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22話



「容赦するな‼ 徹底的にだ‼」

「「「了解‼」」」


 暴れ回る白装束に身を包んだウルトクフ教徒たちが鎮圧されていく。騎士団の攻撃によって鎮められてゆく。


「神敵撲滅だっ! 神敵っ」

「しん」


 ドンッ!


「がぁっ」

「うぐっ!」

「ぼ、ぼくめつしろ‼」


 騎士団が到着したことで騒ぎは少しずつ収まり始めていた。

 ウルトクフ教徒たちの叫び声も少しずつ小さくなってゆく。


「今だ‼ ぶっ潰せ‼」

「行けぇ!」

「「「おぉ‼」」」


 籠城に徹していた教師、生徒たちもこれを好機と反撃し始めていた。

 溜めに溜められた鬱憤を晴らすかのような猛攻を仕掛けてゆく。周りへの被害なんて考えない。もうここまでやられたんだ、好きなだけぶつけろ。という勢いの攻撃だ。



 元々戦略も糞もない、数の暴力での襲撃だ。

 怪我すれば数の力で一気に治療。

 隙があれば数の力で猛攻。

 そうやって攻め続けていたウルトクフ教徒たち。

 しかし、その力はバラバラ。力量は下から上まで選り取り見取り。少しでも数の優位性を崩壊させられれば一気に瓦礫する。そんな軍勢であった。

 現に今、そうなっていた。


 攻めに攻めていたことで奥へ奥へと行き過ぎて、後方など警戒していなかったウルトクフ教徒たちは簡単に爆撃された。斬られた。氷漬けにされた。一気に瓦礫する。崩れる。崩壊していく。


 後ろをやられ、そっちを警戒し、攻撃が緩む。そこを責められ、さらに崩れていく。


 こうしてウルトクフ教徒たちはどんどん撃破されていった。



 そんな風に撃破されていくウルトクフ教徒たち。彼らのいる場所よりも後ろ、校舎の裏にある木が生い茂った林の中。そこにはウルトクフ教徒たちが殺そうと思っていたウイたちが騎士団に保護されていた。

 大怪我の治療のために急いで魔法がかけられている。ウイの体は淡い光に包まれ、少しずつ傷が塞がろうとしている。


「大丈夫だよな。大丈夫なんだよな!」

「た、多分これで大丈夫なはずです」


 ウイが治療されてるその横では事情を聴かれているレオナがいた。


「えっとここで何があったのかな?」

「ふぅっ! てあって。ふぉうっ‼」

「……はぁ?」

「ふおうっ‼」

「ダメだ全然分からん」

「おい誰か精神系の魔法かけられる奴‼ この子精神汚染されてるかも‼」


 ただしレオナは絵が完成した興奮のせいか、半ば正気を失っていた。奇声を上げたり、飛び跳ねたり。その興奮のままに動いてしまっていた。そのため騎士団は事情を把握することができず、むしろレオナが精神汚染されていると心配がられていた。


「お前精神魔法使えたよな。行ってこい」

「えっ、だけど治療が……」

「治療は自分がやりますから」

「分かったありがとう」


 ウイに治療をかけていた騎士が立ち上がり、レオナの方へと駆けていった。

 「あれ魔法が効かない⁉」。そんな叫びを背にして残された騎士は治療を進めてゆく。


「それにしても本当に何でこんな大怪我に……」

「ウルトクフじゃないですか。てか今回の襲撃、彼女が目的でしょ」


 残念ながらそれは違う。

 ここまでの怪我は大半がドローガ。そしてドントによるものだ。しかしまだそれを騎士団は知らなかった。


 結局今回の襲撃でウルトクフ教徒たちはウイに対して何か害するということはできなかった。せいぜい疲れさせたくらい。それ以外はウイの昂りを上げるお手伝いをしたぐらい。そもそも最初ぐらいしか攻撃は仕掛けられておらず、後半は後ろの方へ攻めすぎたことでウルトクフ教徒たちはウイと出会うことはなかった。

 少しでも後ろに下がったりしていれば、怪我で倒れたウイを殺害出来たかもしれないというのに。


 まあだがそうはならなかったので、ウイは無事生きていた。

 怪我はかなりひどいが、ギリギリ治療が間に合っていた。


 治療を施している騎士団、そしてレオナに話を聞こうとしている騎士団はウイの容態が気が気でなかった。


「おい本当に大丈夫なんだよな」

「大丈夫ですよ……多分」

「多分じゃねぇよ! この子死なせてみろ。副長の奴にどやされるぞ!」

「どやされるどころじゃないでしょうね……」

「半殺し……普通に死ぬかも……」

「ああー‼ もう嫌な予感はしてたけど、何でこんなことになっているんだ‼」


 アマツカエ・トウコの妹好きはすでにバレているようである。

 必死に万全に万全を重ねて治療を施してゆく。ある意味今この学校の中で一番命がけであった。



 そしてそれを尻目に運ばれていく男がいた。

 アロガンスたちである。

 フェルゼンとビエンフーはまだ気を失ってはいるものの、大事には至っていなかった。彼らは担架に乗せられ、運ばれていた。


「アロガンス様。何か変なところはないですね」

「あ……あ。大丈夫だ……心配するな」


 アロガンスは声をかけられつつ運ばれてゆく。


「俺のことは良い……他の者の方へ……」

「了解しました」


 そのアロガンスの言葉に素直に答え、アロガンスたちに付き添い、護衛をしていた騎士たちがウルトクフ教徒たちを制圧している前線の方へ走ってゆく。まだ暴れるウルトクフ教徒たちはいるし、怪我人もいる。騎士団の仕事はまだまだたくさんある。


「……」


 走ってゆく騎士を見ながら運ばれてゆくアロガンスは、もう一度ウイの方を見て、そして目を瞑った。


(守られてしまった。アマツカエに……。黒髪に……)


 アロガンスは自分が見下し、嫌うアマツカエ・ウイに守られたこと。ウイにはそんな気がなくとも結果的にそうなってしまったことがたまらなく悔しかった。


(糞っ……)


 小さく歯ぎしりが鳴る。

 拳が握られる。

 だがその思いが誰かに当てられることはない。ただずっとアロガンスの中で渦巻き続ける。


 不甲斐ない。

 悔しい。

 憎たらしい。

 羨ましい。


 渦巻いて渦巻いてアロガンスの中で混ざり合う。


 アマツカエが嫌い。それは変わらない。

だがそう言いながらアマツカエに剣では勝てず、打ちのめされ。しかも自分の危機を助けられた。


「糞ォ……」


 声が漏れてゆく。

 低く。低く。漏れてゆく。

 誰にも聞こえないほど小さな声が漏れ、消えていった。



 *  *  *



 セオス王立学校襲撃事件。

 人的被害多数。建物被害多数。

 しかしながら誰も――ただ三人を除いては誰も目的を達成することはできなかった。


 一人はレオナ・ビンチ。


 一人はアマツカエ・ウイ。


 一人は……



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