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8話



「ねむ……」


 私は回らない頭を無理やり回しつつ、午前の授業を受けていた。不幸なことに、午前の授業は全て講義型。先生の説明や解説をきくという感じなため、さらに眠たくなる。

 話を聞くだけ。これがどうしてこれほど眠くなるのか。……謎である。前世から続く不思議な現象である。


 ひとまず話を聞いていると眠くなるというのは置いておいてだ。

 私は睡眠不足、そして姉様に抱えられて全力疾走された疲労により眠たかった。今寝ろと言われれば寝れるぐらいには眠い。

 今は辛うじて周りから感じる視線のおかげで、ギリギリの所で踏み止まっていた。――こういうのはいつもは変な感じでウザったいが、今日に限ってだけ言えばナイスである。


 私は視線に意識を向けつつ、眠気を逸らす。

 それに加え、口内を噛んでみたり、手を抓ってみたり、何度も目を開いたり閉じたり、などなど。そんなこんなをしたりして授業を受けていく。


 視界には黒板に文字や図を書きながら説明をする先生が見える。話す内容はたまに耳を素通り。聞き逃すこともあったりした。

 こんな頭が回らない――という状況ではあったが、入院期間中に読んだ解説の脱線部分のおかげか、わからないという風にはならなかった。

 結構な割合で脱線部分の内容が出てきたりしていたので、驚いた。


 まぁそれでも眠いものは眠いのだが。

 少しでも気を抜いたらすぐに寝れる。そんな確信めいたものがあるぐらいだ。


 うん。これからは夜遅くまで刀に没頭。趣味に没頭。それはなるべくしないように気を付けよう。うん……。そうしよう。


 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 …………やばっ……寝るっ!

 このままだと寝る!


 何とか寝ないようには……………………あっそうだ。興奮しよう。この前の戦いとか、昨日の夜やってたことを思い出して頭を活性化。授業の内容はほとんど入らないかもしれないけど、寝るよりはマシである。


 よしっ。じゃあ早速。

 刀。

 雨。

 戦い。

 ポージング。

 刀を振って振りまくる。

 冷えた刀身。鉄の冷たさ。

 生き死にのギリギリ、そのせめぎ合い。

 冷えたからだ。肌を垂れていく赤い血の温度。

 興奮はどんどんする。昂っていく。

 楽しい楽しい夢の時間。


「ふへへへ……。ふへへぇ~ぁぁあ……」


 変な笑い声&欠伸を零しつつ、私は何とか午前の授業を乗り切ろうと頭を目覚めさせていった。


「ふへへぇぇ~~~」



 *  *  *



 午後の昼休憩。食堂にて。


「ふぁぁぁあ……」


 私は料理を口に運びながら欠伸をしていた。


「まだ眠いの?」

「……いや……もうだいぶ覚めた。午後はちゃんとやれる」

「本当?」

「本当。本当。

 それに肉をこんなに噛んでるし。目はしっかり覚めるよ」


 あれから午前の授業を何とか乗り切った私はレオナと一緒に食堂で昼ご飯を食べていた。本日の私のメニューは肉。肉。肉。である。噛み応えのある肉たち。それが本日の私の昼食である。

 硬めの肉は噛み切るために何度も何度も噛んでいく。

 おかげで午前を乗り切ったことで、薄れた睡魔がさらに薄まっていた。


「噛むと眠気が覚めるって、どういう理屈……?」

「っんっぐ……んっぐ……。ゴックン

さぁ……? なんとなく……?」


 噛むと眠気が覚める。私も理屈はさっぱりわからん。

 ただ前世のなんとなくある記憶の一つ。というか雑学? 豆知識?

 『眠い時にはガムを噛めば眠気がなくなる』というから、それならめっちゃ硬い肉を噛みまくるのも効果があるはずと実践しているだけだし。

 ホントなんでだろう……?


 それにしても硬いなぁ。硬い。物凄く硬い。

 確かに硬めの肉って頼んだけど流石に硬くし過ぎたか。顎がすごく疲れてきた。柔らかい肉を噛みたい……。


「ぐっ。……うんっ……ぐっ!」

「凄い硬そうだね~。……あむっ」


 隣で食事をしているレオナはそんな風に言ってサラダを口に入れた。そんなレオナを見て私は自分の皿に乗った肉を一切れ、レオナの方に差し出した。


「レオナも食べてみる? 美味しいよ」

「いや。私は遠慮するわ」


 そう言ってレオナは自分の皿を私から遠ざけていった。


「エ~オイシイヨ~」

「声が美味しそうじゃないわよ。……それに私あんま硬いのは好きじゃないから」


 レオナがさっきから食べているのは私と対照的に野菜。野菜。野菜。という感じだ。事前に補足をしておくと、別にレオナはベジタリアンというわけではないし、野菜しか食べていないというわけでもない。レオナが食べていたのはササミ入りのサラダ、それと野菜多めのスパゲッティだ。

 レオナはそれらをササミやスパゲッティなどの野菜以外から先に食べるという独特な食べ方をしていたので、今は野菜ばっかりとなっているのだ。

 野菜から先に食べたりするというのはわかるが、その逆。野菜を残して、他を先に食べるというのは本当に不思議な感じだ。


「にしても凄いね」

「? 何が?」

「周り。周り。人がきれいにいないからさ」

「ああ。確かに」


 そう言った私は視線を周りに向けた。

 食事をする私とレオナ。私たちの座る席の周り。そこには席6個分を半径にして誰も座っていなかった。

 食堂に人がいないというわけではない。むしろ食堂は今日も賑わっている。にもかかわらずこんな風に私の周りには人がいなかった。



 まるで腫物扱い。

 触るな、危険とでもされているような――まぁ実際にされているのだが。


「この前の――」

「――――あいつの――」

「――ホント――」

「アマツカエ――」

「――笑いながら」

「マジ?」

「本当――――だって」

「――――襲撃――」

「――だから」

「――ウルトクフ――――」

「「「――――」」」


 皆さん私から離れ、そして私に向かってコソコソと何かを話している。その距離が意外と遠いのと声のボリュームが小さいため、はっきりとは聞こえない。だが微かに聞こえる単語や感じる視線。それらからだいたいのことは予想できる。


 彼らはみんな、この前の襲撃事件のこと。そしてその推定原因である私のことを話してた。

 「なぜ私が原因?」とは別にならない。普通に考えればその通りではある。

 頭のねじとかがぶっ飛んだウルトクフ教徒の襲撃。彼らの襲撃する理由としては、ウルトクフ教徒が神敵として敵視する天神様――それに仕える私たちアマツカエ家だろう。私だって最初はそう思ったのだから当たり前である。

 実際はその大規模な陽動(ウルトクフ教徒たちに陽動の自覚ナシ)の裏でのアロガンス殺害が目的であったのだが。

 しかしそれらを皆知らない。どうやら私が予想した通り、情報統制がされているようであった。それにより、生徒たちにはウルトクフ教徒たちが学校を襲撃したという概要しか把握できず、結果そこから予想するしかないので、必然的に狙いが私であったということなる。よって何も知らない生徒たちにとっては私のせいというわけだ。


 まぁだが私のせいというのはある意味で間違っているというわけではない。

 ウルトクフ教徒たちが襲撃してきたのは、例え陽動にさせられたものだとしても、私を狙っていたものには違いはないのだから。


 兎も角、そういうわけで私はこんな状態である。

 授業中感じた視線もこれに関するものだ。つまりは私という存在への不満。


 私は見事入学直後のような状態へ逆戻り。というわけである。


 私個人としては、極論どうでも良いものではある。

 アロガンスたち面倒三みたく何か絡んでくるなら、本当に勘弁、鬱陶しいものではあるが、見てるだけ。陰で何か言うだけ。それならちょっと気になる程度。


 それに現在はボッチではない!

 レオナがいるのでボッチではない!

 もう一度言おう。

 私はボッチではない!

 なので特にメンタルダメージなんてないのだ。


 そんな風に考えつつ、レオナと喋りながら昼食を続けていると、足音が近づいてきた。

 近づいてきたのは面倒三――アロガンス、フェルゼン、ビエンフーの三人だった。三人ともすっかり怪我は治っていた。……フェルゼンとビエンフーに関しては怪我のこととかはレオナに聞いただけではあるけど。


 面倒三の表情は立場が少々悪くなっている私に何か絡んで来ようと、明るいもの――ではなく、それとは真逆の暗い感じであった。まるでお通夜……いや流石にそれは言い過ぎである。だがそんな風に感じるぐらい暗いように見えた。

 いつもならば私に絡む。

 何か文句を言う。

 そんなである。

 だがそんなことをする様子もなく、料理の乗ったトレーを持ち、私たちの近く。ただし隣とかではなく席二つ空けたところに座った。


「……」


 アロガンスは黙ってフォークとナイフを動かしだした。


「……」

「……」


 フェルゼンとビエンフーもそれに続いてフォークを動かしだした。

 そして何か言ったり、したりすることなく、黙って食事を始めた。


 なんともシュール。そして不気味であった。


 アロガンスに続いてこの二人もかよ……。


 私はそう思いながら、いつもの調子ではないという歯痒さ。気持ち悪さ。そんなものを感じていた。っと言っても何か私から絡んでいこうというわけもなく、そのまま昼食を進めていった。


 周りも同様に私のことをあれこれ言ったりしながらも直接何か絡んで来ることもなく、遠巻きにしていた。


 そうして昼休憩の時間は過ぎていった。



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