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第5話:ライバルの視線
森の木漏れ日の中、翔子は石版と砂文様を確認していた。
「矢印は、この方向…」
指で示す先には、わずかに踏み固められた土が続く。小さな変化だが、経験者には意味が分かる。
その時、風に混じるかすかな葉擦れの音。翔子の背筋がぴんと張った。
「誰かいる…?」
ロンは慎重に視線を森の奥に向ける。「田辺圭だ。間違いない」
田辺圭は木陰に潜み、静かに二人の動きを観察していた。
「文献通りに動くか…いや、違う。理論と現場の融合か」
彼の目には、挑戦と計算が混ざった光が宿る。
翔子は息を整えながら、ロンと視線を交わす。
「私たち、監視されてる…」
ロンは頷く。「でも、焦るな。相手の思考も読めるはずだ」
田辺圭は小石を蹴って微かな音を出し、二人の注意をそらす。
翔子の心臓が跳ねた。「わざと…誘導してる?」
ロンは静かに指を示す。「石版の矢印に従えば、罠は避けられる」
二人は息をひそめて、慎重に足を進める。
小さな砂文様、足跡、矢印――現場の証拠が導く道筋に沿い、田辺圭の監視をかいくぐる。
森の奥、木陰に揺れる影が二つ。
一つは見え、もう一つは見えない。
二人の行動を読み切ろうとする者と、証拠を手繰ろうとする者。
心理戦の火花が、静かな森の中でゆっくりと燃え始めていた。
翔子はペンを握り直し、心を落ち着ける。
「私たちの証拠が、道を示す…絶対に」




