9-10 星影百合の秘密⑩
そんなことが始まって、1か月が過ぎた頃、本物百合は、ついに引退を決めた。
あまりにも、関係者たちには、急なことであったが、もちろん自分にとっても、信じられないことであった。多くの監督、関係者や、俳優や女優たちに惜しまれて引退した百合は、まだ23才であり、その頃になると、一度寝てから、次に起きてもニセ百合のままで目覚めていて、本物百合として目覚めるのは、1か月に一度くらいになっていた。そのままの人格でいられるのは、次に寝るまで、無理矢理起きている間の約1日くらいだけになっていた。
ひと月に一度、本物百合が目覚めた時は、とりあえず、もうニセ百合が、書いている日記をみることで、本物百合がいない間に、ニセ百合が何をしているかがわかるようになっていた。
一応、ひと月に一度目覚めると、まず、ニセ百合の日記を確認して、ひと月の間に何があったのか調べておく。すると、ある日、本物百合として目覚め、日記に書いてある計画をみて、本物百合は驚いた。
ニセ百合は、近いうち、女優のための養成所を作る計画をしていた。なるほど、この自宅の建物なら、多くの人たちでも、宿泊しながら、生活するだけの広さと設備があるから、そのまま使うことが可能である。しかし、それは、本物百合もいつかやってみたいと思っていたことだったので、本物百合も、やはり自分なのだなと思うのであった。ただ、それは、23才で引退して始めるとは、あまりにも早かった。
そして、ある日、目覚めた本物百合は、リビングに仕掛けていたビデオカメラを見て、ニセ百合の行動をチェックしようとしていた。だが、その時に見た映像は、これまでとは、全く変わっていて、それは、まさに衝撃の映像であった。
なんと、それは、正面を向いて、画面中央に映っているニセ百合の姿であった。




