9-9 星影百合の秘密⑨
そこで、まず、本当の自分の行動している内容を知られてはいけないと思い、そう、まずは、もう1人の百合を、ここからは、ニセ百合と呼び、本物の自分を、本物百合と呼ぶことにする。
ニセ百合の知らないところで行動するために何をしたらいいのか考えると、まず自宅の家の図面を金庫から持ち出して調べ出した。ここは、両親が建てた家だが、3階建てでかなりの豪邸であり、他にも一時、役者関係の人が多く同居していたこともあったりして、その部屋数は、30室を超えていた。
そして、さらに、荷物がたくさん詰まっていて、子供の頃から、その存在すら知らない部屋がいくつかあったことに気がついた。それを、改めて図面で知った本物百合は、その部屋に目をつけて、中の荷物を別の部屋に押し込んで、1つだけ未知の部屋を使えるように中を片付けて掃除をし、使えるように変えていった。
幸いにも、その金庫の中には、自分は知らない、母が作っていた百合名義のもう一つの預金通帳があった。その時、本物百合は、初めて見つけたのだった。そこには、数億円の貯金があり、これなら、自分も今、知ったことなので、当然、ニセ百合にも知られていない。
そして、その後、再び目覚めて、すぐに日記の内容を確かめると、もう1人の自分がいるかもしれないというようなことが書かれてあった。だが、それは、そこまで確信的なことではないのを知ると、2人の人格は、分かれてから、それからの記憶は、それぞれだけのもので共有できていないものであった。
それを知った本物百合は、なんとかして、本物百合のことを知られずに、対処できるかもしれないと、本物百合が目覚めた時には、できることはすべて、必ずこの新しい部屋の中でやることに決めた。他の部屋では、何かしらの存在の痕が残ってしまうからである。
そして、寝ないで、起きていれば その間は入れ替わることはない。だが、起きている時間も、やはり限界があり、せいぜい2日ほどであり、起きると、次には、すでに2日くらい経ってしまうことは、珍しくなくなってきた。
この頃になると、もうニセ百合が書いていたように、さすがに仕事が続けられなくなってきた。その頃、女優としての仕事を、本物百合とニセ百合が交互に行なっていたので、仕事をこなしてはいたのだが、互いに、相手の仕事をしている時の記憶がないので、現場で演ずることに不都合なことが起こり始めていた。
そして、ビデオ映像から見たニセ百合は、少しずつ本物百合とは、その顔が変わりつつあり、もはや星影百合とは別人の顔となっており、星影百合とは名乗れなくなっていたのであった。
すると、どうしても、悪役を演じたいと思い、夜演じている百合と、それを仕事としてはできずにいる百合が、その人格がはっきりと分かれていて、百合の中に、見た目も全く違う、完全に2人の百合が存在していた。
現場では、監督やスタッフには、少し違う百合が交互に感じられるようになってきたのであった。それは、本物百合が、いつもの、これまでのとても穏やかな百合であり、一方で、ニセ百合は、時に口調も厳しく、物事をはっきりと主張する、決して乱暴とまではいかないが、これまでとは違う、少し攻撃的な性格の百合であった。
それに対して、現場では、スタッフたちが、戸惑いをかくせず、しばらく休暇をとるか、あるいは、病院で調べた方がいいと言う人まで現れていた。




