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第34話 辺境伯家4

「ゴブ」(きりがないゴブ)


「辺境伯様はスタミナが無限なのでしょうか?」


回復魔法を全員にかけてもう2巡はしたゴブ。


「おらぁおらぁ!まとめてかかって来い!てめぇら!ペースが落ちてるぞぉ!」


辺境伯様は上機嫌でまだまだ余裕がありそうだ。

スマホゲームとかである、全員で戦闘に挑むイベントボス並みにしぶといな。

少しイライラしてきたゴブ。


イライラしているのには少し理由もあるゴブ。

キズだらけで運ばれてきた重傷者を見てわたしはピンときたゴブ。

忘れていない[吸収]スキル。

瀕死の状況で取り込むとスキルを吸収できるのだゴブ。


つまり、運ばれてきた瀕死の奴らから回復させるついでにスキルをいただくゴブ。

くくく、思う存分暴れてきてわたしの養分となりに帰ってくるが良いゴブ。


と、期待に満ち溢れていた頃がありました。


意識がもうろうとして口がパクパクしている重傷者の血を舐めても[吸収]出来ない

〈瀕死〉の定義はかなり厳格なようだゴブ。

本当に死ぬ1、2分前とかでないと発動しないのか?

お嬢様・・・危なかったゴブな。


そして今さらながらスライムに転生しなかったのが悔やまれるゴブ。

スライムだったら全身ごと取り込んで息絶えるまでゆっくり待つだけでスキル獲得のチャンスが毎回あったんだゴブな・・・。


それでも一応、運ばれてくる重傷者を期待しながら簡易鑑定してみる。

かなりジっと見ないと所持スキルまでは見れないゴブ。


[大声]

[料理]

[彫刻]

[縄術]


こいつらみんな微妙なスキルなんだゴブ・・・

もっと分かりやすい[剣術]とか[火魔法]とか持っているヤツいないのかよ!

そして何気に戦闘で少し役に立ってそうでムカつくゴブ。


「何をブツブツ言っているのです?ケガ人がまだまだ並んでいるのですよ。少し疲れてきましたか?私は役立たずですね」


わたしは椅子に座ったお嬢様に抱っこされながら回復魔法をかけ続けているのだ。

そして時々わたしの顔色を見て回復ポーションを飲ましてくれる。

ええ子や・・・。


「侯爵様のご息女は聖女様の素質をお持ちであったのか」

「我らを癒す時のあの申し訳なさそうな憂いを含んだ慈愛の表情よ」

「杖の替わりに従魔が必要という噂は本当だったようだ」


ムカ。やっぱり今回もお嬢様の手柄になっているゴブ。


「ミセッティ。ごめんなさいね。辛かったら一旦やめてもいいのよ?」


「ゴブ」(いや。ムカついたから本気出すゴブ)


良さそうなスキルが無いと分かった以上、さっさと終わらせて帰るゴブ。


ちなみに辺境伯様は[狂戦士化]だったゴブ。いらねぇ~。

狂戦士化したゴブリンなんて即、討伐対象だゴブ。


それではわたしの本気を見せてやるゴブ!

[回復]ではなく[復活]を順番にかけてやるゴブ。

これなら体力だけでなく、失った血液もスタミナも全回復だゴブ。


おらおら、完全回復してやったんだからさっさと辺境伯をぶっ倒してくるゴブ!


おっとイケない。いまはかわいい乙女(ゴブリン♀)に転生したんだったゴブ。

言葉遣いと所作には優雅さを残さないといけないゴブ。


「さぁ。皆さんもう少し頑張ってきてくださいね」

「ゴブ」(次から金とるゴブよ~)


わたしとお嬢様は満面の笑みでみんなを送り出す。


「うぉぉ。体が軽いぞ。まだまだやれる!」

「何か視界が開けたような・・・昔に戻ったようだ」


みんな見違えるような素早い動きで辺境伯を取り囲んだ。


「おぅ。なんだ、まだそんな動きが出来るんじゃないか。いいぞぉ!」


さらに獰猛な笑みを浮かべて斧を頭上より高く掲げる。

さらに狂戦士のギアを上げたようだ。


「ほう、父上をあそこまで昂らせるとは今回はみんな気合が入っているな」


イケメン息子が帰ってきたようだ。ちゃっかり隣りにマゼンタ嬢がいる。


「父上は殺気に敏感なのだ。あれだけあからさまに殺気立っていると反応されて反撃をくらうぞ。私が気配を殺して背後から奇襲をかける。マゼンタ殿、いけるか?」


「はい。私も皆の殺気に紛れてあなたの作る一瞬のスキを見逃さずに攻撃します」


言葉少なかったが今からする作戦をマゼンタ嬢は完全に理解しているようだ。


「ゴブ」(なんだかもう夫婦みたいゴブ)


辺境伯は動きの良くなったまわりに気を取られてサミエル様の動きに気付いていない


「わはは、なかなかやるではないか!だがまだまだ!ぐおぉ?」


背後からサミエル様が辺境伯の左足を長剣で突いている。


辺境伯が後ろを振り向いた瞬間、マゼンタ嬢が音もなく飛び出した。


「ふっ」


辺境伯の首元をかすり、盛大に血しぶきが上がる。


殺意高すぎだって・・・義理の父親になるのを分かっているゴブか?


「くぉぉ。見事なり。我にここまで手傷を負わせたのは久しぶりである!」


いやいや、手傷どころではないですよ?通常では致命傷ですから。


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