第56話 お嬢様誘拐事件4
貧民街の中心にある教会に少しお邪魔することにした。
「ちわーっす。お邪魔するっす。ちょっと疲れたんで座らせてもらうっすよ」
教会に入ると朝の礼拝はとっくに終わっているらしく人はまばらだ。
女神様の像の前にある寄付箱が硬貨でいっぱいになっている。
さらに入りきらない分が袋のまま脇に山積みになっている。
貧民街といっていたが結構景気良さそうだゴブ。
こっちの世界にも私財を投げうって恵まれない子供たちを面倒みる出来た人たちがいるもんだゴブ。
「うわっと。騎士様とゴブリンさんもこちらに来られてたんスね。今2回目の寄付を運び終わったところでさぁ。今は逃げていなくなった奴らの家をまわって残りの金をかき集めてますから。もう1回くらいは持ってこれると思うっス」
荷台車を押している2人組がペコペコとあいさつしながら教会から出て行った。
今度は怪しいフードをかぶった3人組がまた荷台車を引きながら入ってきた。
「これはこれは騎士様、ゴブリン様、先程は大変失礼いたしました。闇魔法ギルドとしましては今ある現金はこれだけしか無いのですが毎月月末には金貨200枚くらいづつはご寄付できると思いますので今日はこれでお許しいただけないかと」
「私ごとですが妻が身ごもっておりまして、今から別の町に行って一から裏稼業を始めるのはちょっと怒られそうでして・・・へへっ」
「おれも母ちゃんが病気で長旅は出来ないもんで・・・迷惑かけないんでもう少しこの町で稼がしてもらえないかな~と」
「あ~・・・。別にいいんじゃないっすか?」
ライアンの奴、全然興味ないな。椅子に横になって適当に返事している。
教会の奥の方からシスターさんと子供たちがわらわらと出てきた。
若いけど顔色と肌つやは良くないな・・・。すごく美人なのにもったいないゴブ。
ところどころ土で汚れていてカゴに少し野菜が入っている。
畑仕事でもしてきたのかな。
こんなにお金があるのに自給自足とはえらいゴブな~。
「えっ・・・何ですかこれ。金貨がこんなにたくさん・・・」
「わーい。シスター今日はお金がいっぱいある~。パン買ってきてもいい?」
「いやいや、おかしいだろ。普段は月に銀貨20枚もあればいい方なのに・・・寄付箱から溢れちゃってるじゃん、しかもほとんど金貨だし」
「とうとう私たちも死ぬ前に見るという幸せな幻が見えてしまいましたか・・・それほど飢えている自覚は無かったのですが死ぬ時はそんなものなのでしょうね・・・」
「えー、これホンモノだよー。いつものお金と色がちがうけどー」
祭壇の横で受付をしていた女の子が説明している。
「えーとね。さっきから見たことないおじさんたちがね。これで俺たちは許されるとか、ちゃんと寄付した名前を書き残せとか言ってね。いっぱいいーっぱいお金を持ってきてくれたよ」
「ねぇねぇシスター。パン買ってきていい?買ってきていい?」
「え、あー、そうね・・・パンどころか今日からお肉も食べられるかもしれません」
「ほんとー!やったー。お肉が食べられるかもだってー」
盛り上がっているところ悪いがこちらも用事があるゴブ。
ライアンがすくっと立ち上がってうやうやしくシスターに礼をした。
「失礼しています。シスター、このあたりで身なりの良いお嬢様など見かけませんでしたか。我が主の大事な娘さんなのです、何か小さな情報でもいただければ助かるのですが・・・(キリッ)」
誰だお前。キメ顔して、いつもの口調と全然違うゴブ。姿勢もピリッとしていてこれだとどこから見てもイケメン騎士みたいじゃないか。
「あ、あら。騎士様こんな貧民街の教会までようこそいらっしゃいました。こちらは孤児院も併設しておりまして子供たちが騒がしくてすみません」
「いえいえ、お若いのにご苦労されている様子。感服いたしました。お一人でこちらを経営されているのですか?よければ詳しくお話をお伺いしたいです」
何だ?さっきから気持ち悪い喋り方になっているゴブ。
いつもの軽薄でちゃらい雰囲気から大人の頼れる男性風にイメチェンしているゴブ。
「ゴブ~」(お前~シスターが美人だからってかっこつけるなゴブ~)
「はははっ。こいつはそのお嬢様のペットでして、今しがたご主人様を探してこの辺りを散策していたところなのです。今は少し休憩中ですが」
「まぁ、そうでしたの私ゴブリンを見るのは初めてですがけっこうかわいい顔をしているのですね。よろしくゴブリンさん、ご主人様が早く見つかるといいわね」
「ゴブ」(よろしくゴブ)
握手すると同時に回復を掛けてあげた。
苦労しててもけなげに頑張っている人は大好きゴブ。
淡い光に包まれるとさらに健康的な美人になったゴブな。
貴族のように化粧や着飾って美しくするのと違い、化粧もしていないのにきれいなのは天然モノの本物の美人ですな~。
「あら?ゴブリンさんも聖魔法が使えるなんて信仰心が厚いのですね。私も毎日祈っていますがスリ傷が治るくらいですのに。それに何だか胸がどきどきしています」
聖魔法の回復は少し士気高揚の効果があるからな~。
テンションが上がって戦闘力が底上げされるのだゴブ。
「騎士様・・・少しこみいったお話があるので奥の部屋へ案内いたします・・・」
「ええ、私の出来ることであれば。少し気分が落ち着かないご様子ですね。お手をどうぞ」
「ミセッティ様は子供たちと遊んで少し待っててくださいっす。シスターと大人同士の大事な話があるっす」
シスターとライアンは手を取り合って奥の方へ行ってしまった。
大人の話合いならしょうがないゴブ。
子供たちと一緒にお嬢様を探しに行くか・・・
「シスター何か久しぶりに嬉しそうだったな」
「バカ!そういうのは分かってても黙っててあげるのが紳士なんだから!これだから男ってダメねぇ」
「間違ってもしばらくシスターの部屋に行っちゃだめだからね!」
「はぁ?悪いこともしてないのにあの説教部屋にわざわざ行くわけねーだろ」
年長組の男子1人と女子2人が何か言ってるゴブ。
「ねぇねぇゴブリンさん、何して遊ぶ~?」
「そりゃ~、勇者ごっこか魔物退治ごっこだろ~」
こっちは5,6歳ぐらいの子供たち5人がわらわらと集まってきた。
「ゴブ~!」(どっちもわたしが標的じゃないかゴブ!いじめ、ダメ、ゼッタイ)
「あはは!いじめはダメだって。おもしろーい」
んん?言葉が何となく伝わっている子がいるぞ。
[簡易鑑定]
テイマー レベル1(仲が良くなった魔物の意思が分かる)
おおっ。ここで本物のテイマーが!
まだ5歳くらいか?栄養状態が悪そうだからもう少し年上かな?
なんちゃってテイマーのお嬢様に会わしたいゴブ。




