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9.異世界人はクラーケンたこ焼きの夢を見るか?

本日はまとめて2本更新しています。

コレは1話目。

「とーちゃん、昨日NHK見てた?」


「ん?なんか面白そうなんやってたっけ?」


「ダイオウイカのやつ再放送してたやん」


「あーアレか」



 先日、NHKやディスカバリーチャンネルなどの国際チームが世界で初めて生きて動いているダイオウイカの映像を捉え、テレビでも特集番組が放映された事は記憶に新しい。

 個人的に元々魚介類や深海生物などに興味があった為、放映前からしっかりチェックして楽しみにしていたのだが、世間的には所詮マイナーだろうと思っていた。

 が、思いの外この番組は多くの人に注目されていたようで、いざ放送当日になってみるとTwitterのタイムライン上にはイカ・イカ・イカの文字が踊っていて、トレンドワードにもしっかりランキング入りしたのには驚かされた。

 実際のとこ、普段はこういった事にまるで興味がなさそうな人達も大勢見ていたんじゃないだろうか?

日本人には食材として昔から馴染みが深い〝イカ〟がテーマだったからこそなのかも知れない。例えば、もしこれが同じ深海動物だったとしても〝ダイオウグソクムシ〟とか〝ロオバケ〟なんかの番組だったとしたら、やはり見る人を選んでいたような気がする。



「にしてもさ。あんだけデカかったらお刺身何人前くらいとれるんやろなー?」


「……言うとくけど、アレめっちゃ不味いぞ?」


「ええっ!?マジ? ってか、とーちゃんアレ食った事あんの!?」


「昔食った事がある。てか、食おうとしたけど臭いが酷すぎて口に入れた瞬間吐いたってのが正解。」


「うわっ!とーちゃんて何でも食ってんねんなぁ」



 鶏皮家の父が以前住んでいた近所の魚屋には、時々おかしなモノが店頭に置かれていた。

おそらくは客寄せの為だろうとは思うのだが、名前すらよくわからない深海魚だの、ハンマーヘッドシャークなどのゲテモノに1000万円とか1億などととんでもない値段の札が掛けられて並べられているのだ。

 と言っても、掲げられた高額の札はあくまでジョークだったようで、「欲しい」とさえ言えば、大抵はタダ同然で譲ってもらう事が出来た。


 件のダイオウイカもたまたま漁師の網にかかったものだったらしく、足を切り落とした胴体部分だけがぐるぐるとラップで何重にも巻かれドカンと店先に鎮座していて、物凄い存在感(と異臭を)放っていたのを覚えている。

 もちろんこんな巨大なイカを見たのは初めての事で、面白半分でさっそく店主に交渉して5cmほど輪切りにしてもらったものを試しに焼いてバター醤油で食べてみたのだが、どうしようもないくらいアンモニア臭が酷く、口に含むとピリピリとした苦味の塩辛さでとてもじゃないが食えたものでは無かった。

 当時はてっきり水揚げされてから時間が経った為に傷んでこんな事になってしまったのだろうと思っていたのだが、調べてみるとこのイカは新鮮な状態でもほとんど似たようなもので、食用には全く適さないのだそうだ。


 イカやタコなどの頭足類は太古の昔から長い期間生態系の頂点に君臨していたので汽水~淡水域に逃げ込む必要が無かった。その為に浸透圧調整機能があまり発達しておらず、魚類と違って体内に浮き袋を持っていない。体組織に塩化アンモニウムを蓄積させて比重を海水と出来るだけ近づける事によって浮力を得ているのだ。

 全身が塩化アンモニウムまみれの生物……そりゃ不味くて当然だろう。




「へぇー、でもダイオウイカってさ。伝説の海の怪物クラーケンのモデルって言われてるんやろ?

よく漫画とかファンタジー小説では戦ったクラーケンの足をチョン切ってタコ焼きにしたりとかしてるやん? けど、アレって実際にはやっぱ不味くて食べられへんって事なんかな?」


「うーん。どうやろな?そもそもクラーケンってタコかイカかはっきりしてへんやん。クラーケンがイカやったら、そもそもタコ焼きは成り立たへん気がするし。輪切りにして焼いて食べるとかやったらまだわからんでも無いけど。まぁどっちかって言うと、まだタコの方がイカよりもアンモニア臭はマシな気がするから、クラーケンがタコやったとしたら、もしかすると可能かも知れへんで?」




 塩化アンモニウムの濃度というのはサイズが巨大になればなるほど濃くなると何かで読んだ事がある。

あの時口にしたダイオウイカは、デカいと言ってもせいぜい50cmくらいの大きさだったので、種としては小型の部類だったのかも知れない。という事は、クラーケンクラスの大物ともなるとさらに酷い悪臭とピリピリしたエグみを持っているのかも?

 その後、同じくらい巨大なソデイカやミズダコも食べる機会があったのだが、その時は単に「硬くて大味だなー」と思った程度で、そこまで臭いやエグみは感じられなかった。専門家ではないので詳しい事まではわからないが、体内塩化アンモニウム濃度(というか味?)は、サイズだけではなく種族特性に拠るところも大きいのかも知れない。



「にしてもさ。日本人って喜んでイカとかタコとか食べるし、ああいう大きいイカ見たらまず最初は美味いんかな?って思ってまうけど、外国の人ってそういうのあんまり聞かへんよな?

そもそもとーちゃんがここんとこ作ってくれてる外国料理もなんか全体的に肉が多いさー。 毎週変わった料理が食べられて面白いけど、あんまり続くと胃がもたれてくるし。

なんかもっとこうアッサリしたもんが食べたくなってこーへん?そもそも外国の人ってあんまり魚介類食べはらへんの?」


「魚料理かぁ。そう言われてみれば、ここんとこあんまし作ってへんかったなぁ」



 そうなのだ。実際にこの企画を始めて様々な国の食文化を調べるようになってみてわかったのだが、意外にも魚介の類を()()食べない文化を持った国(地方)は多い。

 そして、魚介類を食べる文化を持っていたとしても、実際のところ食べてられている魚の種類が極端に偏っている国も多かったりする。北欧系では鮭、鱒、ニシン(加工されたものがほとんど)、イギリスではタラなどの白身魚、地中海方面でようやくマグロや鯉系の魚類の名前がチラホラ目につく程度で、その他の国々にしても食べられているのと言ったらスズキ系かナマズ系などの白身魚がほとんどで、鯖や秋刀魚などの青魚にいたっては大抵の国で嫌われていて見向きもされない事が多いようだ。

〝魚〟という枠組を越え、イカやタコなどの軟体動物を食べている国に的を絞ってみると、さらにその数は少なくなる。特にヨーロッパ周辺ではユダヤ教の教義(鱗が無い魚類を食べる事は禁忌とされている)の影響で、イカやタコの類は長い間〝悪魔の魚〟とみなされて来たという事が大きいのだろう。あのグロテスクな外見と独特の匂いも苦手意識を煽るのかも知れない。



 ++++



 さて、そんな訳でそろそろ料理の方に移りたいと思う。

今回はちょっと番外編的な扱いで特定の外国料理はなし。

「とにかくたまには思いっきり魚が食べたい!」という家族のリクエストで、当時ネットで話題になっていた〝魚えーっセット〟なるものを注文してみた。

 これは、山口県の漁港でその日水揚げされた魚をランダムに詰め込んだ福袋のようなもので、フタを開けてみるまでは何が入っているのかわからない。内容はその日の水揚げに拠って左右されるものの、トータル金額で考えればその辺の魚屋ではまず買えない量の魚が入って来るのが魅力だ。しかも調理する人の技術レベルや食べられない物については考慮してもらえるので、魚好きには堪らない。


この時注文したのは、「魚えーっセット【ウハウハ】」なるもの。

挿絵(By みてみん)


中身はスジガツオ、チヌ(黒鯛)、剣先イカが2杯、レンコ鯛が2匹、トビウオが2匹で3,980円だった。

(実はコレ注文したのが10月の話だったりするので、季節感なくて申し訳ない)



早速、剣先イカを捌いてイカそうめんを作ってみた。


挿絵(By みてみん)


所詮は素人なので包丁さばきも盛り付けもおぼつかない事この上ない。が、それでも素材が新鮮なおかげで美味しくいただく事が出来た。


挿絵(By みてみん)


連子鯛の方は、他の切り身の魚をプラスしてアクアパッツァに。

アクアパッツアは、魚介類(白身魚と貝類)とトマトやオリーブなどとともに白ワインと水で煮込むシンプルで簡単なイタリア料理だ。

熱々の魚に白ワインを注ぎ込むとジュワっと大量の湯気が上がってくる。それを封じ込めるようにフタをして煮込むのが美味いのだ。

魚介のエキスがたっぷり出て来るので魚を食べ終わった後のスープを取っておいて、翌日はパスタに絡めて食べるのも非常にうまい。



スジガツオは土佐造り(タタキ)にしてみた。


挿絵(By みてみん)


節にしたカツオを串に刺して炙り、氷水で〆る。


挿絵(By みてみん)


少し若いせいか身が柔らかかったのでうまく切れずにかなり崩れてしまったが、スダチと合わせると素材の味が引き立ち、日本酒によく合っていた。



 チヌ(黒鯛)も刺身で食べようか迷ったのだが、結局塩焼きにしてから鯛めしを炊くことにした。


挿絵(By みてみん)


チヌ(黒鯛)は季節によって少し臭みのある魚なのだが、日本酒を多めに入れて土鍋で炊き上げると臭みが消え、いい出汁が出るのでオススメの一品だ。



 最後はトビウオ。

トビウオはあっさりした白身が魅力的な魚なので、そのまま刺身にして食べても美味しいし、塩焼きもいい。

が、小骨が多い魚でもあるので、今回は子供でも骨を気にせず食べられるよう輪切りにして唐揚げにしてからイタリアン風にトマトソースを絡めて炒めてみた。


挿絵(By みてみん)




 ++++




「なー?とーちゃん」


「うーん?」


「この話のタイトル『異世界人はクラーケンたこ焼きの夢を見るか?』やのに、全然たこ焼きが出て来てへんねんけど?」


「うっ、そこはその…本文中にたこ焼きの話を書く余裕が無かったから、後書きで我が家のたこ焼きレシピを載っけるって事で。はい解決っ!」


「……ふーん」



レシピ詳細


●ホットプレートで簡単アクアパッツア


材料 ( 4~5人分 )

魚(何でもよい。切り身だと簡単) 好みの量で

ハマグリ 1パック

プチトマト 適量

オリーブ漬けスライス 全体に散らす程度

ケイパー 大さじ1

塩コショウ 少々

オリーブオイル 大さじ1

ローズマリー 4、5本

白ワイン カップ1/2

水 カップ1/2


使う魚は本当に何でもOK。今回は連子鯛でしたが、普段は鍋用の切り身魚セットなどでよく作ります。

1.ハマグリ、プチトマト→綺麗に洗う。魚→塩コショウしておく。

2.ホットプレートを熱し、オリーブオイルをひいて、魚を並べ焼いていく。(高温)

3.ある程度火が通ったら、ハマグリ、プチトマト、ケイパー、オリーブスライス、ローズマリーを加える。

4.白ワインと水を回しかけてフタをし、しばらく蒸し焼きにする。



●土鍋でドカンと鯛めし


材料 ( 4合分 )

鯛の塩焼き 1尾

米 4合

だし昆布 1切れ

酒 大さじ4

しょうゆ 大さじ2

だしの素 大さじ2

■ 炊き込み用具材

きのこ(しいたけ・えのき・まいたけ) 適量

人参 1/3本

砂糖 大さじ1

しょうゆ 大さじ1

だし汁 1カップ



1.炊き込み用の具材を食べやすい大きさに切り、小鍋でだし汁、砂糖、しょうゆと共にさっと煮立たせ味をしみ込ませる。

2.米、昆布、1の炊き込み具材と鯛の塩焼きを土鍋に入れる。

3.酒、しょうゆ、だしの素をプラスした状態でカップ4杯になるよう水を入れる。

4.フタを閉めて強火に掛け、沸騰したら中火に落として10分→弱火で10分。

5.火を止めたらそのまま10分くらい蒸らす。

6.皮と小骨を取り除き、身をほぐして混ぜれば完成。



●トビウオの唐揚げトマトソース炒め


材料 ( 4~5人前 )

とびうお 2匹

からあげ粉 適量

トマト缶 (カット) 1/2缶

玉ねぎ 小1個

ナス 1本

パプリカ・ピーマン 適量

マッシュルーム 5個

塩こしょう 少々


1.野菜類⇒食べやすい大きさに切っておく。トビウオは輪切りにし、ワタを取って唐揚げ粉をまぶす。

2.油で1をカラッと揚げる。

3.フライパンにオリーブオイル(分量外)を熱し、野菜類とトマトソースを炒め、塩こしょうで味を整える。

4.トビウオの唐揚げを入れて、トマトソースを絡めたら完成。



●鶏皮家のたこ焼き


挿絵(By みてみん)



材料(40個分)

■生地

薄力粉 140g

スキムミルク 大さじ1

ベーキングパウダー 小さじ1

砂糖 小さじ1半

醤油 小さじ2

塩 少々

だし汁 300ml

卵 2個

■具

ゆでだこ 1パック

てんかす 適量

紅しょうが 適量

きざみネギ 適量


1.たこは1cm角に切っておく。

2.生地は先に粉類をはかってふるっておき、卵を入れた後、少しづつ出汁を加えて綺麗に混ぜ合わせる。

3.たこ焼き器はよく熱して油を敷いておく。

4.たこ焼き器に生地を流し込み(1個1個確実に)たこ、その他の具を入れていく。

5.穴のふちのたこ焼きの生地の色が変わってきたら、はりでたこ焼きを丸く回しながらひっくり返す。はみだしている生地や具はたこ焼きの中へはりで押し込んでおく。

6.隣の穴のたこ焼きの生地と繋がっている場合はら、はりを穴に沿って丸く回して切り離してひっくり返す。

7.まんべんなくきつね色に焼けたら出来上がり。

8.たこ焼きソース、かつお節、青のり、マヨネーズなどお好みのものを掛けてどうぞ。

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