26話 死亡、
「うっそだろお前…いくらヨグの眷族だからって、あそこまで極端に人間やめれるもんなのか?もしかして、和樹もそう言うの出来る系?」
「え?いや、俺も優花の本気を見るのは初めてだったから…」
「にしても2分で魔力切れとは、えらく燃費が悪いな」
勝仁はポケットからポーションを取り出し、和樹に投げる。
「マナポーションだ。飲ませてやれ」
和樹はポーションを受け取ると、優花に飲ませる。
「…ご主人…様?」
優花は魔力が回復したことにより、かろうじて意識を取り戻す。
「やつは…どうなりましたか?」
「アイホートはそこで倒れているよ。生きていたとしても、瀕死だろう」
『……フフフ、フハハハハハハ…まさかこれで勝ったつもりか人間?今の一瞬の攻撃で?』
「「「!?」」」
『認めてやっても良い。貴様の攻撃はそこそこ強かったと。自らの命を燃やした一撃はなかなかだ。だがそれでも、神に挑むにはあまりにもお粗末と言わざる得ない。たった1人の人間が多少限界を超えたぐらいで勝てるほど神は甘くない』
気がつくと、先ほどまでボロボロだったアイホートの体には傷一つなく、すべての傷が完治していた。
『優花とやらよ。契約をしないか?もし貴様が今私と契約を結ぶなら、そこの2人は生かしてやっても良い。それだけではない。なんなら、この町から手を引いてやっても良いぞ?』
「誰がそんな契約すんだよ。だいたい、この町から手を引いて次の町に行くだけだろ。…たく、しゃあねぇ。よく聞け和樹。俺は今からとっておきの秘策を使う。発動できればこの程度のやつを秒殺できる秘策だ。ただし準備にそこそこ時間がかかる。時間を稼げるか?」
“旧支配者相手に時間を稼ぐことなどできるのか?”
“勝仁の秘策がもし通用しなかったら?”
さまざまな不安が和樹の脳裏をよぎるが、和樹は優花を見捨てると言う選択を選ぶことは出来なかった。
そして、考えるのをやめた。
「なんとかする…いや、してみせる」
「……死ぬなよ」
『……愚かな。まあいい。あの人間は魔力切れの反動でまともに言葉も発せないよだしな。少し遊んでやろう。あの人間が喋れるようになるまでもてばいいな』
そう言い放つと、アイホートは何かの魔術を発動し、オーラのようなもの纏い、禍々しさを増していく。
和樹は短剣を抜き、魔術を組み、空間をねじ曲げる。空間に干渉する。ねじ曲がることによりうまれた空間をつたうことで、アイホートへの距離を短くし、速攻で詰め寄ろうとするが、
『遅い!』
アイホート前足を地面に叩きつけると、魔術がレジスト(相殺)され空間が崩壊する。
『なにをしようが無駄だ!空間魔術をかろうじて使えるようが、その程度では話にならん』
「だったらこれはどうだ」
和樹は魔術を発動させ、アイホート時間の流れを遅くする。
時間干渉の応用で、対象を時間の流れからずらすことで、対象の流れる時間を遅くすると言うものだ。
効果が切れる前に即座に接近し、斬りつけようとするが、
『無駄だと言った筈だ!』
またも前足を地面に叩きつけられ、魔術をレジストされる。それと同時に、アイホートの魔術により吹き飛ばされる。
あれほど強く地面に足を叩きつけたのに、アイホートの足元の地面が一切崩れていないところから、叩きつけた衝撃をなんらかの魔術で、直接和樹にぶつけたのだろう。
ぐしゃと言う音と共に、激痛が走る。
なんとか立ち上がり、魔術を組むが、同じようにあしらわれる。
『期待外れだ。これなら先程の人間の方が手強かった。よくその程度で私と戦えると思ったな?終わりだ』
「まって!」
『ほう?私と契約する気になったか?』
「だめだ優花!契約するな!」
「ええ。私はあなたと契約します。ご主人様、ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした。そして、私の為に戦ってくれてありがとうございます」
そう言うと、優花はニコッと笑って見せた。
『貴様の血を持って、この契約を完了とする』
アイホートを中心に巨大な魔法陣が展開される。
優花は短剣で自分の指を切り、地面に展開された魔法陣に血を一滴垂らす。
『フフフ、フハハハハハハ。さて、とどめを刺すのが遅れてしまって悪かったな人間』
「な!?話が違う!ご主人様と皇帝陛下には手を出さない契約だったはずです」
『貴様は何か勘違いしているようだ。私は先程、“もし貴様が今私と契約を結ぶなら、そこの2人は生かしてやっても良い。”と言った。そう、あの契約には”今”と言う時間指定をしていた。つまりそう言うことだ。あの時に契約しておけば、貴様の主人は助かったのにな』
「まさか、初めからこれが狙いだったのか?」
『馬鹿な人間どもはそろいもそろって皆この手に引っかかるからな。今度こそ本当に終わりだ』
アイホートは先程と同様に足を地面に叩きつけ、和樹に衝撃を与える。
1撃で瀕死になる威力の攻撃を受ける。
和樹の体の骨は砕けちり、その衝撃で内臓は潰れ、和樹は死亡した。
「そんな…」
優花はその場に崩れ落ちる。
『フフフ、フハハハハ。やはり、絶望に打ちひしがれる人間ほど愉快なものはないな』




