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第3話:文献の矛盾

石版の文様をスケッチした翔子は、手元の古文書と照らし合わせていた。

「…でも、これと書かれている文献の位置が合わない」

紙の上で指を滑らせながら、彼女は眉をひそめる。論理は完璧だ。だが現場は、文献の記述通りには動いていない。


ロンは石版の周囲を見渡し、指先で砂を払う。「違和感があるな…ここは文献通りじゃない」

翔子はため息をつく。理論の世界では一つの解が正しいはずなのに、現場は異なる道筋を示していた。


木漏れ日が石の表面に斑模様を作り、文様の角度を微妙に変える。翔子は目を細め、角度を変えて観察した。

「こんなに小さな角度の違い…でも意味があるはず」

ロンは頷く。「俺の直感では、このズレが次の手掛かりになる」


周囲の土の湿り気や小石の配置も、文献だけでは説明できない微妙な違いを示している。

翔子の手が震え、ペン先が止まる。理論と現場、どちらを優先するべきか――。


その時、遠くの木陰で小さな足音が聞こえた。

翔子は顔を上げる。「誰かいる…?」

ロンは静かに視線を送る。「田辺圭かもしれない。気を抜くな」


翔子は深呼吸してペンを握り直す。

「わかった…両方から証拠を積み上げて考えよう」

理論と直感、文献と現場――二つの道筋が交錯し、解決への鍵が少しずつ見えてきた。


森の風がざわめき、葉が揺れる。小さな違和感が、やがて大事件への布石となることを、まだ誰も知らない。


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