13話 ショゴス
「はい。確かに受けとりました。これにて依頼達成となりますので、ギルドカードの方を御返しさせていただきます」
あの後、普通に森に生えてある薬草を集めて帰ってきた。一様、依頼を受けるときに薬草のサンプル画像と、特徴を教えてもらっていたのだが、キャベツとレタスを見分けられない俺は、内心かなりひやひやしていた。
『無事以来達成したみたいだね。次こそあれ受けてみてよ』
〈スラム街の下水道にて テケリ・リ、テケリ・リ という奇妙な生物の鳴き声が複数確認された。なんらかの魔物が潜んでいる可能性があるため、調査をしてほしい。 推奨ランクD 報酬 〜7000円〉
『…下水道とか行きたくないんですけど』
『面白いことが起きるから受けたほうがいいと思うよ〜。まだ夜まで時間あるし』
『わかりました…』
和樹は渋々この依頼を受ける。ヨグ=ソトースの言い方からして、何かあるのは確定事項だろう。
受付で手続きを済ませて、早速スラム街である北区に行ってみると、そこには5mほどの壁と門が存在した。
スラム街を完全に隔離しているようだ。
門番の人に、ギルドカードを見せるとどうしてくれた。
スラム街に入ると、まずは元々は栄えていたと思われる大通りがあった。
店だと思われるものもちらほらあり、一部は営業しているみたいだ。出歩いている人も多少いて、粗末ではあるが、ある程度の服は着ていた。
多少は汚いものの、そこまで酷いとは思えない。
大通りを抜け、ヨグ様のナビを受けながら下水道の近くまで来た。
大通りを抜けた瞬間、今までかすかに残っていた活気がなくなり、ボロボロの服を着ている浮浪者や、子供を見かけるようになった。
『なんか、この町結構闇が深そうですね』
『先代の領主が重税かけて、払えない市民を次々奴隷にして売ってたからね〜』
『そういや、この国奴隷OKなんですね』
『殺人とかの罪を起こしたら奴隷にされるね。刑罰として奴隷落ちがあるから怖いよね〜』
『ちなみに、奴隷の首輪的な命令に逆らえなくなる的なやつあるんですか?』
『あるにはあるけど、完全じゃないね。命令が複雑化するとガバガバになる。脱走防止ぐらいなら使えるけどね。まあ、魔術で作られているから原理を知っているか、そこそこの腕前の魔術師なら解除できるけどね。一方的な拘束みたいな魔術よりも、お互い同意の上の契約みたいな魔術の方が、拘束力強いからね〜。神も契約を好む傾向にあるしね。まあ、神と人間の契約はほぼ脅しみたいなものだけど』
奴隷の扱いがどのようなものかは知らないが、おそらく元いた世界とあまり変わらないのだろう。
そんなことを話していると目的地に着いた。
そこには、下水道を管理してい建物の人がいた。挨拶と仕事の確認をすると俺は中に入った。
『やっぱ臭いですね』
『そらそうだろうね』
しばらくヨグ様と雑談していると、少女が向こうから走ってきているのが見えた。
「そこの人、急いで逃げてください」
「え?」
大声でそう言われ、戸惑う和樹。
少女が和樹の方に近づいたことにより、和樹は少女が何かに追いかけられていることが分かってしまう。
それは、アメーバのような見た目をしており、不定形な形状をとっている。色は緑が多少含まれた黒色で、コポコポと音をたてながらこちらに近づいている。
よく見てみると、それは2体以上存在しているようで、そのおぞましい見た目を見た和樹は、思わず体がすくんでしまった。
『あれはショゴス。ケテリ・リ!ケテリ・リ!となく神話生物。結構強いよ〜 個体差激しいけど。
ちなみに今の君なら1体ぐらいは倒せるかもしれないよ〜。多分死ぬけど』
『ヨグ様、知ってて受けろって言いましたね?』
返答はない。
とりあえず和樹は、依頼を受けたときに渡されていたカメラのシャッターを切る。これは、魔術を駆使してつくられたカメラで、魔物や薬草を写真として記録するために用いられることが多いらしい。かなりのMPが必要とされ、フィルムの素材も高いので、市民にはあまり出回ってはいないが、それでも一定数は市場に流れている品である。このカメラは写真を撮ると、カメラから写真が出てくるタイプなので、写真が撮れていることを確認すると、全力で逃げる。
見た目でわかる。あんなのに勝てるわけがない。ショゴスは思っていたより早くなかなか振り切れそうにはない。
そんな時、少し前を走って逃げていた少女が、つまずいてしまい、目の前でこけてしまった。
「…!?」
逃げ切るためには助けるべきではないのだろうが、なぜかその少女を助けようとして振り返ってしまう。ショゴスはもうすぐそこまで接近しており、とてもじゃないが攻撃準備は出来ないだろ。
和樹は咄嗟に、時空干渉を使いその少女と自分をヨグ=ソトースの作った空間内に入ることができた。
この空間は、以前和樹が修行するために使ったもので、ヨグ様はもう使わないからということで、和樹にくれたものだ。ちなみに、以前とは違い時間は経過するようになっている。
「お、生き延びることができたね」
背後から声が聞こえたので振り返ってみると、豪華な椅子に座り、ポテチを食べているヨガ様がそこにはいた。




