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プロローグ

 はい、ということで、わたしは無職になりました。


 今日からどうやって生きていこう。

 ええと、とりあえずはステータスをオープンしておこう。


「ステータス、オープンっ!」


 天に向かい叫ぶと、様々なわたしの情報が浮かんだ。

 それを腕を組みながらじっくりと読んでいく。



ユー・キハラ LV2

経験値:15

職業:無職

特殊能力:等価交換++、技術吸収+、過去の水鏡、ステータスチェック、幸運付与、魔術消去、ぼっち++、飲酒覚醒《極》



「うん」


 満足したわたしはそっとステータスから目を逸らした。

 するとスッと消えていく情報。

 やれやれ、誰が考えたんだ、こんなステータスを。

 わたしに一体どうしろと。


 でも、生きていくには働くしかない。

 街に戻る途中でわたしは何度も首を捻ったわけで。





 ええと、自己紹介が遅れました。

 というか、自己紹介する以前にまったく記憶がありません。


 気付いたらここにいました。

 ここはどこかって?

 そんなんわたしが知りたいよ!


 さっき自然と「ステータス、オープンっ!」とか叫んだけど、考える前に身体が動いたというか。

 それもきっと上空に浮かんだ《ステータスチェック》とかのせいなのかもしれない。

 まあ、あんまり深く考えても仕方ないよね。

 だって記憶がないんだから。


 ステータスから得られた情報から分析するに、わたしは現在《無職》だということ。

 記憶を失う前のわたしは、一体どうやって生きてきたんだろう。

 嫌だよ、いい歳して無職なんて。

 ……自分の歳がいくつなのかも知らないけど。


 あとはわたしの名前らしき記載もあるけど、これが本当に名前なのかどうかも分かんない。

 横にレベルが書いてあるけど、もしかしたら技名とかかもしれないし。


「はぁー、どうしよう。誰に聞いたら分かるんだろう」


 記憶喪失だからまずは病院かな。

 それとも市役所に行って戸籍を調べるのが先か。

 健康保険とかに入ってなかったら、診察料とか支払えないかもしれないし。


 ……いや、ちょっと待てよ。

 もしかして、ここってゲームの世界とかなんじゃね?

 だってステータスが出現するなんておかしいでしょう。

 まずはそこから検証したほうがいいと思います。


「……」


 周りを見回しても、どう考えてもゲームの世界には見えません……。

 いくらわたしに自分の記憶がないとはいえ、現代文明がここまで進化していないことくらいは覚えてますし。

 

 じゃあ、ここは外国か。

 日本にこんなところはないよね。

 だって、空に竜とか飛んでるし。


「…………竜っ!!?」


 わたしが叫んだのと同時に、上空の竜が大きな口を開けました。

 そしてその口から炎の塊が――え?


「ドドドドラゴンの襲撃だあああああああああ! みんな避難しろおおおおおおおおおお!」


 街のほうで住民が騒いでる。

 うん。ドラゴンの襲撃だって。

 あ、やばい。

 わたしさっそく、死ぬっぽい。


 ドゴーーーン、という大きな音と共に街の建物が破壊されていきます。

 あれだ。きっとドラゴンブレスっていうやつだ。

 これだけ街の中心から離れていても熱風で顔が焼けそうになります。

 あー、これあかんやつや。


『人間どもめ。根絶やしにしてくれるわ。我が子孫も残りはあと僅か。この命が尽きる前に、人間どもに恨みの炎を喰らわせてやる。…………ん?』


「あ、やべ、こっちきた」


 地上であんぐりと口を開けていたわたしに気付いたドラゴン。

 そのままバッサバッサと翼を羽ばたかせて、わたしの前に降りてきます。

 万事、休す。


『貴様、何をぼうっと眺めている。我が炎に同志達が苦しんでいるのに、なぜ助けようとしない。戦うわけでもなく、逃げるわけでもない。それともそれが貴様の戦略か』


「え……? いや、あの」


『……? そうか、分かったぞ。貴様は人間どもが異界から召喚した異世界人だな。噂には聞いている。が、もう遅い。すでに魔族も竜族も人間どもを許す気はない。これはすでに決定事項だ。貴様らの王は我々を虐げ続けた。絶滅の危機を迎えた我ら竜族だが、最後に大きな爪痕を残すくらいの力は残っているぞ』


「ええと、いやそうじゃなくて」


『……いや、面白いことを思いついたぞ。人間どもの希望とも言われる貴様ら異世界人を捕えたとあれば……。くく、奴らの慌てふためく姿を想像するだけで面白い。貴様の名は――そうか『結城原』だな。我と共に来てもらおう。分かっているとは思うが、貴様に選択の余地はない』


 まったくわたしの話を聞こうともしないドラゴンは、そのままわたしをパクっと咥えました。

 そして再び翼を広げ、上空に飛び立ちます。


「…………クサい」


 ドラゴンの口内は生暖かくて、粘っこくて。

 獣臭が半端なくて、今にも気絶しそうです。


 でもなんか、意外と落ち着いている自分に驚きます。

 たぶんきっと、こうやって拉致されるのに慣れているんだろうと思います。


「結城原……かぁ」


 やっぱさっきの、わたしの名前なんだね。

 ということは、わたしのレベルが2ってことでいいっぽい。

 ドラゴンさんが勝手に喋ってくれた情報で色々と知ることもできたし。

 ここが異世界で。わたしが召喚された人間で。竜族だとか魔族だとかもいるファンタジーな世界、と。


 ……うん。

 どうしたらいいんだろう、これから。


 ドラゴンさんの吐息を生で感じながら、わたしは頭を悩ませてしまいました。




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