を見てどハマり。家の方針に逆らって今みたいになったの」


 そういう経緯なのか。

 前に今のような画風になった理由はなんとなく知ったが、そもそものキッカケは知らないままであった。

 私にとっての姉様が、レオナにとってはそのフランミレという人なのだった。


「あれ? 好きな人の絵だけど買ったりはしないの?」

「ん〜。好きではあるんだけど、私の趣味としてはね〜。やっぱり現実以上の絵が良いのよ。この人の絵は現実そのまんまの絵だからね……ちょっと趣味からは外れると言うかね」


 レオナは顎に手を当て、考えるようにしてそう言った。


「なんで言うのかな……憧れてはいるけど、目標ではない……みたいな……う〜ん、ずっと見ていると現実を忠実にそのまま描くのに満足しちゃいそう……みたいな……影響を受けまくりそうな……そんな感じ」

「ふ〜ん?」


 わかるような。わからないような。

 私は頭にハテナマークを浮かべながらコトンっと首を傾けた。


「まぁ、要は好きだけど買わないってこと。たまに見かけたときに見るぐらいがちょうど良いのよ」

「そうなんだ……?」


 う〜ん。やっぱりわからん。まぁこういうのは人それぞれなのだろう。

 私としては好きなものはずっと見ていたいし、やっていたいのだけど。ああ……だけどずっとそればっかりだと少し飽きてしまうかも……? ちょっと……。うん。かなり違うかもしれないけどなんとな〜く、やんわりはわかった。


「ん。じゃあそろそろ行く?」

「えぇ」


 私とレオナは店から離れ、姉様の元へ戻った。


「あれ? 姉様。いつの間に買ったんですか?」


 姉様の元に戻ると姉様はさっきまでは持っていなかった紙袋を抱えていた。


「さっきその店でよ」


 姉様はそう言いながらさっきまで私とレオナがいた店を指差した。


 本当にいつの間にだよ。

 そこまで時間かかってなかったよな……。

 私は姉様の早買いに驚き声も出なかった。レオナも私同様、驚き固まっていた。


「さぁ、次。次。次行くわよ」


 姉様はそんな私たち二人の後ろに立つと元気な様子で私たちの背中を押して進んでいった。





 ちなみに姉様がこのとき買ったのは分厚いアルバム5冊だそうだ。

 う〜む。そんなにアルバムが必要とは。姉様には写真を撮る趣味があったのか。これまで暮らしていてちっとも気づかなかった。



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