9-14 星影百合の秘密14
すると、舞台の上にある、すべての照明が落下して、轟音と共に、粉々に壊れていった。そして、その音に驚いた女優、観客たちは、秘技の影響から我に帰り、非常口から、次々と避難を始めた。それは、主技の【無限破壊演技】の変調波動が広がる直前のことで、観客たちはとりあえず、この会場から免れたのであった。
だが、しかし、
「そうはいかないわ!会場の外まで、変調波動を広げてやるわ、見てなさい!私の真の力を!」
すると、麗子は、主技の前に進んで、変調波動を放出し始めた。やがて、それは、主技を包んでいく。
「何をするかと思えば、【秘技 同調世界】じゃないの。こんなことやって、意味があると思ってるの。あなたの作る世界に入り込んだからといって、私にとっては、何の反撃にもならないわ。」
すると、最強の百合は、麗子の作り出した環境を感じ始め、別の場所に移動したような感覚を覚えていた。
「ここは、どこ?普通の日本の家屋の食卓の場ね。それも、かなり昔の6畳の狭い部屋。古いタイプのテーブルがあるわ。なるほど、あなた、この秘技を、よくものにしたわね。とりあえず、この腕前は、褒めておいてあげるわ。やっぱり、麗子は、すごいわ。私の次にね。これだけの能力があるなら、私の仲間でいればよかったものを。」
しかし、その、麗子の作り出した世界は、主技である、最強の百合にとって、思いがけない世界であった。
それは、遥か昔の映画の一場面、どこにでもある、日本家屋の団欒の場所。
(団欒の食卓風景。そこに現れたのは、小学3年生の女の子、優しくて明るい夫婦、3人は、夕食を済ませたところであった。)
母:「今日の学校はどうだった?」
女の子:「うん、楽しかった。でも、ちょっと大変なことがあったの。」
父:「何があったの?」
女の子:「あのね、先生の机の上にあった花瓶を落として割っちゃったの...。」
母(驚きながらも優しく):「怪我はしなかった?」
女の子:「うん、大丈夫だった。」
父:「それはよかった。先生にはちゃんと謝った?」
女の子:「うん、謝ったよ。先生怒らなくて、怪我はない?って心配してくれたの。」
母(安心して微笑む):「それは良かったわ。先生も優しいのね。」
父:「それで、君はどう思った?」
女の子(少し涙ぐみながら):「やっぱり、自分が悪いことをしたから、すごく気になってた。でも、先生も、ママとパパも怒らなくて、心配してくれて...」
母(やさしく手を握って):「怪我がなかったなら、それが一番大事なことよ。次からつければいいんだから。」
父(微笑んで):「そうだね。人は誰でもミスをするものだよ。でも、大事なのはその後どうするかだよ。」
女の子:「うん、わかった。これからもっと気をつけるね。」
母:「あなたは素敵な子よ。正直に話してくれて、本当に偉かった。」
父:「そうだ。君の勇気に、僕たちはとても感動してるよ。」
女の子(涙を拭いながら):「ありがとう、ママ、パパ。私は本当に幸せよ。」
(家族全員が笑顔を作っていた。)
当時の星影百合は、そこに再現された、この両親と子供の3人の優しさに感動して、涙が出て止まらなかった。
この夫婦は、実は、当時の名優の2人が演じていて、その何気ないが、娘に対して愛情溢れている演技が、そして、子役の演技が絶賛され、当時とても話題となった。別に、何か緊迫した場面でもなく、特に向き合ったという場面でもない。しかし、娘に対して、この何気ない優しさがとても愛情深く暖かい言葉かけ。そして、この時の完璧すぎる3人の演技は、当時、星影百合は、とても感動して、深く心に刻まれた。この時の感動が女優を目指したいというきっかけともなっていた。
そして、今、その場面を完璧に、その世界を再現して作り出し、たった今、最強の百合となった百合は、その感動に再会していた。それは、まさに、麗子が、今、たった1人で、その再現を起こしていた。




