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第6話:小さな発見、大きな意味
森の空気は冷たく湿っている。翔子は足元の砂文様を見つめ、ペンでスケッチを続けた。
「…この線、ただの模様じゃない」
小さな溝が一定の方向を示しており、石版の矢印と微妙に重なっている。
ロンは近くの木の枝をかき分け、土の盛り上がりを確認していた。
「足跡も、この流れに沿っている。理論通りだとすると…」
翔子は一瞬考え込み、次の瞬間、笑みをこぼす。
「合致する…文献と現場、両方から同じ結論が出せる」
微細な砂の流れ、土のわずかな凹凸、石版の矢印。
小さな断片が集まり、徐々に全体像を描き始める。
翔子の心は、理論と直感が初めて交差した瞬間に、驚きと高揚で震えた。
森の奥で、かすかに葉の擦れる音。
翔子は立ち止まり、周囲を見渡す。「また、誰かいる…?」
ロンは冷静に視線を送る。「田辺圭かもしれない。だが、今は証拠に集中しよう」
二人は慎重に証拠を手繰りながら、少しずつ遺跡の核心に近づいていく。
小さな発見は、やがて大きな意味を持つことを、森の静寂が告げていた。
翔子はペンを握り直し、深呼吸する。
「理論も直感も、無駄じゃなかった」
森の影の奥で、田辺圭がゆっくりと笑みを浮かべる。
「なるほど…二人とも、面白くなってきたな」
静かな森の中で、心理戦と証拠の交差が、ゆっくりと燃え上がり始めていた。




