5話 全知の神は初めての未知を体験する
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神々は私たちが想像するよりもずっと恐ろしい。これは、見た目だけの話ではない。
人間たちが想像する神話には、人間と似たような体をした神々が登場することが多いが、神も生物なので、その環境にあった姿をしているのはなんら不思議なことではない。
そんな神々の中には人間に似た見た目をしている神や、人間の姿に変身したり、人間の姿の化身、いわゆる分身を作れたりする。
ヨグ=ソトースという神も、人間の姿の化身を新たに作り出すことができた。
そして、先程ヨグ=ソトースは、興味を持った人間と交渉した結果、転生させてあげるかわりに眷属にすることに成功した。
だが、この契約の流れ自体、実は出来レースだったことをあの人間は知らない。
ヨグ=ソトースがある空間に入ってきた人間は、その場所にいたヨグ=ソトースに遭遇した。
この神の見た目は大変恐ろしいものであるため、この人間はその恐ろしさのあまり、正気を失い発狂した。
ただ、発狂と言うのにも種類がある。どのような性格をしているか、どのような形で発狂したかによって発狂内容も異なるものになる。
ただ廃人になり、精神が完全に死を迎える者もいれば、一つのものに異常に執着するものなど、その内容は多種多様と言えるだろう。
そして、この人間の発狂はかなり変わったものであった。発狂し、精神が崩壊した結果、どういう訳か恐ろしい見た目をしている神を美しいと思ったのだ。
ヨグ=ソトースは少し困惑した。今まで自分を見て美しいと思った人間はいなかったからだ。
そして、ヨグ=ソトースはこれをチャンスだと思った。発狂し、自分自身を美しいと思っている今なら、どんな無茶苦茶な契約をふっかけても結んでくれる思ったからだ。
実際、ヨグ=ソトースの読みは正しかった。冷静に考えて、精神が崩壊した人間がまともな考えを持てるはずがなかった。
その結果、ヨグ=ソトースは自分自身の思惑の通りの契約内容を結ばせると、その人間の記憶を完全に消去し、人間の姿をした自身の化身を作りだす。そして、あたかも、今初めてその人間にあったように振る舞い、その人間を観察し始めた。ちなみに、この時、和樹という人間はすでにヨグ=ソトースと契約していたため、ヨグ=ソトース発言に疑問も持てず、また、自分が死んだと言う事実を突き付けられても対して動揺しなかった。それと、ヨグ=ソトースがここで持ちかけた契約内容は嘘ではない。そのため、この時点で和樹は人外の力を手に入れている。
何故このような事をしたのか?と思う人がいるかもしれないが、その答えは簡単だ。
ヨグ=ソトースはこの人間を観察するのが楽しかったのだ。
ご存知の通り、和樹という名の人間は全知であるヨグ=ソトースですら理解できない存在、しかし、肝心の和樹は発狂してしまっている。せっかく自分ですら理解できない人間を見つけることができたのに、その人間は発狂しており、今にも廃人になって死にそうと言うのはあまりにももったいない。そこで、ヨグ=ソトースは和樹の記憶を消し、正気を取り戻させた。そして、そのまま転生させると、何も知らない状態の和樹が混乱すると思い、わざわざ新たな化身をつくり、あの茶番を行ったのだ。
何故そこまでするのか?と、思う人はヨグ=ソトースの視点になって考えて欲しい。
生まれた瞬間から過去、未来問わず宇宙の全てを理解している事がどれほど退屈なことか。
どんなに素晴らしい内容の本でも、一言一句間違えず言えるようになるぐらいまで読み込めば飽きてくる。ヨグ=ソトースは生まれた時からすべてそうなのだ。そして、そんななか突如として、自分が全く知らない物が出てきたらさぞ興味深いだろう。
一言一句間違えずに言える本たちを読むより、まだ呼んだことのない本を読んだ方が面白いと思うのは当然である。
ヨグ=ソトースにとって和樹はそれだった。
要するに、前回の話で和樹があの状況で平然としていたのは、既にヨグ様があれやこれや記憶をいじったりしてたからってことです。
普通に考えて自分が死んでるって言われたりしたら色々気になりますからね




