始まり 2
あぁ、寒い……。
打ち付ける雨の雫に体温が奪われ体が震える。
目を開けると、夜空が広がっていた。
あれ……? 俺、生きてる……? 確か、トラックが突っ込んできて……。
体を動かそうとしたけど、思う様に動かせない。
そりゃそうか、無傷で済む訳無いもんな。
「あぅ……あ……」
声も自由に出せないと来たか、助けも呼べないな。
トラックの運転手も無事じゃ無いだろうし、騒ぎを聞いた誰かが助けてくれるまで待つしか……。
「……! ……!!」
ん? 今声が……。
視線だけ動かし目を凝らしてみると、見た目二十代くらいか? 二人の夫婦らしき男女がこちらに駆け寄って来た。
そして女の方が俺の近くに膝をつき、じっと顔を覗き込んでくる。
うわっ……すげぇ美人……
今更気付いたけど、外人だった。
透き通る様な金髪のロングヘアーにコバルトブルーの瞳、服装はどこかの民族衣装みたいな感じだがその美貌で全然おかしいとは思えない。
しかもその服の上から見てもわかるくらい巨乳
もう一度言おう、巨乳だ。
そしてその後ろに立つ男は俺が見てもイケメンだと思うくらいの顔立ち。
短く切り揃えられた茶髪に、女と同じコバルトブルーの瞳、身長は高く細身だが筋肉質な腕を見るに細マッチョなんだろうな。
そんな美男美女に助けられる至って普通の俺……何か申し訳ない様な気がする。
いやいや、そんないらん感情は置いといてとりあえずこの二人に助けて貰おう。
「あ、うぁ……」
あ、しまった話せないんだ。
でも流石にこんな状態だから救急車くらい呼んでくれる筈だ。
「貴方! これはきっと神様から私達への贈り物だわ!」
……ん? 贈り物? 何を言ってるんだこの人?
「待て、それは流石に無いだろう? それにこの髪と瞳の色、見たことも無いぞ?」
いやいやお兄さん、確かに俺は日本人だから貴方達とは違うけどさ、この国じゃあどちらかと言えばお兄さん達の方が珍しいと思うよ?
いや問題はそこじゃ無い、髪の色だ何だの言う前に救急車を……。
「そんなこと関係無いわ! それにこの子、このままだと死んじゃうわよ!」
そうだそうだ……ってこの子?
明らかに俺が年上だと思うんだけど、この子呼ばわりって…いや、でも外人からしたら日本人の顔は幼く見えるって言うからな、そのせいか?
その時、女が俺を抱き抱えた。
えっ? お姉さん、力強くないですか?
そこで俺は驚愕した。
抱き抱えられたことで周囲を見渡すことが出来たのだが、ここはどこだ?
足元はコンクリートの道ではなく舗装もされてない剥き出しの地面、雨のせいで遠くまでは見えないが周りにある家屋は全てログハウスの様な木造のもの。
待てよ……何だよ、これ……?
思考が追い付かない、だってついさっき俺は仕事から帰っててトラックに突っ込まれて……。
混乱しながら視線を落とす。
そこで俺は意識を失った。
余りのことに脳が限界を迎えたんだと思う。
なぜなら視線を落として目に写った俺の体は……
生まれたばかりの、赤ん坊の体だったのだから。