第35話 辺境伯家5
「え~。それでは我が娘マゼンタと辺境伯家次男であり国境警備第2大隊の隊長でもあらせられるサミエル様との婚約が正式に決定いたしましたことを祝いまして・・・乾杯!」
「「乾杯!!」」
場所が変わって今は庭続きの大広間に宴会の席が設けられている。
真ん中の主賓はもちろんマゼンタ嬢だ。
血とゲロで汚れたドレスはさすがに着替えたようだ。
隣りにハッテンダム子爵と奥方様、反対側に辺境伯とその奥様が座っている。
みんな服はところどころ切れていたり穴があいていたりするが気にしていないようだ
辺境伯?もちろんソッコーで[復活]で全回復させたゴブ。
致命傷を受けてからが本当の闘いよ! などと意味不明なセリフを吐いて斧を振り回し始めたのを子爵と奥方様が必死に押さえつけて回復魔法をかけたゴブ。
そして手に入りましたスキル[狂戦士化]
血を吹き出しながら暴れるから飛び散る血が目に入ったゴブ。
[狂戦士化](体力、賢さが半分になり力が2倍になる。発動中は痛みを感じない)
この小さい体で狂戦士化してもな~。さらに防御力が紙になるだけじゃないかゴブ。
っていうかマジで死にかけてましたよ?辺境伯。
そして我がお嬢様の前には大量の贈り物が積み上げられている。
「よもや失った片目を再び得ることが出来るとは・・感謝の言葉もないですぞ」
「これでもう保管庫の番ではなく最前線に戻れますわい。不死身のバラン復活じゃ」
「とうとうオレも・・・と、絶望していた水虫がきれいに治っていました」
「儂なんか30年前に失った髪が戻ってきたぞ、見よこの太く逞しい黒髪を」
皆がそれぞれの感謝の気持ちを口々に、贈り物を持って来る。
最後にかけまくった聖魔法レベル6[復活]は体力、スタミナを回復しただけでなく古キズまでも治癒していたようだ。
しかしみんなズタボロで血まみれの服を着たまま大笑いしながら酒盛りしていると貴族のお抱え騎士というより山賊だな。
村を襲って得た戦利品を分配して盛り上がっているならず者集団にしか見えない。
せかせかと働いているメイドさんたちも攫われてきた村娘に見えるゴブ。
そうするとお嬢様の前に積みあがった贈り物や金貨の入った袋もなぜか怪しい雰囲気に思えてくるゴブ。
「聖女様の再来をこの目で見れるとは・・・長生きはするものよ」
「コスタリアの娘よ。我が息子の婚約はあくまで次いでで、本当はそなたの娘が聖女に目覚めたのを我らに披露するのが目的であったのだろう」
辺境伯がすっと真面目な顔をして問いかけている。
「あ~、え~と。ほほほ。このことはまだ公表しておりませんのでご内密に。まだどれほどの素質があるか計りかねているのです」
「で、あろうな。大きな素質があろうともまだ年端もいかぬ子供。スキルに振り回されて人生を踏み外すものも少なからずいる。そしてここまで高度な聖魔法を使うとなれば教会の奴らが自分たちの聖女認定をして囲いこみに来ないとも限らん」
年端もいかないどころか生後2か月ゴブ。
そしてやっぱりこちらにもありましたね、宗教組織。やっかいゴブ。
「ゴブ」(聖女だそうゴブ)
「そんな・・私はただ皆様のケガが治ればよいとただお願いしただけですのに」
「おおっ、何と謙虚な。女神様にただひたすらにお願いの祈りを捧げただけとは」
「自らの手柄にせず、与えられた力を存分に振るわれ見返りも求めないとはまさに心の内までも聖女の素養をお持ちでいらっしゃる」
何か感動して泣く者まで現われだしたゴブ。
ゴブリンを従えた聖女。壁画とかで残るとなかなかシュールな絵になりそうゴブ。
「変な想像をするのはやめなさい。本当になりそうで怖いですわ」
「そうなんです~。お嬢様はますます聖女としての力が強くなれれています~。でも今回は私は枝毛が修復する程度しか治りませんでした~」
おいぃ。またどさくさに紛れて患者に混ざって治癒を受けていたのか!
ふざけんなゴブ。
「私は長年の悩みだった肩こりと腰痛がまったく痛くなくなりましたよ」
カタリナさんまで?一体いつ治癒を受けていたゴブ。全く気が付かなかったゴブ。
「あとは外見をもう少し若く見えるようにほんの少し治癒《美容整形》していただければそれ以上の贅沢はいいませんよ?」
にっこりと笑う優しい笑顔の奥にすごい圧を感じるゴブ。
「ゴ、ゴブ」(ひいぃ。なんか心臓を鷲掴みにされたようゴブ)
また1摘もらしてしまったゴブ・・・




