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第十三話『月夜に光る蜘蛛の巣』by適度に自信のある腹

投稿遅れて、すみません! 内部でゴタゴタがあった結果、更に少人数でリレー小説をすることになりました!

 僕はストーカー気質なのかもしれない、それとも先輩や八木に影響されているのかもしれない。バイト先で先輩ごときに諭された後、家に帰り父親の冷やかしを無視した僕はメールを彼女に打っていた。文面を要約すれば、『会いたい』ただその一言に尽きた。でも、非常なことにメールは届かず受信拒否がされていることがわかった。これが彼女の意思なのか、彼女の父の知恵なのかはわからない。でも、僕は止まりたくなかった。僕はこの最初のまともな恋愛をちゃんとした失恋という形でもいいから、きっちりとカタをつけたかった。

 僕は脱いでいた靴下を履き直して上着も着て、玄関に向かった。靴を履いていると、母親が話しけてきた。

「ちょっと慶、どこに行くの?」

「…………」

「慶、よくわからんが急ぎのようなんだろ? 母さん、行かせてやりなさい」

 父は母を説得した。

「慶、あなたの分まで夕飯は作らないからね。それと今日中に帰ってきなさいよ。あと、雨が降るかも知れないから傘を持っていきなさい」

僕は頷くと、玄関にあった傘を掴んで外に出かけた。


     ○

 私はやっぱりみんなの思う『宮野美葵』でしかなかった。私自身などどこにもない。本当の私とか言ってたけど、おそらくお父様の望む私しかないだと思う。結局、家に帰ると怒られた。携帯も一時的に取られて、返ってきた時には彼のアドレスと番号から受信と着信が受け取れない設定になっていた。返す時に友達の家に行くような遊びもこの一ヶ月間は許さないとまで言われた。お父様が私を心配するのはわかる。私は確かに世間知らずだ。よくわからない男に騙されて、変な道に行きかねないくらい、私は世界を知らない。でも、七海さんはそんなじゃない……でも、私がいくらそう思っても彼以外誰ももう一人の私……いや本当の『宮野美葵』がいると信じてくれる人はいない。私はベッドに寝そべり、ただただ彼を思った。右に振り向くと、アルバムが置いてあった。中には私の結婚相手のお見合い写真がある。アルバムを手に取り、開いた。中にはシュッとした少しだけかっこいい男性の写真のアップと全体写真。どこかの大企業の御曹司らしい。私は思った。

(私はこの人と結婚して、何不自由なく生活して、そして死んでいく。これが私の人生なんだ。これが誰もが羨む『宮野美葵』の人生なんだ)

 そう思うとこらえていた涙がポロポロ落ちた。涙が止まらなかった。私はどこにいるの? 私の幸せってなんなの? その時、電話が鳴った。一瞬、彼だと思ったが、彼の電話は通じないことを思い出して、また落ち込んだ。私が携帯を手に取ると、そこには『コウシュウデンワ』と書いてあった。私は恐る恐る電話に出た。


     ○

 昼間の彼女と会った時とは空は表情を既に変えていて、月明かりと街頭の光しかなかった。外に勢いよく飛び出したものの、行く場所はない。彼女の家の住所は知らないし……仕方なく僕は彼女と初めてあった日に別れてしまった公園に向かった。

 公園はあの日同様に電灯が寂しく光っている。あの日とは違うのはその電灯の下にある蜘蛛の巣は雨粒がなく、ただ黄金色に光っている。僕はあの日と同じようにベンチに座った。通じるはずのない電話を握り締めて、脳みそをただただフル回転させた。どうしたら彼女と再会ができるんだ……どうすれば……。頭がパンクしかけて、僕は周りを見渡した。すると、公園のトイレの後ろの道の方から緑色の光が微かに見えた。まさかと思って行くと、公衆電話がそこにはあったのだ。僕は迷わず入った。

 財布を覗くと、十円玉はなかった。でも、僕はすぐに百円玉を入れた。迷いなんてなかった。

 トゥルルル、トゥルルル

 受話器から音が聞こえる。頼む出てくれと念じながら、待っていると、ガチャっという音が聞こえた。俺がなにかが切れたように言った。

「もしもし?」


     ○

 コウシュウデンワからの着信は怖かったが、落ち込んでいる私にとって怖くても別に良かった。この電話が今の気持ちを少しでも晴らしてくれるかもしれないと思って出た。

『もしもし?』

「え……誰ですか?」

『あ、繋がった。よかった。僕です、七海慶です』

「え!? 七海さん!?」

 もしもしの声では確信が持てなかったけど、その声は確かに七海さんだった。あまりにも嬉しくて声が出すぎてしまった。

「おい、美葵、電話でもしてるのか!」

 お父様の声がドア越しに聞こえた。私は答えた。

「ちょっと物が落ちてきてビックリしただけです。ごめんなさい、お父様」

「そ、そうか」

 私は部屋のドアを内側からゆっくり締めると、部屋の中のウォークインクローゼットの中に入って、小声で電話に出た。

『ごめん、いま取り込み中だった?』

「いや、なんでもないです。ごめんなさい、今日は。ごめんね……ごめん」

『大丈夫だよ。よかった、元気そうで』

「あの、電話とかくれてたりしてた? 実はお父さんに」

『大丈夫、なんとなくわかるから』

「あの、それで……」

『あ、そうだね。要件を言ってなかった……。状況的に辛いのはわかる、でも伝えたいんだ。どうしても君に会いたい』

「今どこにいますか?」

『初めてあった日にサヨナラした公園の近くの公衆電話から電話をかけてる』

 私は驚きのあまりウォークインクローゼットから飛び出して、窓を開けた。すると、その公衆電話らしきものが見えた。更に中に人が見える。思わず、手を振ってしまった。

「ねぇ、その公衆電話から私の家が見える?」

『え、ここから見えるの?』

「無駄に大きい家の三階! 電気が点いてて、開いてる窓があるから、私からは見える!」

『えっマジか!』

 彼がこちらを向いたのがわかった。


     ○

 彼女の家がそんなそばにあったのかと驚いた。

「えっマジか! あっ、今手を振ってる?」

『う、うん、手を振ってる』

 彼女の声が少し泣き声だった。

「どうしたの?」

『もう会えないと思ってた。もうずっとこのままだって思ってた。でも、私は奇跡的にあなたと繋がれてる。ホントに嬉しくて……』

 彼女はそこからずっと話してくれた、自分のことを。彼女は某企業の社長令嬢らしく、ずっと大事に大事に育てられてきたらしい。いわゆる、箱入り娘ってやつだなって思った。彼女のお父さんは彼女のお母さんと大恋愛を経て結婚するが、彼女のお母さんの家が少し貧しかったのと彼女のお母さん自身が宮野家の環境に会わず、追い出されるように離婚したらしい。それ以来、彼女のお父さんは彼女をより一層大事にするようになり、拘束も酷くなったらしい。彼女もたった一人の親やその祖父母に応えるため、理想の娘像を作っていた。でも、もう疲れてしまったらしい。

『でも、あなたは私の外面じゃなくて、内面を見てくれた、だから嬉しくて傷ついて欲しくなくて、でも、近づきたくて』

「ありがとう、そんなに言ってもらえるなんて本当に嬉しい。打ち明けてくれてありがとう」

『私こそ、ありがとうというべきなの。こんなことを聞いてくれて。でもね、もう無理みたい。お父さんは私の電話帳で男の子の名前はその許嫁以外消したし、あなたに至っては拒否登録されてしまったもの』

「そうなのか……」

『更にね、私はこれから一ヶ月遊びは禁止だし、それ以降もどっか行くたびに使用人を一人付けるって言われてしまって』

「…………」

『私はやっぱりカゴの中の鳥みたい……だから、私のことを大事に思うのは止めて。私のことは気にせず、あなたの人生を謳歌して。私はお父さんの思う『宮野美葵』として生きていくわ。でも、私自身が思う本当の『宮野美葵』はあなたの中で生きていきたいから、忘れないではいてほしいの、ワガママだけど……』

 言葉が詰まる。何も言えない。でも、心には一つの「感情」だけがあった。僕はそれをただ言った。

「嫌だ」

『え?』

「君のワガママは聞けない。どんなに困難があっても、僕が満足いくように断られないと僕が進めない。そんな親の気持ちを汲んだ不本意な君の気持ちで振られても嫌だ。君が望むなら毎日のようにここに来て君と電話をするよ。君が望むなら、君の家に不法侵入して捕まったっていい。僕はもう君から逃げないって決めたんだ」

 少しの沈黙があった。

『ウワーン』

 電話の向こうから大きな泣き声が聞こえた。

「大丈夫?」

『大丈夫。嬉しくて嬉しくて。でも、私はあなたに捕まってほしくはない。だから、またこういうふうな形でもいいから会いたい! 話したい! お願い』

「いいよ、また来るよ! あれだったら、新しくメールアドレス作るよ。女性的なアドレス。それでも、通信できるようにさ」

『ありがとう』

「じゃあ、そろそろ切るね。君の部屋の隣の窓の電気が点いた。誰か来るんじゃないかな?」

『わかった。じゃあ、切るね!』

「また、電気がついてるときに電話する」

『あ、待って。あの、これからが美葵って呼んで欲しいの』

「……わかった。じゃあ、俺も慶でお願い」

『うん! じゃあ』

ガチャ、ツー、ツー。

 電話は切れた。彼女の部屋の窓は締められた。その後、ちょっとしたら電気が消えた。彼女は寝る体勢に入ったみたいだ。俺も家路に着くことにした。


     ○

「うん! じゃあ」

 電話を切った直後、ノックの音が聞こえた。

「美葵様、大丈夫ですか? 泣き声が聞こえましたが、それにドアにロックがかかっていますし」

 ドア越しに使用人の声が聞こえる。

「あ、大丈夫よ。着替え中に窓から虫が入ってきただけ。もう出て行ったし、窓も締めたし。もう寝るわ。心配ありがとう」

「そうでしたか」

 私は電気を消して、寝ることにした。私は彼のことが……大好きになっていた。更にさり気なく途中から敬語を使わずに話せるようになっていることに距離が近づいたことを感じて嬉しかった。電話前の絶望ではなく、希望に満ちたまま、私は眠りに入った。


     ○

 腕時計を見ると、時間がかなり経っていた。アスファルトが濡れていることから、例によって雨が降ったのだろう。家に帰ると決めたが、先ほどの公園が気になった。時間帯も天候的な状況もほぼ同じ。あの日あの時、僕は彼女に連絡先を聞いて、一歩踏み出した。飲み会から一ヶ月経ってない程度なのに、本当にいろんなことがあった気がする。実際に起こったことは二つや三つなのだが、心的な変化が忙しかった。

 ベンチは濡れてしまっているようなので、僕は立ったままあの日のように、蜘蛛の巣を見上げていた。すると、電灯はチカチカしだした。何事だろうと思ったら、そのまま電気は消えてしまった。周りの街頭の電気が消えていないところから、電球か蛍光灯かが寿命が来たのだろう。真っ暗になったはずの公園だったが、少しだけ明るかった。

 蜘蛛の巣とは言うと、また水滴を持ちその水滴が輝いている。なんの光で光っているのだろうかと思うと……それは……『月灯り』だった。

「ロミオとジュリエット」なのか「ローマの休日」なのか、もう自分の描いていた原型がない(笑)

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