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第八話『完璧であるが故に』byウタガメ

はい、どうも無駄に哀愁のある背中です。今回はウタガメさんという方に書いていただきました!

「じゃあ、また今度ね! 楽しみにしてます(^_^)」

 液晶に映る、無機質な記号で描かれた微笑みの表情を見て、そして目をそらしてため息をついた。

 画面の右上に、申し訳程度に表示された時計を見ると、そろそろ次の教室への移動に焦りを要する頃合いを示している。渋々重い腰を上げて、歩き出した。私しか居ない心地よい空間が、再び誰も居ない寂しい空間になっていくのを、背中に感じながら。立ち入り禁止の札の後ろで、さっきまで気持ちよく吹いていた屋上の風が、今度は悲しげにひゅう、と吹いていく……。

 私のことを、知り合いはこう呼ぶ。

「容姿端麗」「成績優秀」「良家のご令嬢にして、完璧な女性」「皆の憧れ」

 ……何もかも、まるで「宮野美葵」というブランドの商標のよう。私の外側ばかりを他人は見る、誰もが。

「宮野さんって凄いよね!綺麗だし、成績もいいし、性格も良くてさ…」

「そうそう、偉そうじゃないし、優しいしねー…」

"そうさせられている"、"そうしなければいけない"だからそんな風に私が見えてるだけ。あと、"そうする方法を知っている"、皆が知らないだけで。

「名家の一人娘」は「誰よりも優れ」、「憧れられて、羨まれて当然」。「そのプライドを持てないなら」、私は「宮野」ではいられないの。

「生きていけない」んだ。

 誰か、それを分かって私を見る奴がいるのか。それを知って、憧れる奴がいるのか?

 ちくしょう、ちくしょう。

「……で、目一杯反抗した結果がこのザマ、かぁ……。……ちくしょう、私の馬鹿……」

 ほんと、安請け合いしてしまったさっきの自分をぶっ叩きたい。誰も居ない、というか本当は入っちゃいけない階段を下りながら、片手で頭をがしがしと掻く。監視カメラの位置をそっと避けながら、やがて二つ目の立ち入り禁止を潜り抜けて、ここからはポーカーフェイス。いつもの「宮野美葵」を組み立てて、教室に向かっていく。でも、心のなかは変わらない。さっきまた自分で作り上げてしまった悩みの種のことを、ぐるぐると考える。

「ひなたさんおはよ~!」

「……優子ちゃんおはよ~」

 危ない、一瞬返事か遅かった……けど、考え事はバレなかったらしい。心のなかに冷や汗が流れる。……仕方ない、止めよう。今は外聞に集中しなきゃ。

 でないと、この大切な機会を無駄にしてしまう。

 ……お酒の勢いで初めて素直に、私の本心のままに話した。ミスをしたと思ったそれに、下心もなく、ただ純粋に応えてくれた、七海さん。七海、慶さん。

 ……嬉しかったんだ。だから、もっと話してみたい。もっと、彼を知ってみたい。

 大学の屋上以外で、私が私で居られる場所を、彼は、知っているかもしれないから。

 ……だから、まずは今日を乗りきろう。

 そして考えなきゃ。

 ……お父様をもう一度出し抜く、その手だてを。

 そして私は、教室の前で少し、誰にも分からないように笑った。私ってやっぱり子供だな、って。

 もう幾度となく失敗してきたのに、また可能性を求めて身内を騙そうだなんて。

 だからこそお父様は私を、そのたびにもっともっと監視するって言うのにね。

個人的にはキターと思ってました。新たな書き方、私たちとはまた違うタッチで書いていただきました。これこそ、リレー小説の醍醐味! あと、この書き方が好きです(笑) 描写表現が綺麗なばよりん弾きさんや近現代文学的な書き方の粗大さん、キッチリとした書式を持ち会話がうまい鯉さん、裏を描くのがうまい猿さん、全員の書き方好きですが、この書き方も好きですね(笑)

さて、あとがきが長くなってしまいましたが、最終回ではないです。次は私なので頑張らなくては(笑)

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