第36話 辺境伯家6
宴も終盤になってくるとそれぞれが席を立ち世間話になってくる。
そうなるとやはり奥方様の容姿の変化に話題が集中しているようだ。
「サイメリア、あなた何の効果でそんなに若返っているの?伝説の果実やポーションでも手に入れたの?いいから早く私にもその秘密を教えてちょうだい!」
奥方様と辺境伯の奥様はかなり気の知れた仲のようだ。
少し辺境伯の奥様の方が年上なのかな?
今は親子ぐらいに離れているように見えますけども・・・。
「ええ、もちろんですわ。日々の少しの鍛錬と控えめな食事に睡眠時間を多めにとることが美容の秘訣だといいますわ。お互い女として苦労が絶えませんわね」
「そ・う・じゃ・な・い・で・しょ!あなた2か月前に王都のパーティで会った時とまるで別人じゃないのよ。はっ!まさかとうとう人間をやめてアンデッドになる禁断の儀式に手を出したのね・・・いつかはやると思っていたわ」
「そんな訳ないでしょ?!。まぁこれには色々と事情がからみますし、お父様や旦那様にも相談しなければいけない話でもありますのですぐには教えられないのです。
もちろん、諸事情がまとまったらパトライア様には一番に連絡いたしますわ」
「ぜっっったいに私に一番に連絡するのですよ?」
美に対する女性の執念はすさまじいゴブ。
メイドさんたちも奥方様の話を一言一句聞き漏らさないように普段より距離を詰めてきていたような気がするゴブ。
まぁ関係無いゴブ。こちらはごちそうを楽しませてもらうゴブ。
~~~~~~~~
夜も更けてわたしたちは辺境伯家に一泊させてもらっているゴブ。
婚約のめでたい席にふさわしいと辺境伯の奥様が秘蔵のお酒というものを振舞われ、うちの奥方様もハッテンダム子爵もベロベロになるまで酔ってしまったのだ。
さらには祝いの席で無礼講として護衛やメイドにも酒が振舞われおおいに盛り上がったのだった。
「ゴブ~」(満腹ゴブ)
こっちは酒は呑めないが久々の肉料理をお腹いっぱい食べれて大満足だゴブ。
肉料理とお酒しか無かったゴブけど。
焼いた肉、煮込んだ肉。塩焼き、タレ焼き、香草焼き、骨付きの煮込み。
ひたすらに肉と油の暴力だったゴブ。
もう当分の間は肉を食べなくても平気ゴブ・・・。
コツコツ・・・
「ゴブ?」(なんだゴブ?こんな真夜中に・・)
小さな物音がして目が覚めた。扉が少し開いているゴブ。
扉の隙間からそっと見ると、目の前の廊下に月明かりに照らされてキラリと光る1枚の金貨が落ちているゴブ。
「ゴブ!」(こ、これは!)
慌てて廊下に出てまわりをキョロキョロと見回す、誰もいないゴブ。
「ゴブ」(さすがは辺境伯家、こんなに無造作に金貨が落ちているもんだゴブ)
前世では100円でも律儀に交番に届けたものだが、こっちは弱肉強食の異世界。落とした方がマヌケなんだゴブ。厄介な監視カメラも存在しないゴブ。
素早く拾いもう一度まわりに人がいないか確認した。
誰もいないゴブ。ラッキーだったゴブ。
ポケットが無いから困ったゴブな~。
キラリ。
「ゴブ?」(なんか廊下の先でも光っているような?)
そ~っと足音を立てないように近づくとまた金貨が落ちていたゴブ。
「ゴブッフッフ」(マヌケな奴がいたもんだゴブ)
金貨を拾いまわりを見渡すとまた階段付近に落ちているのを発見した。
「ゴブ」(まったく・・・こんなにお金を粗末にするのは良くないゴブ。危機管理がなっていないゴブ)
さっきから廊下の真ん中に何枚も落として。もう10枚ぐらい落としているゴブよ?
随分と屋敷の奥の方まできてしまったゴブな。
バカなやつもいたもんだゴブ。あとで主人に目いっぱい叱られるがいいゴブ。
今度は扉が少し開いていて部屋の真ん中に袋のままで落としてある。
口が開いたままになっており、袋の口から月明かりに照らされた金貨がキラキラと光っている。
「ゴブ」(そろそろ袋が欲しかったゴブ。ちょうどいいゴブ)
そ~っと近づき袋を持ち上げようとしたその時。
バタン!!
扉が閉まる音がして、びっくりして振り向こうとしたら足を棒のようなもので掬いあげられ仰向けに倒されてしまった。
「曲者!!ここが辺境伯奥様の寝所と知っての狼藉か!」
「ゴブ?!ゴブブ!」(はわわ!違うんだゴブ!違わないけど違うんだゴブ)
しまったゴブ!つい金貨に目がくらんでとんでもない所に入ってしまっていたゴブ。




