第30話 侯爵家11
次の日、勉強部屋でお嬢様と一緒にいるとコンコンと扉が鳴った。
勉強?わたしには必要がないゴブ。
絵の具をもらって木製硬貨の剝げたところを塗装して補修中ゴブ。
「お嬢様、奥様が応接室に来るようにおっしゃっております。お客様がおいでのようです」
奥方様のメイドが呼びに来た。
「奥様への来客なのですが、お嬢様にどうしても感謝を伝えたいとのことです」
「分かりました、すぐに向かいます。お母様にお伝えください」
「ゴブ」(いってらっしゃいゴブ)
「ミセッティ様もおいでくださいとのことです」
「ゴブ」(え~。今忙しいのにゴブ)
上司の呼び出しゴブ。仕方ないゴブ。
コンコン。
「どうぞ、入ってらっしゃい」
キィと扉が開いて中に案内される。
肩幅の広いクマみたいな男性貴族と軍服を着たあの恐いメイドさんが立っている。
「おお、アイラお嬢様、ご無沙汰しております。お会いできて光栄の至りでございます。この度は不肖の娘、マゼンタの腕を治していただき感謝の言葉もありませぬ」
「もはや騎士の道も、貴族家に嫁ぐことも叶わぬと落胆のまま。奥様の護衛として傍においていただいておりましたが。まさかお嬢様が聖魔法に目覚められ我が娘のために貴重な魔法を行使いただけるとは思いもよりませんでしたぞ」
「ふふふ、お顔をお上げください。ハッテンダム子爵。寄子の貴族家の忠誠に応えるのは寄親の務め。ハッテンダム家は永く当家に仕え、またお父様と子爵は共に戦場を駆ける戦友ではありませんか。あなたの娘は当家の娘と同じなのですから」
「はっ!真に勿体なきお言葉。改めて我がハッテンダム家の永遠の忠誠を誓います」
「この度の私への勿体ない回復魔法、また騎士団への復帰の措置、感謝いたします。より一層の精進と忠誠を誓います」
マゼンタさんはメイド見習いから騎士に復帰されたようだ。よかったゴブ。
「しかしお嬢様が聖魔法とテイマーの両方のスキルに同時に目覚められるとは。やはり高貴な血筋というのは侮れないものですな。感服いたしましたぞ」
「ふふふ、私たちも少し驚いているところなのです。ただ同時に目覚めた弊害もあるらしく、従魔を通してしか魔法を上手く行使できないようですわ。まだまだ目覚めたばかりで未熟なこと、許してくださいね」
その設定で押し通すつもりゴブな。別にいいけど。
ちらりとマゼンタさんがこちらを見てくる。
それで問題ないゴブ。こっちはゴブリンスマイルで返しておく。
「奥方様もこのところますますお綺麗になられてまるで20年前に戻られたようですな。奥方様と結ばれるのを夢見て競い合った我らの青春時代を思い出しましたぞ」
「ふふふ、あの頃は皆活力に溢れていましたものね。まだまだ子爵もお若いですよ」
「おほほ・・・」 「がっははは!」
2人の笑い声が部屋に響く。
いやいや、本当に20年前ぐらいに戻っているゴブから。
若作りとかの説明ではないレベルで変化してるはずゴブ。
「聞けば我が娘マゼンタも部位欠損だけでなく体中の古傷を消してくださったとか。我ら軍閥派閥といえども傷だらけの体で嫁に出すのははばかられておりましたが、これで縁談を気兼ねなく進めることができますぞ」
「父上、せっかくまた剣が握れるようになったのです、騎士団にも復帰させていただきましたし、もう少し縁談の話は待っていただきたいと存じますが・・・」
マゼンタさんが焦っているゴブ。何かよからぬ方向に話が進んでいるゴブ。
「ふふふ、そうですね。今は戦争も起きていませんし。また大きなケガを負っては元も子もありませんしね。良い機会です、ちょうど辺境伯の次男が修行明けで正式に隊を任されるようになり、身を固めたいとかおっしゃっておりましたわ。早速紹介状を出すことにしましょう。」
「奥様?!」
「それまで剣しか振れぬ娘であったが、剣すら握れぬようになり傍仕えとして1年間奉公してようやく貴族の礼儀が身についてきたそうではないか!まさにケガの功名とはこのことですな!我の悩みも一気に解決いたしましたぞ!」
「マゼンタ。あなたは本日をもってコスタリア騎士団を退団なさい。あとはこちらで早急に話をまとめて見せます。今日から準備に忙しくなりますよ」
奥方様がマゼンタさんの退団を宣告したゴブ。
「そんな~。騎士団に復帰してまだ2日目なのに~」
哀れゴブ。幸せになってくださいゴブ。




