1話
今回私は前みたいに1週間も眠っていたという訳ではなく、2日ほど眠っていたらしい。かなりの大怪我だったが、すぐに治療を受けれたことでここまで早くに回復したとのことだった。
まぁそこら辺は意識がなかったのでどうなのかはわからないが、医者が言うんだからそうなのだろう。
私としてはレオナの絵を早く見たいという気力と戦いの興奮で早く起きれたとかの方がちょっとしたロマンがあるので、そっちが一番の要因だと勝手に思っている。
それにしても私が眠って2日。そして起きてから3日が経った。学校の方はすでに修復作業が始まり、それを傍らに授業も始まっているらしい。てか上級生の授業では修復作業の一部をやらされたりしているものもあるらしい。そのおかげか見た目上は元に戻ったとのこと。まぁ私はまだ病院のベッドで寝ているのでまだ見てないから、実際どんな風なのかは知らないけれど。
それに今私はそんなことを気にする余裕がない。
学校がすでに始まっている。
始まっているのだ。
休校になったりすることなくすでに始まっている。授業は始まっているのだ。
それはつまり、
「ウイ~課題持ってきたよ~」
「あああー‼」
私は病室に入って来たレオナが掲げた、バックに大量に入れられた課題を見ながら叫び声を上げた。
普通に授業が始まっている。それすなわち課題も出されているということだ。
私は本来なら幸運、だが今の私にとっては不幸なことに見事回復。まだ動き回るのはダメということで病院にいる。そのため普通に勉強することは禁止されてない。だが授業には出れない。そういうことで先生たちはいつもの課題+授業についての解説(なぜか脱線し、全然関係ないところまで解説しているもの)+おまけの課題が目覚めた次の日からレオナの手で届けられていた。
本当にこいつらが面倒くさい。
いつもの課題はまだわかる。授業が始まっているのだ、その状態で私が何もしていないと授業に遅れてしまう。うん、理解できる。
授業についての解説(なぜか脱線し、全然関係ないところまで解説しているもの)。これもまだ……いやちょっと不満もあるが納得できる。教科書片手に独学で進んでいる内容を理解しようとするのは大変ということでの先生方の粋な計らいだろう。……脱線しまくって、どこが今やっている所なのかがわからなくなり、読むのに時間がかかりまくるという点だけは勘弁してほしいが……。
だがそれでもこれらはまだ良い。ある意味でいつも通りやっていることなのだから。
だがおまけの課題。
こいつだけは意味不明だ。
なんであるのだ。
なぜに存在しているのかというレベルで意味不明だ。
内容はどれもこれも難解。はっきり言って今の私には手に負えないようなものばかりだ。
なんだよ戦闘理論って?
なんなんだ実戦的魔法理論って?
どう考えても一年生の私がやるとことじゃない。こちとらまだ身体強化と体温調整がまともにできるくらいの未熟もんだぞ。意味がわからん。
……まぁ私は真面目なので、ちゃんとやってはいる。当たっているかは知らんが穴を埋めたり、文章書いたり、ちゃんとやっている。おかげで頭がパンクしそうだけどねっ‼
「あ~もう訳わからん!」
「いや~今日も大変そうだね~」
レオナは脇で楽しそうに絵を書きながらそう言った。
「そう思うならちょっとは手伝ってよ」
「手伝いたいけど私にはさっぱりだからね~。絵とかなら教えられるわよ」
「絵の課題なんかないよ……」
「残念。じゃあ自力で頑張ってね」
そう言いながらレオナは目線をキャンパスの方へ戻した。私も頭を抱えつつ、今日渡された課題たちに向き合っていく。
数は多いが、普通の課題は解説を何とか読み解いていって問題なく終わっていく。だがおまけの課題に手を出そうとして手が止まる。
初手から意味がわからん。
『影を媒介にして使う魔法の弱点は?』
そんなの習っては……ああそう言えばドローガのあれ。影を媒介にしていたか……? 多分していただろう。
ならあれを参考にして……『影を媒介にして使う魔法の弱点は?』。回答は『手数は多いが、増やし過ぎると脆くなる』かな。
正解かは知らんが、これくらいしかわからん。他に弱点って何だったか……。
私は頭から知恵をひねり出しつつ考え出した。
にしてもすごかったな。
だがそれはすぐに脱線。目的外のことを考え出していた。
あの一撃。完全に防いだり、捌くことはできなかったけど、もし出来たらめっちゃカッコいいだろうな~。それに私もあんな必殺技風なものも使ってみたい。
私の使う剣術アズマ流は、色々技はあったりするが、それはどちらかと言うと戦い方や動き方というもので、名前が付けられた特定の技というものはない。
前になんでかと姉様に尋ねたところ、理由は単純で元々祖先が使っていた剣、それに祖先は別に名前とかを名付けていなかった、ただそれだけのことだった。
そういう訳でアズマ流は動きはカッコいいが、カッコイイ技とかはない。
つまり使ってみたいなら、自分でつくったりしていく必要があるということだな。……それは凄く楽しそうだなぁ~~~。
私は想像して思わずニヤつきながら空を見ていた。
「よしっ! 出来た!」
私はレオナのその声で現実に戻っていた。
ふぅ……危ない危ない。思わずこのまま想像に夢中になって課題に手がつかないところであった。
私はそう思いながらレオナの方を見た。するとレオナの描いていたキャンパスの絵は見事に完成していた。今日描いたのは私の髪のようだった。
一本一本細かく描かれ、雑な毛など一本もなかった。
「よくそんな細かく描けるね……」
その集中力。私も今ちょっとだけ分けてほしい。
「そう? 結構簡単よ」
レオナはあっけらかんとしてそう答えた。
「それにウイの方こそよくやるわねそれ」
「えっ?」
「ん。だってそれ別に必ずやる必要ないじゃない。それなのに毎回必ずやるなんて、真面目ね~」
必ずやる必要がない……?
……。
……。
……マジ?
「えっ。これやんなくてもいいの!」
私はそう言いながら、おまけ課題を持ってレオナに詰め寄った。危うくベッドから落ちそうになったがギリギリセーフであった。
そしてレオナはそんな私に「知らなかったの?」と言いながらおまけ課題の下、そこを指さした。
「ほらここに。任意課題って書いてるじゃない」
「……あ」
書いてあった。
しっかりと。目立たない感じではあるが任意課題と書いてあった。
「アアアアァァァー‼」
私の叫び声が病室を越え、病院中に響いた。
レオナはその声量に思わず耳を塞いだ。
あとで医者とか看護師に怒られそうだが叫ばずにはいられなかった。
無駄だったとまでは言わないが、別にやらなくてもいいもの。そうだと知っていれば無理してやろうとはしていなかった。ちょっとした後悔みたいなものが体中を走りながら、声は響いていった。
そして次からはプリントとかはちゃんと隅々まで目を通そう。私は固く固く、そう誓ったのであった。
「うぅ……」
「そんなショックなの……? 別に無駄なやつという訳ではないんでしょう?」
「うぅ……。そうだけどさぁ!」
こう……なんだ。労力がめっちゃかかるもの。それを真面目にやっていた後で、それが別にやらなくても良いものだったと判明する。
なんか、こう……モヤっとするというか、後悔と言うか……不要なものもやっていたという徒労感があるのだ。
「こうなったら意地でもやってやる……。正解なんて知るか! 間違えまくりながら全部やってやる!」
「おお~。うんじゃあ、頑張れ頑張れ」
私はレオナの応援を耳にしながらおまけ課題に再び手を付け始めた。
コンッ、コンッ。
そのとき病室をノックする音が聞こえた。私とレオナの視線が自然とそっちを見た。
「? どうぞ」
私はそう言って部屋の外へ声をかけた。するとすぐに扉が音を立てることなく、静かに開いた。
「療養中の所失礼します。私、宰相のゾイロス・ミニストロと申します」
ミニストロ……? どこかで聞いたような……あっ、あの面倒三のビエンフーか。へ~あれのお父さん、宰相なんだ。興味なかったから知らなかった。
ビエンフーとは違い、凄いハキハキとしている。何か活力に満ち溢れているという感じだ。親子でもこうも違うとは不思議なものである。
「えっと宰相の人がどういった用件で……?」
「はい。実は学校襲撃事件の件で国王が話を聞きたいということなので、王城にご足労願いたいのです」
「えっと……今からですか?」
私はそう言いながら横にあるおまけ課題たちに目を向けた。
するとそれに気づいたゾイロスはにこやかな表情で言った。
「ああ。明日で大丈夫です。明日、迎えの者が参りますので」
「わかりました」
明日か。王城というものに行くのは前も今回も初めてだから、ちょっとだけ楽しみだ。




