5.触れる
「空が青いなぁ」
ふと顔を上げて大和は呟いた。隣ではいつも通り、蓮がフードを被って音作りをしていた。今日は遊園地への校外遠足で、絶好の行楽日和だ。だが2人はアトラクションも乗らず、ベンチで顔を突き合わせて制作活動を続けていた。
胸元のプリント部分を触りながらスマホを打っている蓮を見て大和はクスリと笑う。
「気に入ってるね」
「まぁ、チームの証だし?」
フードを外してこちらをチラリと見た蓮が答えた。2人の着ているフーディーは大和がデザインして作ったものである。子どものときに音ゲーにハマって以来、蓮が音作り、大和がイラスト、MV担当で投稿をしている。蓮の作る音は心地よく、いつまでも聞いてられると大和は思う。
「早くパソコン買いてぇ」
「バイト代、なかなか溜まらないよね」
「大和の絵なら売れるだろうけど、そっちメインになっても困るしな」
蓮からの評価の高さに、大和は緩んだ口元を手の甲で隠した。それから誤魔化すように膝に挟んだポップコーンの箱に思いっきり手を突っ込む。蓮も被せるように手を伸ばしてポップコーンをとっていく。
そのまま曲とイラストのイメージ合わせをしていると、ふいに目の前に影が差した。
「お前ら、今日も2人っきりなの? 女子たちはどーしたんだよ」
クラスメイトの透が呆れたような顔をして大和たちを見下ろしていた。そういえば班行動だったと思い出す。大和がキョロキョロしていると、蓮が眉間に皺を寄せて透を睨んだ。
「うるせぇ。どっかその辺にいんだろ」
「こわー、ちゃんと班行動しろよ、もったいねぇ」
まったく怖がっている様子もなく、ニヤニヤしながら透は去っていった。
「ねぇ、蓮」
「なんだよ」
「女子たちどうしたんだろ? 全然会ってないよね?」
「——気になるのかよ?」
透と会ってからピリピリとした空気の蓮に慌てて答える。
「や、班行動だし。バラバラなままだとまずいんじゃない?」
「別に問題ない。用があったら向こうから連絡してくるだろ」
頭をガシガシとして目を逸らす蓮に、何か画策したな、と思うが黙っておく。大和だって蓮と作っている時間が一番楽しい。
「じゃ、ジェットコースターとぉ、コーヒーカップ、撮りに行こうよ」
「ああ、ロケ再開だな」
蓮が笑ってようやく空気が柔らかくなった。それから大和の顎に手をかけて、「ついてる」とポップコーンをはらう。まつ毛が案外長いんだな、なんて、どうでもいいことに気づいた。
透は「3.かわす」に出てきています。
同班の女子2人は「4.添える」の薫と奈美です。




