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1 -9 奇才塾の天才女優⑨

 そこまでのシーンを、試写会で、これを観ていた麗子は、


 しまった。あの時の事務所の連絡は、何かの間違いだと思ったのは、やはり、すずめの仕業だったのね。その隙にこんなことをしていたなんて。


 こんなアドリブで、おまけにセリフが長くても、監督がオッケーをだしたのは、絶対に、【秘技 主導交代】に違いないわ。このセリフで、この映画が終わるなんて、私とすずめは、ダブルキャストで2人の立ち位置は一緒だったのに、この終わり方なら、すずめの印象は、圧倒的になってしまった。


 やられたわ。この後の、帰りの船内での、私の一言は、本当に、ただの一言になってしまって、その差が、かえって際立ってしまったわ。まさか、こんなことを仕組んでいたなんて。


 その後、映画は、大ヒットし、とうとう日本アオデミー賞では、主演女優賞と新人賞を、吹雪すずめが受賞し、以降、他の様々な賞も総なめにした。


 その受賞式の際に、審査員たちのコメントであるが、ちょうど、吹雪すずめのオーディションの際に、審査員をしていた人たちがそこにはいた。


「吹雪さんは、やはりすばらしかった。私は、オーディションの時に、一度審査員でお会いしていたのだが、気がつくと、あっという間に、満点評価をしていたね。最初から、満点のつもりはなかったけど、いつのまにか入れていました。でも、きっと、それでよかったと思います。」


 すると、それを聞いた別の審査員が、


「あなたもですか。実は、私もその時の審査員でしたが、やっぱりいつのまにか満点を入れてたんです。私もよかったと、今は思いますけど。」


 実は、その時の審査員が全員、その場にいたのだが、最初から満点と思ったのは、結局1人だけであった。


 その会場にいた麗子は、それを聞いて、愕然としていた。


 というのも、よく考えてみれば、そのオーディションなどでは、1人でも満点がいれば、珍しく、たとえ99点まで入れたとしても、なかなか満点は入れないものであり、まして満点が全員とは考えにくい。それに、審査員全員が、いつのまにか満点を入れていたというのをきいて、麗子には、その理由がわかったのである。


 これは、すずめの仕業だわ。【超演技ちょうえんぎ】の【秘技 同調連鎖】を使ったんだわ。先に、満点を入れる審査員を読み取って、その人の気持ちや考えを横にいる審査員に連鎖的に同調させたんだわ。こんなことまでやっていたなんて、巧妙すぎる。


 すると、麗子は、受賞後のすずめの元に声をかけた。

「すずめ。」


日本アオデミー賞のトロフィーを2つ持ったまま、振り返ったすずめ。

「あら、麗子、撮影では、お世話になったわね。ああ、これね、ごめんなさいね。主演女優賞は、私になっちゃったわね。おまけに、新人賞まで。」

「いい気なものね。私が、わからないとでも思っているの。私が呼ばれているうちに、【秘技 主導交代】をしかけるなんて、あなた、なんて卑怯なの。おまけに、オーディションでは、【秘技 同調連鎖】までやるなんて。あなたなら、それをやらなくても、オーディション、合格したでしょ。」


「あら、オーディションの【秘技 同調連鎖】まで読み切ったとは、さすが、麗子、塾で優等生だっただけのことはあるわ。だけど、審査員全員、満点にしたのはね、この主演女優賞受賞の決めての一つにもなっていたの、あなた知らなかったでしょう。たぶん、そこまでやらないと、私、新人だったしね、主演女優賞は、100%獲れたかは、ちょっとわからなかったのよ。そのための隠し球なんだからね。」


「次は、そうはさせないからね。」


「あら、これは、私の実力よ。仕方ないわ。また、今度会いましょう。」


 今回は、完全にしてやられたわ。油断していた。しかし、これでは、またきっと、何かをしかけてくるに違いないわ。

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