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第十六話『運命の交差点』by適度に自信のある腹

 七海が宮野とデートして以来、七海からは連絡がほとんどなかった。きっとうまくいっていれば、俺につぎはどうするのか連絡してくると思うがそれがないところを見ると、失敗したように見える。まあ、俺以外にも相談に乗ってくれる相手がいれば、連絡が来ないのも頷けるがアイツとの会話でそれらしき人物は出てきたことがないから、おそらく大失敗したのだろう。

 今晩は快晴なのか、星空が綺麗だ。九月の北西の空にアンタレスを含むさそり座が見える。部屋の窓付近に置いてある高性能のニュートン式望遠鏡を使えば、アンタレスが鈍く赤く光っているように見えるきがする。

「今夜は星空が綺麗ですね」

「池坊か」

 池坊は洗濯物を取りに俺の部屋に入ってきた。

「今日は何が見えますか?」

「少しだけ、さそり座が見える」

「亨様は本当に星が好きですね。そういえば、あのお話聞きましたか?」

「あの話?」

「はい、宮野美葵様のことです」

 宮野か……ちょうど七海から報告がなかったからな。なんなのだろうか?

「どうやら、宮野様に付きまとっていた男性がいたようで、大学以外の用事で外出することが許されなくなったそうです」

 明らかに七海が失敗したこと指していた。俺個人としては、宮野が七海と恋に落ちてどうこうになれば、親父の命令を無視した形ではなく、自分の道を進めると考えていた。でも、その淡い希望も絶たれたようだ。やっぱり、七海と宮野は釣り合わなかったってことか。

 俺は宮野のお見合い写真を手に取って見た。その写真の微笑みは俺には作り笑いであると確信はあったがやはり綺麗だった。

「なあ、池坊」

「なんでしょうか?」

「この女はどう思う?」

「先日もお答えした通りです。顔もお綺麗ですし、お嬢様というお話も聴いております。私からすれば素晴らしい花嫁であると思いますよ」

「それは俺もわかっている。質問を変えよう、この女と結婚して俺は幸せになれると思うか?」

 池坊は畳んだ洗濯物を一度置くと、悩んだ様子だった。

「……それは難しい質問ですね。長年生きておりますと、人によって幸せが違うと感じることが多々あります」

「例えば?」

「私は娘がおります。娘は今は二児の母ですが、夫はおりません。傍から見れば、二児を抱えた不幸な未亡人と言ったとこでありましょうか? でも、本人の口からはいつも子供との楽しいエピソードばかり、娘は幸せだと言っております」

「……」

「逆に満たされるぬ人にもあったことがあります。昔、旦那様の会社の取引先の社長だったのですが、何でも失敗をしたことがない優秀な人らしく、何をやっても満たされていて何をしてつまらないと言っておりました。最期には旦那様に会社を受け渡し、自ら命を絶ったそうです」

「そんなこともあるのか……」

「いやはや、少し語ってしまいましたな、失礼しました」

 池坊は置いた洗濯物をもう一度持ち上げると、出ていこうとした。ドアの近くに着くと思い出したかのように言った。

「少なくとも、亨様はご優秀ですし商才もございます、これはお世辞ではありません。それでいて、美人の奥様をめとり、優秀な大学を卒業し、宮野様の企業と八木グループの総帥になる、はっきり言って私めから見ても幸福な人生に見えます」

「俺は高望みをしているのか?」

「いいえ、先ほど申した通り、人によって幸せは違います。しかし、亨様と宮野様の結婚は旦那様も奥様、並びに両企業関係者がご祝福すると思いますよ。また、もしも幸福だと感じれない時は感じる術を手に入れればいいのではと私めは思います。では、失礼」

 池坊は部屋から出て行った。『人によって幸せは違うか』か……。『幸せを感じる術』か……。すると、思った。もう俺と宮野が結婚することは避けられないだろう。だったら、俺なりに楽しめるようにすればいいじゃないか。宮野も俺も楽しく感じれるようにすればいいじゃないか!

「池坊! 車を回してくれ、宮野家に行く。あと、向こうの家にも行くと伝えてくれ」


     ○

 緑の色の光が見えてきた。いつも公衆電話だった。美葵さんの顔が出てくる。電話に向かって小走りになった。その時、隣を黒いいかにも高級車が通り過ぎた。少し反応が遅れていたら、接触していたかもしれない。危ないなーと思ったが、車を目で追ったときは随分と遠くに行ってしまっていた。

 公衆電話の中は少し湿気があり、ちょっと暑かった。電話をすることが多くなったから、と買ったテレフォンカードを入れて、もう覚えてしまった彼女の携帯の電話番号を打ち込む。

 トゥルルル、トゥルルル、ガチャ。

「もしもし」

『おかけになった電話番号は現在電源が入っていないか、電波の届かないところにいるため、かかりませんピーという発信音の後にメッセージを入れてください』

 なぜだろう。電話が掛らないのは……もしかしてなにかあったのか!? そう心配し出したら、受話器を戻して、彼女の家に向かい歩き始めてしまった。

美葵との運命を作り出す七海慶、親の作った運命に抗う宮野美葵、自分の運命を受け入れて考え方を変えた八木亨。

運命はどこにあるのだろうかーw

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