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5.混沌のスーダン

「パラリリラリラリーパーリラーリーラー♪ スーダン共和国。

〝スーダン〟の名称はアラビア語の〝ビラード=アッスーダーン(黒人の国)〟が語源で、サハラ砂漠の南の草原サバンナ地帯をあらわす総称として使われて来ました。

1954年に独立するまではエジプトとイギリスの両国による共同統治下に置かれており、南北を分けて統治する〝分断統治システム〟が採られていました。

東部は、〝アフリカのパン篭〟とも言われる肥沃なナイル川周辺の農地を使っての小麦、トウモロコシの栽培が盛んで、南部には石油やダイヤモンド、レアメタルなど豊富な鉱物資源が眠っています。」

(注釈:このデータは2011年以前のものです。)


挿絵(By みてみん)



 ++++


 現在、鶏皮家の父は固まっていた。


「ス……スーダンだとっ!?」


 ランダムに地球儀を使って国を選び、夕飯にはその国で食べられている料理を作る。などという無茶振り企画が鶏皮家で始まって既にこの日で5回目。

全く難が無かったかと聞かれればそう言う訳でもないのだが、それでもここまではインターネットや各種書籍などを漁る事で何とかなっていた。

「お?ひょっとして意外とこの企画ってチョロいんとちゃう? てか、どこの国の料理にも対応できる俺様ちょっとすごくね?」……などと思っていた事がワタクシにもありました。

なんという勘違い。おそロシア。調子に乗りすぎてました。ハイ



……そして今、


「で、とーちゃん、スーダンってどんな国なん?」


「…………。」


 やべぇ。我が子に聞かれてもサッパリわかんねぇyo! 助けて!google先生っ!!



 ++++



 少し調べてみて驚いた。

手持ちの地球儀とネット上で見た最新の地図で既に全然国の形が違うのである。

なんとスーダンは昨年の7月に南部の自治領が分離独立してスーダン共和国と、南スーダン共和国という2つの国に分かれていたのだ。

おそらくニュース等で流れていたのだろうが、恥ずかしながら全く知らなかった。


 スーダンは19世紀にエジプトの支配下に入って以来、長きに渡って搾取されて来た。

イスラムの法では奴隷に出来るのは異教徒だけという事になっているのだが、実際には黒人イスラム教徒も誘拐され奴隷化されるのが日常化していたらしい。

 世界史で習う奴隷貿易は、黒人奴隷(主に内戦の敗者である部族が別の部族の手によって売りつけられた)が西アフリカの港からイギリス人やフランス人などのヨーロッパ人の手によって大西洋を横断する奴隷船に乗せられ、新大陸アメリカでサトウキビ農園などのプランテーションの労働力として利用される内容だったと思う。

 だが、スーダンをはじめとする東アフリカの奴隷貿易を行っていたのはアラブ人で、彼らに奴隷にされた黒人は主にアラブ人の家内奴隷、つまり召使いや使用人(女性の場合はいわゆる性奴隷も)にされて来たのだそうだ。

 スーダンは侵略者であるエジプトにいわゆる聖戦ジハードで反乱を起こしたのだが、戦況が苦戦する中、どさくさにまぎれて英国軍が介入して来て植民地化されてしまった。

イギリスはスーダンの人々の不満を逸らす為、北部のイスラム教徒を厳しく管理する一方、南部のキリスト教徒を優遇するという〝分断統治システム〟を採用している。

その為、スーダン国内における南北間の対立感情が高まり、1956年に独立して以降も、内戦と軍事政権が続いている状態だったらしい。

 昨年ようやく南スーダンが独立した後も、内戦によって難民化した人達が40万人以上もいる状態で、乳児死亡率は10%以上、小学校を卒業できる子どもは20%以下というような現状が続いていて、「世界失敗国家ランキング」のワースト3位に輝いて(?)いるのだそうだ。(※2007年までは第1位だった)



……ううむ。

想像していた以上に混沌とした国に当たってしまった。

1日1回の食事ですら、学校給食によって賄わられているような子供達がたくさんいる国で食べられているご飯って一体……。



 ネットで検索してみると、実際にスーダンで暮らしている方のブログが何件か見つかった。

彼らの記事を読んでみると、確かに政情は不安定ではあるのだろうが、さほど食事などには困っている様子は無いようだ。さすがに市街地と難民キャンプでは事情は違うらしい。

裕福な外国人だからという事もあるのだろうが。



 スーダンの人々の食生活パターンは日本や欧米のそれとは全く異なっている。

まず朝食は10~11時くらい。

昼食が4時頃(そして昼食後は昼寝)

夕食は9~10時頃。

 朝出かける前に紅茶やコーヒーを飲んで、ちょっとビスケットをつまむぐらいはあるらしい。

学校や職場でも一旦始業した後、途中で朝ごはん休憩が入るのだそうだ。

イスラム圏の為、男女別々に輪になって食べる。

とにかく暑い国なので、腹持ちの良い糖分や炭酸飲料、そして喉が渇く為にたくさんの水を採るらしい。

炭酸飲料と言えばコーラが有名だが、実はこのコーラ、スーダン原産のある成分が無くてはならない。

アラビアゴムという成分なのだが、コレが入っていないとコーラの成分が沈澱してしまい、透明なコーラになってしまうんだそうだ。

1990代に日本でも透明なコーラが発売されていたのを覚えているだろうか?アレは湾岸戦争の影響でスーダンとアメリカの関係が悪化していた為、アラビアゴムの入手が難しかったという経緯もあるのかも知れない。




 さて、そろそろスーダン料理の調理に移りたいと思う。今回はなかなかレシピを見つける事が出来ずに苦労した。



まず1品目は「コフタ」。

スーダン風のミートボール。挽肉を串に刺して焼いたものなのだが、トルコの「キョプテイ」、ルーマニアの「ミチティ」など、この辺り一体の国に似たような料理が結構ある。

つくづくイスラム文化が世界に与えた影響が大きい事を感じずにいられない。


 みじん切りにした玉ねぎとひき肉、塩こしょう、にんにくやコリアンダーなどのスパイス類を合わせて捏ねていく。

イスラム教徒が多い国なので本来ならば羊肉を使うのだが、手に入りにくいので牛か合いびきで代用する。

(イスラム教徒は豚肉を食べられないのでスーダンで合挽肉が使われる事はまずないと思うが)

混ぜ合わせたひき肉を食べやすいサイズの俵型に丸めていき、少量の油で揚げる。

油で熱せられると胃を刺激するスパイシーないい香りが漂って来て食欲をそそる。

 コフタには何種類か調理方法があって、種そのものにスパイス類をたっぷり入れしっかり味付けをしてシンプルに揚げただけの状態で出す場合と、カレー系やトマト系のソースで煮込んで出す場合などがある。


挿絵(By みてみん)


これはシンプルに揚げただけのもの。

にんにくやコリアンダー以外にもクミンやオレガノ、パプリカ、パセリ、ヨーグルトなどをたっぷり入れてしっかり味付けされていて、シンプルながらになかなかの美味だ。



挿絵(By みてみん)


こちらはカレーソースで煮込んだもの。ソースは本格的にスパイスから作ってもいいし、市販のレトルトのインドカレーなどを使ってもいい。洋風の煮込みハンバーグなどとはまた違った風味でクセになる味だ。




 2品目はオクラと鶏肉のスープ「ムラー・パムカ」。

スーダンではオクラは非常にポピュラーな食材で、現地での発音もそのまま「オクラ」。

鶏肉、オクラ、玉ねぎをコンソメベースにタイムやパセリ、セロリなどを加えて煮込んでいく。

オクラは本来すり潰したり、ドロドロになるまで煮込んだりする事の方が多いようだ。

やはりこちらも暑い国の料理らしく、食欲をそそるようたっぷりのスパイスで香り付けされている。


挿絵(By みてみん)



 デザートには「焼きバナナ」

コレはシンプルにフライパンでバターでソテーしたものにシナモンシュガーを掛けたものだが、バターと牛乳で煮詰めたレーズンをこの焼きバナナと一緒に小麦粉で作った生地で包んで食べるクレープのようなもの「ファティーラ」というデザートも人気があるらしい。


挿絵(By みてみん)



 ++++



「へぇー?とーちゃんスーダンの事調べながらうんうん唸ってたから、一体どんなトンデモ料理が出て来るんやろ?って内心ビクビクしてたけど、案外食べてみるとスーダンの料理って美味しいんやな」


「そやなぁ。実際にこういう料理が庶民の口に入っているのかどうかはわからんけども、本来やったら農地も資源も豊富なんやし、豊かになれるはずの国なんやと思うわ。」


「そっかぁ、でもどんな豊かな国でも戦争ばっかりやってたら農業とかも出来んくなるし、食べる物が無くなってしまうって事なんやなー」


  


 ところで、今回スーダンの事を色々と調べているうちに面白い子守唄に出会った。

歌詞を直訳すると「ねむれ、ねむれ、ねむれ、かわいい娘。古き良き心があなたにやどりますように。あなたの旦那様は、正直者で、お金も無いのでタクシーには絶対に乗りません」という内容になる。

 前半部分はまだいいとして、後半部分一体何?なぜにここでタクシーが出て来るんだよ!

と家族でしばらく爆笑していたのだが、よくよく考えてみればこの歌詞はスーダンの人々の民族性をよく表している歌詞なのかも知れない。

たくさんの財産を持ちタクシーなどを使って贅沢をする事よりも正直者で慎ましくある方が美徳とされているのだろう。 

レシピ詳細



●コフタ(スーダン風ミートボール)シンプル素揚げバージョン

材料 ( 4~5人分 )

牛ひき肉 500g

玉ねぎ(みじん切り) 中1個

コリアンダー 大さじ1強

塩こしょう 適量

卵 1個

にんにく(すりおろし) 1/2片分

パプリカパウダー 小さじ1

ドライパセリ 小さじ1

クミンシード 小さじ1

オレガノ 小さじ1

チリパウダー 小さじ1

ヨーグルト 大さじ1


1.ボウルに材料を入れ、よく混ぜ合わせる。

2.ミンチを大さじ1杯ほど手に取り手の平で転がしながら細長い俵型にし、串を刺す。

3.油を熱して5分ほど揚げる。

煮込む場合は、スパイスの種類を減らして、市販のカレーソースやパスタソースを使うと良い。



●ムラー・パムカ(オクラと鳥肉のスープ)

材料 ( 4~5人分 )

オクラ 8本

鶏むね肉 1枚

玉ねぎ(スライス) 1/2個

セロリ(みじん切り) 適量

トマト(小) 1個

固形スープの素 2個

水 800ml

塩こしょう 適量

タイム 適量

パセリ 適量



1.オクラ→乱切り、鶏肉→一口大、玉ねぎ→スライス、トマト→1cm角に切る。

2.鍋で玉ねぎとセロリ、鶏肉を炒め、水、コンソメを投入。

3.トマトとオクラを加え、煮込み塩こしょう、スパイス類で味を整える。


●焼きバナナ

材料 ( 4人分 )

バナナ 2本

バター 大さじ1

シナモンシュガー 適量


1.バナナをスライスする。

2.フライパンでバターを熱し、バナナをソテーする。

3.皿に盛り付け、シナモンシュガーを掛けたら完成。アイスなどを添えてどうぞ。

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