9話
広い教室にて集まった生徒たちがガヤガヤと雑談を行っている。その内容は私に関するものが多数。っというか大半である。ほとんどの人たちが私の悪口? みたいなそんな感じのことを言い合っている。
もちろんボリュームは若干下げ、私には全部を完全に聞き取ることはできない程度のボリュームでだ。
だが私はそんなことはほとんど気にせず、壁の方にいた。
隣にはレオナが立っている。
レオナは目を瞑り、宙で指を動かして、何かを描いているような素振をしている。ただし本当に描いているというわけではない。描いているような素振をしているだけである。
レオナはこの前、ピグマ先生によって美術室の使用と備品の使用。その両方を使い過ぎたせいで、禁止されてしまった。
そのため今まで通りのペースで絵を描いていたら、あっという間に手持ちの画材がなくなってしまうということで、絵を描く代用として、宙に絵を描いていた。
レオナは何か難しい感じな顔をしながら宙に描く。
私はそれを隣から眺める。
「今は何描いてるの?」
「……ウイ」
「おっ。やった~。
何々? どんな私を描いてるの」
「思いふける……? ウイ……」
「ふぇ~」
思いふける……?
ん~……。うん。結構絵になる。
思いふけるっていうシチュエーションはかなり絵になる。
なんだかシリアスな雰囲気、殺伐としたような空気感。そんな中で思いふける。……雨なんかが降ってるとさらに良さげだな。
しいて言うならそれを実際に見て見たかった。
そんないい感じな、カッコいい絵面は見てみたいと言わない方が困難だ。
そんな風に思っていると、
「今度実際に描いてみるから。ちょっと待っててね」
「ホント!」
その言葉に思わずそんな声が響いた。周りの目が集まった気がしたが、そんなことは関係ないし、どうでも良い。
「うん。ホント、ホント。っというか良い絵が思いついたんだから、描かなきゃ損よ」
「やっほ~」
私は喜びの声を上げた。
いや~本当にレオナ様様である。
「にしても遅いわね」
「確かに……」
午後の授業は剣の授業だ。
いつもならば大喜びであるその授業であるが、今回……というかしばらくはお預け。
現在、医者からドクターストップをかけられている私は1週間は激しい運動とかがアウトなので、剣の授業は見学である。
うぅ……本当に、全くと言っていいほど残念である。
あぁ……早く剣振りたい。
刀振りたい。
じゃないと鈍る。
……。
……。
刀が振りた~い‼
そんなこんなで表には出ていないが、私の中では不満の嵐である。だが医者に言われたことである。ならば患者はその言うことを聞かなければならない。医者の言うことは、絶対なのである………………大変不本意ではあるが……。
だから私は我慢する。不本意だが……。
見てるだけの剣の授業であるが、我慢して見学に勤しむのだ。
大変‼
不本意‼
だが‼
そしてそんな剣の授業であったが、もう始まる時刻となっているはずなのに、中々先生が来ない。
この授業の担当をしているのはサムシ・エペイスト。そこそこの長身で、腕も長い。薄い青色の髪をしており、そこそこ良い顔。アロガンスほどではないが、まぁまぁのイケメンである。
使う剣術はセオス王国式実戦剣術とか言うものだ。このセオス王国式実戦剣術――略してセオス式は、アズマ流とは真逆な超攻撃的な剣術である。ひたすらに攻め、ひたすらに攻める。攻撃に次ぐ攻撃。兎に角斬って、斬って、突いて、吹き飛ばしていく。そんな感じの剣術だ。
サムシ先生はそのセオス式の結構な上段。かなりの使い手である。
そしていつもの剣の授業では最終的に残った私とやってくれる親切な先生だ。
周りからの評価も高く、私自身もかなり気に入っている先生である。何せ親切である以上に強いのだから。……まぁいつもやるときは私が攻撃全部捌いて、カウンター入れまくるっていう感じで私の方が上な感じではある。多分手加減をしてるのだろうけど。
「では今日の授業を始めるぞ」
そんな風な声が教室に響き渡り、サムシ先生が入って来た。その後ろにはよく見慣れた銀色の髪を揺らす女――姉様もいた。
なぜ姉様がいるのかと言うと、簡単に言うとお詫びのようなものだ。
姉様はこの前、私を心配するあまり暴走。その結果学校に不法侵入するということをやらかした。
そのときは特に何か被害を出すなどの迷惑行為をしたわけではなかったが、何もお咎めなしというわけでは騎士団の示しがつかない。
そこでしばらくの間、セオス王立学校の方で教師をしたり、教師のお手伝いをしたりすることでお詫びとさせてもらうことになったのだ。
「前回に引き続き、騎士団の副長を務めているトウコさんに来てもらっているから。みなさんも何か分からないこととかがあったら、是非質問してくださいね」
サムシ先生の隣に立つ姉様は静かに礼をした。着ている服は屋敷の鍛錬場でよく見た道着姿である。
そんな姉様を見る、みんなの目は私に対するものと似ている。
姉様をそんな目で見るとは、なんて奴らである。
「では早速始めますから、皆さん前の方に集まってください」
サムシ先生のそんな声と共に、教室のあちこちに広がっていた生徒たちは前の方に集まっていく。私とレオナもそれに続いて、前の方へ進んでいく。
そうして剣の授業は開始された。授業の進行はいつも通り、講義を行い、次に実際に剣(刃は勿論なし)を持っての練習。という感じである。今回はそこに加え、所々に姉様の実戦での経験談なども交えられたりして、かなり濃密な講義であった。
私は後半は見学となってしまうのと、姉様の話も聞けるということで耳の穴をかっぽじく勢いで聞いていた。時折、前方に立つ人が揺れたり、少し背伸びをしたりするため見えなかったりするが、話は聞けるので問題なし。
だがやはりこういうことがあると改めて実感する。
自分の身長の微妙な低さに。
決して特段小さいというわけではない。だがしかし、大きいというわけでもない。小さいと大きい。その中間という微妙な身長。おかげで中途半端に見えないという事態が結構起きたりする。
これで身長が小さいというならそれはそれで割り切れる。だがそうではなく、微妙に大きいのだ。おかげで見えるし、見えない。そんな中途半端な感じなのである。
ん?
前の人絶対邪魔してるだけだろう?
そっちのことは特にないのか?
ん~~~~~~特にないな。
いや確かに邪魔だな~とは思うけど、別に実害……まぁ見えなかったりするが、それぐらい。直接的に面倒くさすぎる実害というヤツは出ていない。なら私にとってはどうでも良いと切り捨ててOKな案件である。
それよりも身長。身長である。身長の方が大事だ。
なにせ身長の方は私の夢の方にも関わってくるのだから。
カッコよく刀を振るう。
そんな夢を抱いているのに、私の容姿がカッコよくなければアウトだ。そして現状の中途半端な身長。これはアウト案件だ。
小柄な剣の達人。高速で動き、神速の剣を振るう。
これはかなり良い。
長身の剣客。広い間合いを持ち、どんな相手にでも斬撃を当てる。
これもかなり良い。
だが中途半端な。小さいでも、大きいでもない。そんな中途半端な身長。そんな人間。
はっきり言って、これといった特徴なんてない。これがカッコいいという特徴がないのだ‼ 小さいから凄い速かったり、凄く細やかな機動というわけでもない‼ 長身だから腕や足が長くて、剣の間合いが凄い広いというわけでもない‼ どこまで行っても平々凡々。基本に収まっている、一般的な感じとなる。
それはカッコ悪いとは言わない。それは絶対に言わないし、言うわけでもない。
だがちょっとだけカッコよさが物足りないというわけなのだ。
ってなわけで私は身長が欲しい‼ もしくは身長を縮めたい‼
えっ?
耳の穴かっぽじる勢いで授業を聞いていたんじゃないのかよだって?
文句はこんなことを考え始めた原因――前に立っている、なんか私のことを邪魔していると思っている人に言ってください。




