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9-15 星影百合の秘密15

 その半年前、本物百合から、麗子は、ある話しを聞いていた。最近、特に、本物の意識として、本物百合が目覚めることが、その頻度が急激に少なくなってきているという。これまでは、10日に一度という頻度で、本物の意識を取り戻していた百合は、急にひと月に一度という長い期間に一度目覚めるということになっていた。


 それをよく調べてみると、実は、あの時、この二重人格分離が始まるきっかけとなった悪役の演技再現を練習していたことを、最強の百合が改めて再開していたことがわかったのであった。それは、紛れもなく、今以上に、最強の百合の意識をより深く高めて、本物の百合の意識を薄めていき、消し去るまで続けようと再開していたのである。


 しかし、一方で、本物の百合には、本物である自分の意識を高めていくための方法は、残念ながら見当たらなかった。もはや、本物の百合には、打つ手がなかったのである。そして、おそらく、あと一度限りで、本物である自分は、もはや2度とその意識を目覚めさせることはないと、麗子に告げた。しかし、次の回には、どうしても麗子にしてほしいことがあることを伝えた。


 そして、3ヶ月後、本物百合の、最後の覚醒を迎えて、今回、眠ってしまったら、もはや2度と本物の百合として、目覚めることはない。本物の百合は、麗子に、昔、自身が感動した映画があり、それは、もはや完璧な形で鑑賞することできないとした上で、ビデオテープに記録されている映像を麗子にみせた。


 それは、紛れもなく、ありきたりな家族の夕食の団欒の場面であり、学校でちょっとした失敗をした娘に対して暖かい態度で、それを包んでいく両親を愛情ある態度が、その演じる3人の役者の完璧すぎる演技が感動の涙を誘った。麗子は、その時の百合と同様に感動して涙を流した。こんな短い、たわいもない会話の映像で、これほど感動できるとは、とても信じられない。緊縛した状況での熱のこもった演技であったり、命のやり取りのような状況での演技などは、とてもその感情が、観ている観客も感極まって感動するシーンは、数多く観られる。


 しかし、こんな普通の会話の中で、これほど心を打つシーンというのは、この3人の完璧すぎる演技が生み出しているものでしかない。

  

 そして、これを同様に、完璧に、それも、麗子1人で再現してほしいというのである。たとえば、モニターなど用意して、この映像を見せることがある意味では簡単かもしれない。しかし、その世界にそのチャンスを設けて、最強の百合を連れて行き、その中で生でこれを演じ、それを実際に感じさせることが最も心に訴えることができる。そこで、この時の両親役の2人に直接会って指導を受けて、完璧にひとり芝居で再現して、それを最強の百合に目の前で再現してほしいというのであった。 



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