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17話 神との遭遇(2)

 正気を取り戻した優花だったが、辺りを見渡して先ほどいた神と思われる人物がいないことを確認してほっとする。しかし、そこが草原であることから先ほどの神との遭遇が夢でないことが確定してしまうことに絶望を覚える。


「助けていただきありがとうございます。私は優花といいます」


 あの神とこの男性の様子を見るに、優花を助けようとしていたのは事実のようなのでお礼をしておく。


「俺は和樹っていいます」


 男性をスキルで調べたところ、あまり悪い人ではないということが分かり、一安心する。


 優花が神を恐れるのには理由があった。数年前、母親に連れられ迷宮を探索していた時、一度神にあったことがあるからだ。

 その神は白く、丸い肉体に無数の目を持ち、どこか獣のような感じをする姿をしており、私はその恐ろしい見た目と、その神の本質の一部をスキルで見たことにより、恐怖で発狂しそうになった。

 その神は契約するかここで死ぬかを迫り、母親は優花に対して何もしないなら契約するという条件の元、神との契約を結ばされた。

 その日は無事に帰ることができたが、後日、母親のお腹が妊娠したかのように膨れ上がり、数時間後に破裂したのだ。勿論母親は即死だった。

 腹の中からは、契約を迫ってきた神の幼虫と思われる生物が複数現れた。父親がそいつらを駆除してくれたが、数日後、今度は父親があの神の呪いを受け死亡した。

 優花はそれから神について調べ、その結果神にはろくな奴がいないということだけ分かった。

 それ以降、優花は神とは関わらないことが1番だと考えていた。


「それで、その、和樹様に質問してもよろしいでしょうか?」


「もちろんいいですよ。なんですか?」


 和樹に対して、気になっていたことを質問する。


「あの、その、あなた様は人間でしょうか?」


「もちろん人間ですよ」


 その言葉を聞き安心する。

 スキルで本質を見たときは人間だあることが分かったが、あの神と同様の力を持つ神ならば、スキルの結果を書き換えることぐらい容易であるため、人間であることを確認できたことは、優花にとってとても大きなことだった。

 和樹が言っていることが本当である保証はどこにもないが、この時の優花はそれに気づくほど冷静ではなかった。


「あの、ここはいったいどこですか?」


 そう問いかけたが、返事はない。


「あの、和樹さん?」


 やはり返事はない。

 それどころか、表情も変えずその場で硬直している。


 次の瞬間、優花を中心とし大量の魔法陣が現れる。

 優花は魔術に関してそこそこの知識がある方なので、この魔法陣がどれほどのものかを一目で理解する。

 そう、それは紛れもない神のみわざ。

 それも、数年前にあった神とは別格の力を持つ神の力だと理解する。

 なんらかの魔術が発動し、神が降臨する。


 虹色に輝く無数の球体。1つ1つが直視できないほどの強烈な光を放ち、その球体がつなぎ合わされたかのようなそれは、優花が知るある神の特徴と一致していた。


 ヨグ=ソトース


 優花の知る限り、古代神話の神々の中で最高位に位置し、時間、空間、生死を超越したこの世界の創造者。

 脳をフルに使い打開策を考えようとするが、無駄である。

 もし、この神が優花の知る古代神話に出てくる神であるならば、どうすることもできない。時間を超越し、すべての魔術を使えるこの神の前で抗うなど不可能だ。

 しかし、もし古代神話に出てくる神であるならば、まだチャンスはある。このヨグ=ソトースいう神は、古代神話によると、基本的に人間に対して興味を持っておらず、失礼の無いようにしていれば、危害を加えてこないし、場合によっては助けてくれることもあるらしい。


『私に対しての妄想はもう結構。にしても、古代神話を知識として持っていて、神に対しての敬意を払える者は嫌いではない』


 全てを見過ごされたかのようにそう声が届く。おそらく、テレパシーというやつなのだろう。


『さて、私から君に提案がある。そこにいる和樹の眷属にならないか?詳しい情報は君の頭に直接送り込もう』


 優花の頭に大量の情報が入ってくる。


 この神は、和樹に興味を持ち、和樹を眷属にしたようだ。そして、和樹を神にしようとしているらしい。優花には、和樹の眷属として、その手助けをしろと言うことのようだ。従者として立ち振る舞い、ヨグ=ソトースの意図に反することを和樹がしないように抑制する役割だろう。

 優花の能力はこの世界ではそこそこ高い方に位置し、両親が死亡しているところから、色々都合が良いと判断されたらしい。

 和樹の眷属になれば、それはヨグ=ソトースの眷属になるのと同じようなことだが、そんな考えを吹き飛ばす神の言葉が聞こえてくる。


『お前は何を望む?お前がこの契約になるならお前のうちに秘めているその願い、を叶えてやろう。さあ、望みを言葉にしろ。そうすれば契約は成立し、私はお前のその願いを叶えてやるぞ?』


 優花の心のうちにある願い。その願いを叶えれるなら、どんな代償を背負う1つの望み。


「どれだけ時間がかかってもいい…私の両親を殺した神をこの手で殺したいです」


『よかろう。この場で力を与えてもよかったが、それでは味気ない。眷属は主人の力を得ることができる。和樹が強くなればいずれはお前の両親を殺した神を降せるだろう。私はお前が奴に勝てるようになった時、やつをお前の前に召喚してやろう』


「ありがとうございます」


 優花は奴を殺せることを条件に、ヨグ=ソトースと和樹の眷属になる契約をした。

 優花にとっては幸運だった。

 自身の望みが叶うかもしれないだけではなく、スラムでの生活ともおさらばできるのだから。


『契約により、お前の体は和樹の体とリンクする。和樹が強くなればなるほど、お前も強くなる。その逆も然りだ。私が送った情報を見たのなら理解していると思うが、この後茶番に付き合ってもらう。勿論、この私とのやりとりを和樹に伝えるなよ。それと、最後に言っておくが、私はお前自身にも大変興味を持っているぞ』


 ヨグ=ソトースはその場から消え、時間が巻き戻る。

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